ご成約インタビュー No.90
INTERVIEW
四万十市の観光ホテルが選ぶ未来とは
地銀と仲介業者の迅速サポートで、
大規模ホテルグループとのM&Aを達成
- #後継者不在
- #選択と集中
- #従業員雇用
- #老舗
- #ホテル・旅館
有限会社ササコム 取締役社長 笹本 泰秀 氏
高知銀行清水支店 支店長 大平 幸司 氏
高知県四万十市は“土佐の小京都”と呼ばれ、四万十川の清流や歴史的な街並みで知られる。この地で18年に渡り「中村第一ホテル」を経営してきた有限会社ササコムは、2024年2月、ホテル事業をブリーズベイホテルグループ(神奈川県横浜市)に譲渡した。ササコム代表取締役の笹本泰秀氏は、もともと土佐清水市で「笹工務店」を経営し、地域経済に貢献してきた。しかし、コロナ禍によるホテル事業の業績悪化や後継者問題に直面し、事業と雇用の継続のため、M&Aを決意。今回は、笹本氏をサポートされた高知銀行清水支店の大平幸司支店長にも同席いただき、お二人にM&Aの経緯や成約に至ったポイントを伺った。
先代から引き継いだホテル事業
コロナ禍で業績悪化、
後継者不在で先が見えない状態に
御社の事業内容やホテル経営を始めた経緯を教えてください。
笹本:弊社は、先代社長である父の時代から高知県土佐清水市で「笹工務店」を経営し、建設・リフォーム工事をはじめ、不動産業やホテル業、太陽光発電などを手がけてきました。ホテル事業に携わることになった経緯については、今から18年ほど前、先代社長が競売にかけられていた「中村第一ホテル」を引き受けることで、事業を広げるチャンスだと考えたようです。私が会社を引き継いだのは2017年ですが、当時は景気も良く、経営も好調で、売り上げも順調に伸びていました。
いつ頃から、M&Aを考えるようになったのでしょう。
笹本:「中村第一ホテル」の譲渡を本格的に検討し始めたのは3年ほど前です。私自身、ホテルの運営に関するノウハウがあまりない中、コロナ禍で観光客が激減したことで業績が悪化し、さらに社内に経営を任せられる人材がいない現状もありました。親族承継としては、当時、娘がホテル事業に携わっていたため、継いでくれる可能性も考えましたが、その後、娘は家族とともに県外に移り住んだため、ホテルを継ぐのは難しい状況となりました。私自身、年を重ねてきたこともあり、経営をサポートしてくれている妻とも相談して、企業価値があるうちに譲渡を進めるべきだと考えるようになりました。
ホテルの存続と従業員の雇用を守りたい
高知銀行への相談が突破口となり
ストライクとのタッグを結成
譲渡を行う上で、重視された条件は?
笹本:M&Aを選択する上でこだわったのは、これからも「中村第一ホテル」が多くのお客様に愛され、四万十市を盛り上げていく存在であり続けられるよう、廃業でなく事業を維持すること。そして、大切な従業員たちの雇用を守り、路頭に迷わせないことです。M&Aを検討し始めた当初は、ストライクさんとは違う他社に相談していたのですが、なかなか譲渡先が見つからず、高知銀行さんに相談しました。その後、高知銀行経由でストライクさんを紹介いただき、譲渡先が決定。無事に成約につながりました。私は今後、完全にホテルの経営から手を引き、工務店の業務に集中したいと思っています。
大平:令和3年11月に笹本社長と面談し、「中村第一ホテルを譲渡したい」というニーズを伺いました。その際、後継者が不在であることや、従業員の皆さまの再雇用を大前提にした売却条件を把握し、すぐにストライクさんと連携してM&Aの情報を共有し、スピード感をもって取り組みました。
お相手のブリーズベイホテルグループ様の印象や決め手をお聞かせください。
笹本:ブリーズベイホテルグループ様は、国内や海外で140店舗以上のホテルを経営し、大規模に展開されています。「中村第一ホテル」が位置する四万十市でも「ホテルクラウンヒルズ中村」を運営されていたため、私もよく存じ上げていました。以前から、誠実な経営姿勢や四万十への想いに親和性を感じていたこともあり、譲渡先として紹介いただいた際、ここなら信頼できると確信しましたね。実際に、「ホテルクラウンヒルズ中村」の支配人が兼任することで「中村第一ホテル」の運営も可能になることを判断し、安心して譲渡を決めました。
