QUESTION

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譲渡企業は譲渡後に躍進する見込み。
社長は継続するので、譲渡後に業績が伸びたら追加でインセンティブを得たい。

今度まとまった資金が必要で、3年前に創業したスマートフォン向けのアプリケーション開発会社の譲渡を検討しています。当社は伸び盛りで、来年後半に完成予定のソフトはヒット間違いなし。譲渡後も私が社長を継続し、開発チームを先導したほうが買い手のメリットにもなるのではないかと考えています。譲渡後に完成予定のソフトがヒットしたら、譲渡代金とは別にその成果をインセンティブのような形で得られないでしょうか。

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将来的に金額を得られるM&Aは可能。
二段階譲渡やアーンアウト条項などのやり方があります。

今回のご相談者のように、若手経営者を中心に将来の業績伸長が見込まれる中での譲渡の相談が増えています。気力・体力も十分なため、譲渡後も創業オーナーが引き続き経営にあたることも多いです。一方で、多額の株式売却代金を受け取った後、創業オーナーの経営に対するモチベーションはどうなるでしょうか。買い手にとっても、売り手の創業オーナーが経営に邁進し、よりポテンシャルを発揮してもらうことが重要です。

今回はその課題を解決する3つの方法をご案内します。

方法1. 二段階に分けて譲渡する

一般的に中堅・中小企業のM&Aにおいては、株式の100%を買い手に譲って会社の支配権(議決権)が移管されます。その取引を二段階に分けて、例えば当初の取引では全株式の3分の2以上を買い手に譲渡して支配権を移管し、創業者は従来通りに経営を継続する。その後、業績が伸びたら残りの株式を譲渡する方法です。二段階目は業績が伸びた後の株式価値なので、一段階目の株価よりも高値で譲渡することができ、その差額が売り手のインセンティブとなります。

方法2. 特別目的会社(SPC)を使い二段階で譲渡

ファンド等が対象会社を買収したのち、株式上場(IPO)を目指す場合に用いるのが特別目的会社(SPC)を使った方法です。創業オーナーはファンドが設立したSPCに全株式を譲渡するとともに、その譲渡対価の一部をSPCに再出資。その後、ファンドの支援のもとで業績を向上させたうえで、早期に上場を実現させます。そうすると、再出資した分がIPO後に何倍もの価値で売却でき、その差額がインセンティブとなります。

方法3. アーンアウト条項を付ける

近年のアメリカのM&Aで多く用いられているのが「アーンアウト条項」を付けたM&A契約です。アーンアウト条項は「条件付取得対価」とも呼ばれ、M&A完了後に特定の条件を達成した場合、買い手が創業オーナーに追加の対価を支払う条項になります。

方法1と比較すると、M&Aでいったん「全株式の譲渡=支配権の移転」は完了します。買い手にとってはM&Aを分割払いにするイメージで、一度のキャッシュアウトが少なく済むとともに、不確実な業績見込みに対するリスクヘッジとなります。創業オーナーにとっても、条件達成の状況によって当初より多くの対価を手に入れられるメリットがあります。達成条件はさまざまで、例えばM&A完了後の3年間の営業利益が毎年〇億円以上という財務指標になることもあれば、対象が医薬品メーカーの場合は新薬の認可取得が条件になることもあります。

いずれの方法もメリット、デメリットがあります。また、契約内容がやや複雑になるため、交渉にかかる手間や負担が増えます。個別の質問にも回答させていただきますので、詳しくは当社のM&Aアドバイザーにお気軽にご相談ください。