M&A相談所
QUESTION
主要な株主が社外に分散
M&Aを実行する際に注意すべきことは?
創業40年の建設業です。事業承継と今後の成長を見据えてM&Aによる株式譲渡を検討しています。しかし、当社の株式の約70%を創業者の相続人や元従業員(またはその相続人)、かつての取引先企業など、現在は事業に全く関与していない社外株主が保有しおり、現役員の持株比率は30%程度です。このような状況でM&Aを進めることは可能でしょうか。また、M&Aを進めるにあたり、どのような点に留意すべきでしょうか。
株主が分散していてもM&Aは可能
個々の株主への配慮が求められる
ご相談内容のように株主構成が分散している企業でも、M&Aの実現は十分可能です。むしろ、このようなケースは珍しくありません。
ただし、円滑に進めるためには、株主それぞれの立場や心情に配慮することがとても大切です。以下のようなポイントに特に注意を払う必要があります。
1. 社外株主の類型別の特徴と対応方針
・創業者の相続人や元従業員(またはその相続人)
会社の歴史や成長過程に関わった経緯があり、会社に対する愛着が深い場合が多いため、特に慎重な対応が求められます。相続が発生している場合は、相続人が複数いないか、名義変更が適切に行われているか、準共有となっていないかなど、権利関係の確認から始める必要があります。
・取引先企業
過去の取引関係や株式保有に至った経緯を確認し、組織的な対応を行います。企業同士の交渉となるため、意思決定のプロセスを明確にしながら進めることが重要です。
2. 専門家と連携した合意形成
各株主に対してはそれぞれの株式保有の経緯や関係性を踏まえて、M&Aを検討する背景や必要性について丁寧に説明を行います。その際、顧問税理士や顧問弁護士、M&Aアドバイザーなど、各専門家が第三者的な立場で株主との対話を担うことで、より建設的な議論が可能となります。
影響力の大きい株主から段階的に説明・交渉を行うなど、戦略的なアプローチも重要です。専門家の経験に基づき、各株主の特性に応じた最適な進め方を検討します。
3. 株式売却条件の設計
企業価値評価にあたっては、財務内容はもちろん、保有資産や事業実績、従業員の状況なども考慮した総合的な評価が必要となります。
すべての株主に対して同一の条件を提示することを原則とし、特定株主の優遇による軋轢を防ぎます。ただし、保有株式数や株主の性質に応じて、説明方法や交渉プロセスを工夫することは有効です。
4. 実務的な手続きへの対応
株式譲渡に関する意思決定は、定款や株主間契約の内容によって、株主総会の特別決議が必要なケース、取締役会決議で可能なケース、代表者判断で進められるケースなどさまざまです。事前に必要な手続きを確認し、適切な合意形成に向けた計画を立てます。
合意が得られない株主が存在する場合、法令に基づく株式売却請求などの手続きを検討することもありますが、株主との良好な関係を損なう可能性があるため、できる限り避けることが望ましいでしょう。
分散する株主への対応は、株主構成や各株主との関係性によって、とるべき対策が大きく異なります。感情面での配慮が求められるケースも多く、早い段階から専門家に相談し、サポートを得ることが、より円滑なM&Aの実現につながります。ストライクにはさまざまなケースを経験したアドバイザーが在籍しておりますので、分散株主の問題でお困りの際はぜひご相談ください。