INTERVIEW

卓越した技術力を持つ海洋測量会社
測量・土木設計会社とのM&Aにより
事業・技術・株の承継問題を解決に導く

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株式会社臨海測量 代表取締役 小山 守雄 氏、株式会社臨海測量 顧問 大山 正二 氏

株式会社臨海測量 代表取締役 小山 守雄 氏
株式会社臨海測量 顧問 大山 正二 氏
ニチイコンサルタント株式会社 代表取締役副社長 杉谷 真宏 氏

株式会社臨海測量(東京都港区)は1978年の創業以来、海洋・河川測量の高度な専門知識・技術を磨き続けてきた老舗の測量会社。海洋の測量・調査に特化した会社は年々少なくなっており、確かな技術力と豊富な実績を持つ同社は非常に貴重な存在だ。同社は2024年2月、東海エリアを中心に測量・土木設計事業を展開するニチイコンサルタント株式会社を中核会社とする株式会社NCホールディングス(本社:愛知県一宮市)への第三者承継を果たした。このM&Aにより事業と株の承継問題は解決、今後は人材育成の問題に取り組み、技術の承継を図るという。両社のキーマンにお話を伺った。

海洋調査の技術と実績が強み
従業員の高齢化が進み
技術の承継が困難に

臨海測量様の事業内容、特長をお聞かせください。

事業内容イメージ画像
株式会社臨海測量は1978年の創業以来、半世紀近くにわたり、海洋の測量・調査に特化してきた

小山:我が社は1978年の創業以来半世紀近くにわたり、海洋の測量・調査に特化して技術と実績を積み重ねてきました。橋梁や海底トンネル、海底ケーブル工事の測量、地形調査、海底地質構造調査、港湾海域の測量などにおいて数多くの成果を提供し、高い評価を得ています。私は三代目の社長です。

大山:海洋の情報は軍事保安上の機密情報だったため、海洋測量はかつては海上保安庁の水路部(現・海洋情報部)で行われていましたが、海上保安庁出身者などが興した民間企業に徐々に委託されるようになったという歴史があります。当社の創業者も同庁の出身者です。

小山:世界中どこの海でも対応可能で、海外での実績もありますが、現在は東京湾の仕事がメインです。皆さんがご存じのところではレインボーブリッジ、東京ゲートブリッジ、羽田空港拡張、東京湾アクアラインなどの建設工事にも携わっています。国土交通省、東京都、ゼネコン、マリコンなどがクライアントです。

ニチイコンサルタント様も1978年の創業ですね。

事業内容イメージ画像
ニチイコンサルタント株式会社は東海エリアを中心に測量・土木設計事業を展開している

杉谷:はい。私の父で現会長の杉谷芳征が愛知県一宮市で立ち上げました。地域密着型で東海エリアを中心に、国交省、愛知県から大手ゼネコン・マリコン、地元の工事会社まで、さまざまなお客様の仕事を請けています。現在は岐阜や三重にも支店があります。

測量が中心ですが、土木設計や補償コンサルタントの業務も行っています。加えて、最近は3次元計測技術が強みになってきています。ドローン、3Dレーザースキャナなど新しい技術を用いた3次元計測・設計のニーズが高まっており、私たちの技術で建設会社や工事会社をサポートさせていただいています。

M&Aによる事業譲渡を考えるようになったきっかけは?

大山:一番の理由は技術の承継です。この業界は技術者の人材不足・高齢化の問題が深刻で、我が社も海の測量技術をつなげていく人材の確保が難しくなり、M&Aを決断しました。また、測量の機械を導入するための資金を調達するという目的もありました。

小山:海洋測量の場合、測量士、水路測量技術、港湾海洋調査士の3つの資格が基本になりますが、いずれもまず士補の資格を取得し、経験を積んでからでないと試験を受けることができません。1つの資格を取得するのに最低でも5年、一人前になるまでに10年ぐらいかかるため、若い人が入ってきてくれても続かず、途中で辞めてしまいます。特に港湾海洋調査士は日本で数千人しかおらず、海洋測量の技術の継承は大きな課題となっています。

