QUESTION

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買い手にとってM&Aのシナジー(相乗)効果とは?

関西圏を基盤とする中堅商社を経営しています。業容拡大のために他社の買収を検討しています。買収にあたって、知人からは「シナジー効果が見込める会社を買収するのが鉄則だよ」と助言をもらうのですが、相乗効果が生まれやすい買収とはどういうものか教えてください。

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シナジー効果を考えるには、自社の課題分析が一番

シナジー効果は、2つ以上の企業が買収を通じて一体化することにより、個別にビジネスをしていたときよりも高い付加価値が生み出せるようになることです。

「垂直」と「水平」による相乗効果の発揮

一般的には「垂直統合」と「水平統合」という考え方があります。図に沿って解説しましょう。

「垂直統合」とは、商売の流れにおいて自社の上流や下流の工程の会社を買収するM&Aです。卸売業であれば、上流工程の製造・加工業や下流工程の小売業を買収することで製品等の安定供給や中間段階のコスト削減を図り、利益を確保することが考えられます。

「水平統合」は、同業他社を買収することで企業規模を拡大して優位性を得るM&Aを指します。卸売業であれば、販売エリアの拡大による売上高の増加や、仕入れ量の増加による価格交渉力の強化、物流業務の統合による物流コストの削減などが考えられます。

垂直統合と水平統合

なぜ「ブライダル業」が異業種の「ファイナンシャルプランナー業」を買収?

一方で、自社と全く関連のない異業種企業を買収する場合はどうでしょうか。

私が過去に担当させていただいたM&Aを例に挙げると、買収企業が結婚式を運営する「ブライダル業」で、譲渡企業は個人向けに家計や資産設計を助言する「ファイナンシャルプランナー業」でした。一見すると、両社の業種には全く関連がありません。

ただ、買い手のブライダル業には2つの課題がありました。1つはブライダル業が一過性のビジネスであること。結婚式が終われば新郎新婦との顧客関係は途絶え、継続的なビジネスにつながりません。もう1つが、顧客の結婚式を支援する「ウエディングプランナー」のセカンドキャリアの創出です。プランナーというのは、新郎新婦よりも年齢が離れすぎると相談されづらくなるそうで、次のキャリアをどうするかが問題でした。

そこで着目したのが前述のファイナンシャルプランナー業です。結婚式の準備では、新郎新婦の価値観や今後の人生設計を細かくヒアリングします。結婚後のお金の相談にも乗ることができれば、生涯顧客にすることができるでしょう。また、ウエディングプランナーからライフプランナーへのセカンドキャリアを作ることもできます。このように異業種の会社を譲り受けて既存事業の課題を解決し、新たな収益につなげることは、異業種間のM&Aならではのシナジー効果です。

シナジー効果を考えるには、自社の課題を分析し、それらを補完するにはどのような会社を買収するのがよいかをお考えいただくのが一番だと思います。

個別の質問にも回答させていただきますので、詳しくは当社のM&Aアドバイザーにお気軽にご相談ください。