背景と現状

背景と現状

減少傾向にある親族承継

親族承継は第一の選択肢だが
近年は減少傾向にある

自分の会社を子どもに継がせたいと思う経営者は多いですし、能力のある適任者が親族にいれば事業承継は概ねスムーズに進みます。親族承継は第一の有力な選択肢といえます。
しかし、最近は親族承継が難しい、つまり後を継いでくれるお子さんがいないケースが増えています。そもそも息子さんや娘さんが継いでくれるなら、後継者問題に悩まされることもないでしょう。
かつては親族承継は9割以上でしたが、近年では4~6割ぐらいまで減少しているともいわれています。

後継者属性
出典:帝国データバンク 2014/7/29『後継者問題に関する企業の実態調査』

“頑張れば伸びる”時代が幕引きして
親族承継はさらに困難に

親族承継が減っている理由として、まず少子化が挙げられますが、日本経済が成熟期に入り、企業の成長が難しくなっていることも大きな要因となっています。

30年前なら社会全体が右肩上がりの好景気であり、個々の企業もコツコツ地道に頑張れば右肩上がりの成長が見込めました。
しかし、今は違います。景気は回復傾向にあるとの見方もされていますが、あらゆる市場が縮小傾向にある以上、個々の企業にとって成長がとても難しいことに変わりはありません。
競争が激化する中で、「(息子や娘に)継がせられない」「継がせたくない」と考える経営者や、「継ぐのは無理」「継ぎたくない」と考える二代目が増えるのは、無理のないことなのかもしれません。

後継者候補がいる企業の事業承継型M&Aも増えてきています。ご子息あるいは社員が社長に就くことを条件に、相乗効果が見込める企業や資本力のある大手とのM&Aをして事業発展の道筋をつけ、皆が安心できる形で引退しよう――そんな選択をする人も増えているのです。

優秀な二代目だからこそ
後を継がないケースも多い

後継者問題について、二代目となる世代の安定志向が強いとか、リーダーシップがないといった見方がなされることがありますが、私はちょっと違う印象を持っています。

あくまで私の実感ですが、経営者のお子さんたちは総じて学歴が高いように思います。後継者としての資質を備えている優秀な二代目は都市部の一流大学に進学して、医師や弁護士のような専門職に就いたり、大手企業に就職したり、自分の好きな分野で活躍しているケースが多いのです。
留学経験を持つ息子さんや娘さんが海外でバリバリ働いているといったお話もよく耳にします。

そうなると今の仕事を辞めて後を継ぐことはなかなか考えられなくなるでしょうし、都心や海外で家庭を持つと、Uターンすることさえ難しくなります。
素晴らしい子育てをなさったからこそ、お子さんの人生が大きく広がって、結果的に親元から飛び立ってしまう――そんなケースも増えているのかもしれません。