同じ測量業で相性がよく
陸と海でフィールド、技術が異なるため
シナジーが期待できる

ニチイコンサルタント様が譲受を考えた理由を教えてください。

ニチイコンサルタント株式会社 代表取締役副社長 杉谷 真宏 氏
ニチイコンサルタント株式会社 代表取締役副社長 杉谷 真宏 氏

杉谷:以前に顧問税理士の先生からストライクさんを紹介してもらって、メルマガなどの情報をチェックしていたところ、臨海測量さんの情報を目にして興味を持ちました。同じ測量でも全く違う海の分野の企業という点に魅かれました。当社はこれまでに譲受の経験がなく、全くの異業種と手を組むのはハードルが高い。かといって、全くの同業だと発展性に乏しい。当社は海の測量をやっていないので、同じ測量でありながら場所も技術も違うところがとても魅力的で、シナジーが期待できると考えました。

トップ面談の印象は?

小山:当社が渡辺(泰則)会長と大山顧問と私、ニチイコンサルタントさんが杉谷会長と早川(友幸)社長、杉谷副社長というメンバーでしたが、会長同士がM&Aの話よりも昔話で盛り上がっていましたね(笑)。

杉谷:同じ時代を生き抜いてきたため魂が通じるところがあったようで、あっという間に意気投合していました。私も歴史、社風、今後の方針、すべてにおいて相性がよいと感じ、ぜひ一緒にやらせていただきたいと思いました。

大山:私も社風が合うと感じました。当社の技術者は皆、職人気質なので、ルールに縛られてしまうと、おそらく仕事がやりにくくなってしまいます。その点、ニチイコンサルタントの皆さんは現場のことをよく知っておられるので、技術者の自主性を重んじていただけるだろうと思いました。

他社とも面談された中で、お相手を選んだ決め手を教えてください。

株式会社臨海測量 代表取締役 小山 守雄 氏、株式会社臨海測量 顧問 大山 正二 氏
株式会社臨海測量 代表取締役 小山 守雄 氏(左)
株式会社臨海測量 顧問 大山 正二 氏(右)

小山:一番の決め手は、経営体制や業務の内容について「現状維持」を約束していただけたことです。自社の仕事を依頼したいといったオファーもありましたが、そうなると従業員の仕事の内容が変わってしまう可能性があり、離職も危惧されます。我々の技術や実績を尊重し、従業員の仕事の内容と地位を守ってくれるお相手と考えると、ニチイコンサルタントさんが一番でした。採用・育成が順調で、若い世代が育っておられるので、そのノウハウをもって技術者育成をサポートしてもらおうという期待感も大きかったです。

どのような人材育成の仕組みがあるのでしょう?

杉谷:当社も若い人たちがなかなか定着してくれないことが悩みの種でした。そこで、まずはこの仕事の魅力を伝え、意欲のある人に入社してもらおうと考えて、地元の測量の専門学校や土木科のある高校にアプローチしました。当社をしっかりPRして、先生との関係を築き、毎年1人ずつ入社してもらえる形にしたのです。

今はもう「現場で覚えろ」は通用しない時代なので、教育の体制はトライアンドエラーを繰り返しながらつくっていきました。当初は辞めてしまう人もいましたが、3人入って1~2人残る――ということを繰り返し、世代がうまくつながるようになりました。人材育成に取り組むようになって10年近くが経過し、当初に入社した人たちは30代、現場を任せられるようになっています。

小山:20代、30代、40代の社員がバランスよくいらっしゃるのは素晴らしいと思います。ジェネレーションギャップが大きくなると、関係性を築くのが難しくなります。職場に年の近い先輩がいないと気軽に相談できる相手がいないし、やっぱりつまらないですよね。

杉谷:若手でご飯を食べにいったり遊びにいったりしていますね。この頃はもう私は誘ってもらえなくなりました(笑)。Z世代になると私もギャップがあるので、今後は採用もフロントは若手社員に任せられる仕組みにしたいと考えています。

まずは人材交流から
互いをよく知り、採用や研修の体制を整えたい

成約に至るまでに心配だったこと、大変だったことはありますか?

小山:従業員の反対があったらやめると決めていたので、成約前に全員にざっくばらんに説明し、「不安なことがあれば何でも言ってほしい」と話したところ、何も意見は出ませんでした。経営体制も仕事の内容も変わらないので、不安も異論もなかったようですが、「もし反対意見があったら」と心配はしていたので、拍子抜けしました(笑)。

成約したときの率直な感想をお聞かせください。

大山:スタート地点に立ったところで、すべてこれからですが、事業承継の問題が解決して安心しています。当社は株式を役員、従業員で分散して所有していました。皆、年を重ねて、株式の承継も気がかりだったので、本当にほっとしています。

ストライクのサービスや担当者はいかがでしたか?

