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株式譲渡を検討する経営者が準備しておくべきこととは?

娘はいるものの、別の仕事をしているので、自社を継いでくれそうもありません。自分も年齢を重ねてきたので、3年以内に自社を売却したいと考えています。譲渡に向けて今から準備できることや、譲渡の際のポイントを教えてください。

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まずは財務諸表の透明性を確保することが大事

最初に取り組むべきことは、財務諸表の透明性の確保です。例えば、社長が個人的に使用している会社名義の車や別荘などの私物がある場合は、個人名義で買い取り現金化するなど、会社と個人の資産をきちんと整理しておくと良いと思います。会社の資産と個人の資産を明確に整理しないままM&Aに臨むと二つのリスクが生じます。

一つは企業価値の変動リスクです。M&Aを行う際、買い手企業は売り手企業を調査するためのデューデリジェンス(資産査定)を実施します。財務諸表の透明性が低いと、買い手企業が価値を算定しづらく、交渉途中で企業価値が変動するリスクが大きくなります。

二つ目に公私混同とみなされるリスクです。買収予定の企業から「経営者の私物を会社名義で購入するような企業だ」とみられれば、M&Aがうまく進まない可能性があります。

会社の組織体系を整備すれば譲渡がスムーズに

会社の組織体系を整えることも重要です。会社の経営が社長個人に大きく依存している場合、仕事の受注が急減して買い手企業が敬遠するリスクが高くなります。

以前、ある経営者から数年後に会社の譲渡を考えていると相談されました。社長によると、重要な事項から小口現金の支払いまで、決裁は全て自分で行っているとのこと。その会社の取引先は社長の個人的な人脈に依存したもので、取引先の8割を社長が担当していました。取引依頼の電話も社長に直接かかってきていました。譲渡後に社長がいなくなれば、会社の運営や取引先のコントロールが難しくなります。

私はその社長に、2つのポイントを助言しました。1つ目は会社の組織化を進め、社長権限を徐々に一定の管理職の方へ委譲すること。2つ目に取引先の引き継ぎを行うことです。ただし、今日明日ですぐに引き継げるものではないので、数年かけて計画的に進めることが重要です。社内を組織化しておけば、社長も安心して引退でき、買い手企業側も安心して引き継ぐことができます。

決断に時間がかかると買い手企業の熱意が下がることも

最後に、M&Aをする際の譲渡条件の優先順位を明確することをお勧めします。実際に話が進んでくると複数社から様々な意向や条件が出てきます。どのお相手がいいのか迷われるかと思いますが、決断にあまりに時間がかかると、買い手企業側の熱意が下がってきます。時には迅速な決断が必要です。そのためにも「譲渡価格」「シナジー(相乗効果)」「社風」「従業員の雇用継続」など、自分の中で何が一番重要かを事前に考えておくと良いでしょう。

優先順位がしっかり決まっていれば、買い手企業を選びやすくなり、条件交渉の際も妥協点を見つけやすくなります。私たち仲介業者も、譲渡条件の優先順位が明確であるほど、契約成立へ向けてスピード感を持って進められると実感しています。

企業譲渡の際に準備するべきポイント

やるべきこと 具体策
1 財務諸表の透明性の確保 別荘や私物を買い取り、現金化しておく
2 経営者への過度の依存の緩和 権限の段階的な委譲、取引先の引き継ぎ
3 優先順位の明確化 譲渡価格、社風、雇用など総合的に判断

当社には、さまざまなケースに対応した経験が蓄積されております。
お悩みやご不安がございましたら、お気軽にご相談ください。