QUESTION

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ファンドが資本参加後に出口戦略を検討。
経営者は譲渡先の選定に関与できるか?

ある投資ファンド(以下、ファンド)に資本参加をしてもらうか悩んでいます。そのファンドは、弊社の新しい成長戦略を実現するパートナーになってくれると思います。ファンドの資本参加後も私は社長として会社に残り、ファンドの協力を得ながらさらなる成長を目指せないか検討していますが、ファンドが数年後にエグジット(資本参加した会社の株式を第三者に売却)を検討する場合、私はエグジット先の選定に関与できるのでしょうか。私が望まない相手に弊社の株式を譲渡しないように、ファンドと交渉できるのか教えてください。

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オーナー経営者が引き続き経営を担う場合、エグジット先の選定に関与できるケースもある。

最近は40~50歳代の若手経営者を中心に、ファンドの資本参加についてご相談いただく機会が増えています。一昔前であれば、世間のファンドに対する印象はネガティブなものでした。しかし時代が変わり、今では多くの企業が資金調達や経営戦略の推進のために前向きにファンドを活用しています。ファンドに対する認知が「友好的に株を保有し、経営のパートナーとして一緒に企業価値の向上を目指してくれる存在」へと変化してきたように感じます。

現経営者の意向はファンドにとっても重要に

オーナー経営者が社長として引き続き経営を担う場合は、エグジット先の選定に関与できる可能性は十分にあります。必ず関与できる、と断言はできません。ファンドの投資方針や取引条件などによっても可能性は変わります。ただ、会社を率いる現経営者の意向を無視して勝手に株式を売却するのは、ファンドにとってリスクになるでしょう。現経営者が反対する先に譲った結果、経営者や従業員が辞めるかもしれません。重要な取引先が離れていく可能性もあります。ファンドにとっても、現経営者の同意を得たうえで、友好的にエグジットさせることが大事です。

要望をあらかじめファンドに伝える

冒頭に申し上げた通り、昨今のファンドは企業の経営支援を目的とするようになりました。「ファンドが儲かりさえすればいい」といった利己的なふるまいは、少数派であるように感じます。企業経営者と対話を重ね、その企業の特性や強みがより活性化するようなエグジット先を選択することが重視されます。ご相談者のようなご希望がある場合は、その要望をファンドにあらかじめ伝え、エグジット先を探す際の方針を定めておいてはいかがでしょうか。

私が以前に担当させていただいた事例を紹介します。その会社はファンドに、新しく設立された投資目的会社(SPC)を通じて資本参加してもらいました。経営は引き続き現経営者が担当し、ファンドには資金面や管理部門の強化を担ってもらい、共に株式公開を目指すこととなりました。その際に現経営者はファンドと相談して、自身もSPCに一部出資させてもらいました。その会社が無事に株式公開できたら、現経営者にも上場による経済的なメリットがもたらされるからです。ファンドとしても、引き続き会社を率いる現経営者が、株式公開を目指して邁進することを期待できます。このようなWin-Win の関係が作れたなら、将来的にファンドが対象会社の株式をエグジットするときも、必ず現経営者に相談するのではないでしょうか。

ファンドに資本参加してもらう企業は増えていますが、多くはありません。どのように交渉すればよいか等のご不安があれば、ぜひM&A経験が豊富な専門家にご相談ください。優先順位がしっかり決まっていれば、買い手企業を選びやすくなり、条件交渉の際も妥協点を見つけやすくなります。私たち仲介業者も、譲渡条件の優先順位が明確であるほど、契約成立へ向けてスピード感を持って進められると実感しています。