INTERVIEW

デザイン性に優れた戸建て住宅事業を展開する西日本不動産が
アスファルトプラントなどのメーカーである日工の傘下に入った狙いとは

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株式会社西日本不動産 代表取締役社長 光宗 徳弘 氏、株式会社西日本不動産 前代表取締役社長 神田 良一 氏、日工興産株式会社 代表取締役社長 藤井 博 氏

株式会社西日本不動産 代表取締役社長 光宗 徳弘 氏
株式会社西日本不動産 前代表取締役社長 神田 良一 氏
日工興産株式会社 代表取締役社長 藤井 博 氏

兵庫県川西市を中心に戸建て住宅事業を展開する株式会社西日本不動産(兵庫県川西市)は、アスファルトプラントなどの土木プラントメーカーの日工株式会社(兵庫県明石市)の子会社で、リフォーム事業や不動産賃貸事業などを手がける日工興産株式会社(兵庫県明石市)の傘下に入った。西日本不動産はデザイン性の高い住宅を、大手住宅メーカーよりも大幅に安い価格で提供しており、多くの支持を集めている。一方、日工興産は新たな事業分野として2024年春に戸建て住宅事業に参入した。親会社の日工の資金力を背景に、西日本不動産の成長支援に力を注ぐ姿勢を見せている。株式会社西日本不動産 前代表取締役社長の神田良一氏、日工興産株式会社取締役で、神田氏の後を引き継ぎ株式会社西日本不動産 代表取締役社長に就任した光宗徳弘氏、日工興産株式会社 代表取締役社長の藤井博氏に、それぞれのお考えをお聞きした。

10の感動のために50の仕掛けを

西日本不動産の事業の特徴をお教えください。

西日本不動産の優れたデザイン性が魅力の住宅
西日本不動産の優れたデザイン性が魅力の住宅

神田:西日本不動産の強みは、我々が作り上げたノウハウにあります。ワールドヒルズシリーズというデザイン性に優れたこの建物シリーズは、大手の住宅メーカーよりも大幅に安く提供できます。

光宗:やはり何といってもデザイン力ですね。西日本不動産が手がけた住宅は目を引くような素晴らしいデザインです。

確かに本社ビルもすごく目を引きますね。広告塔的な意味合いもあるのですか。

神田:そうですね。西日本不動産のことを全く知らない方でも、本社の場所を伝えると「ああ、あそこですか。ケーキ屋さんみたいな、カフェみたいな建物ですよね」と言われることがあります。本社ビルの前を通る方は必ず建物を見られます。それが我々の特徴です。

デザイン性を重視すると、住みにくいという面も出てきそうですが。

神田:お客様がどのようにすれば心地よいのかには基準があります。それらのことを踏まえたうえで住宅造りを行っています。

建物の中に入った途端に、10回くらい「うわっ」と感動していただけるような仕掛けを50ほど作っています。いろんな方のニーズに対応して10回感動していただくためには50ほどの仕掛けが必要なのです。

それを我々は50の魂と言っています。我々の営業担当者をはじめ、大工さんや電気屋さんも加わってみんなで、いいアイデアを出し合っています。ですので、建てる前にデザインがあるのではなく、まずはこれを作りたいという思いが散りばめられているのです。

具体的にはどのような仕掛けなのでしょうか。

神田:例えば吹き抜けです。天井7.5メートルで、トルコの大理石を使っています。天井も通常は2.4メートルですが、2.72メートルにしています。あとはどこに収納や窓を設置するかや、バリアフリー対策などです。

まずは売上高30億円を目標に

事業承継にM&Aを選択された理由は何でしょうか。

株式会社西日本不動産 前代表取締役社長 神田 良一 氏
株式会社西日本不動産 前代表取締役社長 神田 良一 氏

神田:こうした我々のノウハウや商品を広めるために、大きなグループの中に入れていただいて、事業を伸ばしていきたいという希望がありました。京阪神では有名というだけでは終わりたくないと考えていました。