株式会社臨海測量 代表取締役 小山 守雄 氏、株式会社臨海測量 顧問 大山 正二 氏、ニチイコンサルタント株式会社 代表取締役副社長 杉谷 真宏 氏、ストライク田中
お話を伺った皆様と
(写真右がストライクの田中)

大山:仲介会社の方には数社お会いしました。具体的に話が進んだところもありますが、問い合わせに対する返答が遅かったり、我々の希望が先方にきちんと伝わっていなかったりして、「成約できればいい」という考えなのかなという印象を受けたので、すぐにお断りました。ストライクの田中さんはレスポンスが早く、対応も丁寧で、信頼できるアドバイザーでした。

杉谷:田中さんはイレギュラーな事態にもすぐに的確に対応してくれて、経験の豊富さが感じられましたね。臨海測量さんと田中さんの間にしっかり信頼関係ができている様子で、私も安心して進めることができました。

協業に向けて進んでいることはありますか?

杉谷:今は「互いを知る」期間で、定期的に情報交換させていただいているところです。当面の課題としては、バックオフィス業務を支援し、より本業に集中していただける体制にしたいと考えています。といっても、そのあたりはまだ我々も課題としているところで、人材採用も含めて一緒に取り組んでいければと思っています。

小山:まずは人の交流を進めたいですね。先日の懇親会、とても楽しかったです。

杉谷:小山社長と役員の方を本社にお招きし、全体の会議に出席いただいた後、懇親会を開きました。小山社長に海の測量について紹介していただいたところ、皆、興味津々で、会食のときには次から次へとお話を聞きにいっていました。

小山:モテモテでしたね(笑)。そんなに興味を持ってもらえるとは思っていなかったので、とてもうれしかったです。モチベーションの高い人が多く、感心しました。

杉谷:同じ測量の世界でも、フィールドも機械も技術も違う。「もっと知りたい!」という気持ちがわいたようです。知れば知るほど魅力満載なので、もっとPRしていきたいと思っています。

小山:今後は若手同士の交流や陸上の測量の研修もお願いしたいです。

杉谷:ぜひ! 逆に海の測量の研修もお願いできればと思います。もしかすると、海の仕事がしたい、東京で働いてみたいという人も出てくるかもしれません。従業員にとって働き方の選択の幅が広がるのはよいことです。当社は今秋、関東営業所をオープンしますので、臨海測量さんに関東の事情をいろいろ教えていただければとも思っています。

今後の展望をお聞かせください。

大山:海洋測量において東京都での信用は抜群だと自負しています。東京以外にも拠点を置きノウハウを投入すれば事業拡大のチャンスが得られると考えていますが、そのためにもまず人材確保・育成の問題を、ニチイコンサルタントさんのお力をお借りしながら解決していきたいです。

杉谷:まずは今回のM&Aを成功させ、グループとして収益を上げることが目標です。この成功例を踏まえて、グループで次の成長戦略を考えていくという流れを生み出したいと思っています。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(田中 遼真・北海道営業部 シニアアドバイザー談)

ストライク田中 遼真

臨海測量様は海洋調査・測量において長年の実績を持つ非常に技術力の高い企業様です。
弊社にM&Aのご相談をいただく以前、他の仲介会社経由でお話しを進めた際に、理由もなく不利益な条件変更を強いられるなどご苦労をされたと伺っておりました。
臨海測量の経営陣の皆さまは、従業員のことを一番に考えられており、従業員が安心して働けるお相手を探してほしいと当初からご要望いただいておりました。
複数の企業様と実際にご面談いただいた中で、そのご要望に一番に応えていただいた企業様がニチイコンサルタント様でした。
両社は、創業が1978年という共通点もあり、初めてのご面談から会話も盛り上がり、ご面談後にはお互いに信頼関係が構築されているような印象を受けました。
本件は、譲渡企業、譲受企業、仲介会社の三社間の信頼関係によって、円滑にお話しを進めることができました。今後とも両社の更なる成長と発展を心より祈念しております。

本サイトに掲載されていない事例も多数ございます。
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