大平:笹本社長に初めてM&Aのご相談をいただいてから成約まで2年3か月の間、当行の担当者と進捗状況を常に共有し、ストライクさんと緊密に連携しながら検討のサポートに努めてきました。譲渡のお相手となったブリーズベイホテルグループ様は、これまでにも多くのホテルのM&Aを手がけており、ご経験が豊富です。そのため、両社のトップ面談から成約まで約2か月というスピード成約が実現しました。
従業員の方々には、いつ、譲渡の話を伝えたのでしょう。
笹本:ホテルの従業員たちには、譲渡の1週間前に全員を集めて伝えました。突然のことだったのでみんな驚いていましたが、雇用の状態や働き方は基本的には変わらないことを説明すると、安心していましたね。
成約から半年が過ぎ、気持ちの変化はありましたか。
笹本:ブリーズベイホテルグループとなった「中村第一ホテル」とは、譲渡後も時折連絡を取り合い、その後の様子を見守っています。新しい支配人によるリーダーシップのもと、採算に見合わない部門をクローズしたり、営業時間を調整したりするなど、さまざまな角度から業務の見直し・改善を行いながらリブランドオープンし、より満足度の高いサービスの提供に力を入れているようです。国内外から四万十を訪れるお客様を従業員たちが笑顔でお迎えし、いきいきと誇りをもって働いている姿に、心からほっとしています。
地方企業におけるM&Aのニーズは高い
信頼できるパートナーの存在が
ビジネス成功や地域活性化のカギを握る
銀行という立場から、地域企業の課題やM&Aのニーズをどう捉えていますか?
大平:高知県内では、後継者不足や人口減少により、事業承継の課題を抱える企業が数多く存在します。こうした現状を踏まえ、当行では融資だけでなく、企業の課題解決に向けたソリューション活動に力を入れており、自社の将来に不安をお持ちの経営者の方々からM&Aに関するご相談をいただくケースが年々増えています。当行は地元に密着した銀行として、地域のお客さまの課題やニーズをしっかりと把握し、事業者の皆さまと目線を合わせて誠心誠意サポートしていきたいと考えています。
M&Aを成功に導くためのアドバイスをお願いします。
笹本:M&Aは大きな決断ですが、信頼できるパートナーがいることで、安心して前に進めますし、会社にとってより良い未来を選択できる、またとない機会だと思います。今回の経験を通して、自分たちが抱えている課題や希望、条件をパートナーに明確に伝え、連携しながら進めることの重要性を実感しました。高知銀行さんやストライクさんの理解と協力によって、満足のいく結果を得ることができ、本当に感謝しています。
大平:今回のご成約は、当行にとっても、地元で生まれ育った一人の高知県民としても、非常に喜ばしい結果となりました。事業承継やM&Aの成功には、日頃からの腹を割った情報交換が必要不可欠です。ストライクさんの緊密で迅速なコミュニケーションにより今回のM&Aをスムーズに進めることができ、感謝しております。私たち高知銀行としましては、ストライクさんをはじめとする専門機関との連携により、地元企業の課題解決を通じて地域の発展に貢献していけるよう、引き続き尽力してまいります。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(矢野 大地・四国営業部 アドバイザー談)
中村第一ホテルは高知県四万十市にあるビジネスホテルで、羽田空港から乗り継ぎ等を含めると約5時間、当社の高松オフィスからも車で約3時間30分の位置する場所でした。
高知銀行様よりササコム様をご紹介いただき、初めてお会いした時には他社や公的支援機関も利用してM&Aに向けて準備を進めていらっしゃいました。
コロナ禍による経営への打撃と、四万十市という立地に対する不安はありましたが、四国にオフィスを構える我々が取り組まないといけないという気概を持って取り組んだ事を覚えています。
ブリーズベイホテルの津田社長はササコム様とお会いしてから約2カ月でクロージングと非常に経営判断にスピード感のある方で、瞬時に判断される姿がササコム様にご安心いただけた点だったかと思います。
地方の会社を存続させる事で雇用を守る事ができた事例となり、高松オフィスとしても存在価値のあるM&Aとなりました。
本サイトに掲載されていない事例も多数ございます。
是非お気軽にお問い合わせください。
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