いつごろからM&Aの検討を始められましたか。

神田:当初M&Aは考えていませんでしたが、4年前にコロナ禍が広がった時期に、自分の力だけでは、これを乗り越えていくことができないと感じ、いろんな方と出会い、広く情報を集めていました。

そうした中、1年ぐらい前に今回の話がありました。その時点では、まだ誰かに託そうという気持ちは固まっておらず、M&Aの勉強の途中という感じでした。一緒に西日本不動産の事業に携わっている私の娘や義理の息子もM&Aには反対していました。

最終的にM&Aを決断されたのは、いつごろですか。

神田:そうですね。去年の秋口ぐらいですかね。具体的な話を進めさせていただきたいと考え始めたのは、半年ぐらい接点を持ちながら、M&Aの本質を理解し始めたころからですね。

日工興産は、アスファルトプラントなどを製造している日工の子会社です。日工興産を選択された理由は何でしょうか。

神田:藤井社長の人柄ですね。いろんな方とお会いしましたが、藤井社長との相性が一番良かったですね。どの人に託したら、西日本不動産の良さを分かって事業を伸ばしていただけるのかということを考えました。

藤井社長と話をさせていただくうちに、不動産は本業ではないのに、全てを理解されました。ですので、この方だったら間違いないなと思うようになりました。

不動産事業は土地の手当てが重要です。どれだけ土地を持っているのか、売るものを持っているのかで事業の成長が変わってきます。

土地を手当てするには資金が必要ですが、コロナ禍で銀行からの融資の額が減ってきていました。日工はプライム上場企業で大きな会社です。日工グループに入ることで、資金調達の心配がなくなります。これも大きな理由ですね。

譲渡の条件として希望されたことは何ですか。

神田:西日本不動産は、苦労して育てた我が子のようなものです。ですから我々が作り上げたワールドヒルズシリーズという作品を、拡大してほしいということです。

藤井社長は西日本不動産の売上高の目標を30億円と言われています。過去には、10億円弱の売上が3年ほど続いた時期もありましたが、現在は6億円ほどですので、大きく伸びることになります。株式の売却金額は希望の半分ぐらいでしたが、基本的には満足しています。

30億円の達成は何年後をめどにされておられるのですか。

日工興産株式会社 代表取締役社長 藤井 博 氏
日工興産株式会社 代表取締役社長 藤井 博 氏

藤井:いつまでという目標はありませんが、できるだけ早く達成したいと思っています。日工は連結の売上高が500億円ほどありますが、その中での存在感を出すために、一つの目安として30億円は早く達成したと考えています。

あまり最初から高い目標を掲げると光宗社長が大変でしょうから、30億円を達成して、その次は50億円を目指せばいいと考えています。

西日本不動産様をグループ化された狙いは何でしょうか

藤井:日工はメーカーです。不動産業界とは全く別の業界でやってきました。日工興産ではリフォームの事業や不動産賃貸事業、戸建ての事業などを手がけていますが、不動産事業を伸ばすためには、不動産業界に精通したプロフェッショナルの企業と組みたいという思いを以前から持っていました。

また、日工興産の事業エリアは兵庫県の西側にあります。まずは兵庫県の中で、ある程度の事業規模にしたいという考えを持っています。このため手を組むのであれば、兵庫県の会社にしたいと思っていました。

さらにもう一つの要因は、スタートしたばかりの戸建て分譲事業です。西日本不動産は戸建て住宅で多くの実績を持っておられますので、いろんなノウハウを教えていただけるのではないかと思い決断しました。

今後どのようなシナジーを期待されていますか

藤井:不動産事業を伸ばしていくためには、ある程度の資金力が必要になります。資金があれば、思い切った投資ができます。西日本不動産の事業規模を拡大するために、我々の資金力は大きなシナジーを生むのではないかと考えています。光宗社長には、ある程度のリスクは取ってもよいので、どんどん仕込みましょうと言っています。

