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会社全体ではなく、一部の事業のみを譲渡する方法は?

当社では、複数の事業を営んでいます。今後、特定の事業に注力していくため、その他の事業を他社へ譲渡したいと考えています。会社全体ではなく、一部の事業のみを譲渡する方法はありますか?

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複数の手法があるため
どのような手法で行うか複合的に検討を

一部の事業のみを切り離して譲渡する手法は複数あります。ここでは、代表的な手法である事業譲渡と会社分割を用いた譲渡についてご説明します。

CASE1. 事業譲渡

事業譲渡とは、事業に関連する必要な資産、負債、契約、従業員等を切り離して譲渡するM&A手法です。会社の法人格をそのまま譲り渡す形となる株式譲渡とは異なり、事業譲渡では、個々の資産の名義変更等の移転手続き、従業員の転籍手続きなどが必要になります。契約関係についても取引先と買い手企業が再度締結しなければならず、事業譲渡は株式譲渡に比べて、手続きが煩雑になります。

事業譲渡の対価は、株主ではなく、譲渡を行った法人に入金されます。譲渡益が生じた場合、法人税が課税されることになるため、個人株主が株式を譲渡した場合の税率に比べて税負担が重くなることもあります。

  • 事業譲渡流れ1
  • 事業譲渡流れ2

CASE2. 会社分割を活用した譲渡

譲渡したい事業と残したい事業を会社として分けた上で、譲渡したい事業の会社の株式を譲渡する手法です。会社分割にはいくつかのパターンがありますが、2017年度の税制改正により、分割型分割によって会社を新設する方法をとることが多くなりました。分割型分割では、既存の株主が分割法人(分割元の法人)および分割承継法人(新たに設立した法人)の株式を保有します。いわゆる兄弟会社のような形になるのですが、この際、残したい事業を切り出して新設の法人とし、譲渡したい事業を分割法人とするのがポイントです。

会社分割は、組織再編税制の適用対象となります。このため、分割承継法人に譲渡したい事業を切り出した上で株式譲渡を行うと非適格分割といわれる取り扱いになり、分割法人に対して課税がなされるとともに株主に対してもみなし配当課税がかかる可能性が生じ、税負担が重くなる場合もありえるので注意が必要です。譲渡したい事業を分割法人に残して譲渡すれば株式譲渡となるため、株主に譲渡代金が入金されることとなり、低い税率で譲渡することができます。

  • 会社分割流れ1
  • 会社分割流れ2

一部の事業を譲渡する手法を選択する際には、取引先との契約、従業員との雇用関係、事業に必要な許認可の状況、税務関係の論点等を複合的に検討する必要があります。また、買収する側のメリット・デメリットや希望を考慮することも重要です。当社には、さまざまなケースに対応した経験が蓄積されております。情報収集を兼ねて、お気軽にご相談ください。