解決策と課題
社内承継
社内に優秀な候補者がいても
資金面の問題が大きなハードルに
有能な社員に後を任せたいと考える経営者は以前に比べ、増えているといわれています。
都内のデータになりますが、東京商工会議所「東京23区内企業の事業承継の実態に関するアンケート調査」によると、後継者候補は「息子」「娘」「娘婿」など親族が7割近くを占めているものの、「親族以外の役員・従業員」も約2割と高い数字になっています。
ところが、社内承継は非常に難しいのが現実です。「この人なら」と選んだ人材ですから、能力や実績、信頼の面ではおそらく申し分ないのですが、その人が株を買い取る資金を調達するというハードルを、なかなか越えられないのです。
加えて、連帯保証人の地位を承継しなければならないこともネックになります。金融機関等に認めてもらうことも必要ですし、資金的なことも含めて大きな重責を担うことに関して、その人の家族の賛成・協力も得なければならないでしょう。
私の経験では、社内承継は株の買い取りと連帯保証の問題をクリアできず、結局は頓挫してしまうことがほとんどです。
優良な企業ほど株の価値が上がり
社内承継が難しくなるというジレンマも
株の買い取りに関しては、優良な企業ほど株の価値が高くなり、社内承継が難しくなるというジレンマもあります。優良企業は優秀な人材を数多く擁していますから、後継者候補となる素晴らしい人がいる可能性も高いのですが、役員の地位にあるとしても一介のサラリーマンが数億円、場合によっては数十億円の株を買い取るというのは、現実的な話とはいえません。
もし能力、実績ともに十分な後継者候補がいて、後は資金面の問題だけという状況ならば、その人を社長にすることを条件にM&Aをすれば、問題は解決します。相続税評価とM&A評価では、のれん代などが加味されるM&A評価のほうが高くなることが一般的ですので、経営者の方にとってもメリットは大きいと思います。