徹底的に分かるまでやり取りをすることが重要

今回の株式譲渡をご家族や社員の方はどのように受け止められていますか。

神田:みんな前向きにがんばっています。最初は反対していましたが、大きなグループに入れていただくことによって、私が苦労していたファイナンスの心配をしなくてもよいのだと理解してくれました。また藤井社長の人柄に触れることで、反対がなくなりました。

西日本不動産のグループ化から3カ月ほどが経ちました。PMIはどのような状況でしょうか。

株式会社西日本不動産 代表取締役社長 光宗 徳弘 氏
株式会社西日本不動産 代表取締役社長 光宗 徳弘 氏

光宗:社内規定を作るとか、取締役会を3カ月に1回開催するなどの変更はありましたが、変わったところはこれぐらいで、あとは何も変わっていません。もっと資金を使って、もっと積極的にやりたいと思っていますが、今のところはまだ抑え気味ですね。

藤井:西日本不動産が特別ではないのですが、規定をしっかりと揃えることは必要なことです。内部統制という観点からは規定は重要です。今後事業を拡大し社員が増える中で、体制を整えなければなりません。光宗社長が、10年、20年社長をやることは多分ないと思いますので、誰が社長をやってもできるような仕組みを作らなければなりません。

今後の事業展開(協業など)についてはどのような計画をお持ちですか。

藤井:西日本不動産のビジネスモデルを変えようとは全く考えていません。今まで通りのビジネスを拡大する計画です。

先日、日工興産で戸建て住宅のイベントを2週に渡って4回実施しましたが、集客はどのようにするのか、お客様の案内はどのようにすればよいのか、我々には全くノウハウがありませんでしたので、西日本不動産の方に現地に来ていただいて、いろいろと教えていただきました。こうした連携はあります。

ストライクのサービスや担当者についての感想をお聞かせください。

株式会社西日本不動産 代表取締役社長 光宗 徳弘 氏、株式会社西日本不動産 前代表取締役社長 神田 良一 氏、日工興産株式会社 代表取締役社長 藤井 博 氏、ストライク村上
西日本不動産のオフィスにて(写真左がストライクの村上)

神田:M&Aに関して10社ほどと関係がありましたが、村上さんは穏やかで、私の意見をものすごくよく聞いていただき、こういう人だったら信じられると思いました。人間性が良かったですね。

我々と日工さんでは企業の規模や格が全く違いますので、交渉においては、村上さんは苦労されたと思います。最終的には大きな問題はありませんでした。

藤井:村上さんは元銀行員で、実は私も元銀行員なので、大体思考回路が理解できました。村上さんはやりにくかったでしょうが、柔軟に対応していただき、私は非常にやりやすかったですね。

M&Aを検討されている経営者にアドバイスをお願いします。

神田:M&Aは分かりにくいことが多く、M&Aの本質を理解することをまず覚悟してやりなさいと言いたいですね。村上さんからは、何回も何回も説明を受けました。徹底的に分かるまでやり取りをすることが重要ですね。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(村上 卓・事業法人部 アドバイザー談)

ストライク村上 卓

西日本不動産様は兵庫県川西市を中心にデザインと機能性にこだわった戸建て・不動産事業者でした。神田社長(当時)の娘婿お二人が不動産事業と建築事業を引き継いでおり、ご面談当初はM&Aは一つの選択肢としつつも、引き続き単独での事業運営も視野に入れておられました。日工興産様との複数回のご面談を通じて、事業課題を解決できるだけでなく社風やお人柄などご安心いただけたことが譲渡をご決断いただけた理由と考えております。
娘婿のお二人は提携後もこれまでのノウハウを活かし、西日本不動産様の役員としてご活躍されています。両社の更なる発展を心より祈念しております。

本サイトに掲載されていない事例も多数ございます。
是非お気軽にお問い合わせください。