INTERVIEW

後継者問題や大手参入にどう挑むか。
地域に根ざした二社のM&Aが目指す中小企業の未来像

  • #後継者不在
  • #業界再編
  • #地方創生
  • #老舗
  • #小売業
有限会社ひまわりめがね 相談役 三﨑 康正 氏、株式会社川スミ 代表取締役社長 川澄 幸司 氏

有限会社ひまわりめがね 相談役 三﨑 康正氏
株式会社川スミ 代表取締役社長 川澄 幸司氏

メガネや補聴器などの販売を手がける有限会社ひまわりめがね(福井県福井市)は2024年3月、時計・メガネ・宝飾の小売業を東海地区で幅広く展開する株式会社川スミ(三重県桑名市)に事業を譲渡した。ひまわりめがねは北陸・信越・中部地方のJAでの展示販売を主要なビジネスモデルとしており、川スミも1933年の創業以来、一貫して地域密着型ビジネスに取り組み、現在は35店舗を運営している。同業でありながら販売エリアの異なる両社は、それぞれ譲渡側、譲受側として、なぜ今回のM&Aを決断したのか。そして今後、どのようなシナジーや事業展開を描いているのか。ひまわりめがねの三﨑康正相談役と川スミの川澄幸司代表取締役社長に、これからのビジョンや戦略を伺った。

“メガネの産地”福井の強みとJAネットワークを活かして事業を躍進

ひまわりめがね様の沿革や事業の特徴を教えてください。

有限会社ひまわりめがね
JAでのメガネ販売を機に業績を伸ばしてきたが、最近では補聴器の売上も高くなっている

三﨑:メガネや補聴器、健康用品などの卸・販売を手がけている会社です。1955年の創立当初は農作業用の衣料品を数多く製造し、JAに卸して販売していました。しかし、時代の変化で農業の機械化が進み、農作業用品の需要は次第に減少していきました。新たな事業の柱を模索する中で、福井は“メガネの産地”として世間に知られていたことから、メガネの需要が高まっていると感じました。そこで、JAでメガネを販売してみたところ、売り上げが好調だったため、メガネと補聴器の販売に注力するようになりました。特に補聴器はメガネよりも単価が高いため、現在では補聴器の売上が多くを占めています。

JAでの展示販売は、御社の特徴的なビジネスモデルですね。

有限会社ひまわりめがね 相談役 三﨑 康正 氏
有限会社ひまわりめがね 相談役 三﨑 康正 氏

三﨑:はい。JAのネットワークを通じて、福井、石川、富山、新潟、長野、岐阜、愛知、兵庫など、北陸・信越・中部エリアで幅広く商品を販売しています。高齢化社会が進むにつれ、シニア世代に向けた商品のニーズは今後も高まっていくと感じています。わが社では、シニアのお客様により快適な日常を送っていただきたいという思いから、遠方からお店や販売会場に足を運ばなくても購入いただけるよう、補聴器の訪問販売や出張メンテナンスにも力を入れています。

今回、川スミ様とご縁ができました。どのようなお考えがあったのでしょうか。

三﨑:私は現在76歳です。M&Aを希望したのは後継者不在という問題があったためです。以前、社内承継を試みましたが、その後継者が体調不良で退任し、計画は白紙に戻りました。その後、家族や社内での承継は難しいと判断し、ストライクさんのご提案もあり、川スミ様への第三者承継を決意しました。

譲渡の条件として希望されたことは何でしょうか。

三﨑:まず、社員の生活が将来的に安定すること。それから、今後は訪問販売と店舗販売を融合しながら事業を拡大していきたいという、わが社のビジョンを理解していただけることが重要な条件でした。川スミ様のように、地域に根ざした店舗を数多く展開され、販売のノウハウが豊富な企業とのM&Aは理想的でした。

地域密着型企業の連携が生み出す、大手にはないビジネスモデル

川スミ様は時計・眼鏡・宝飾を取り扱う企業として、東海地域で圧倒的な知名度をお持ちですね。今回、ひまわりめがね様をグループ化された狙いについて教えてください。

株式会社川スミ 代表取締役社長 川澄 幸司 氏
株式会社川スミ 代表取締役社長 川澄 幸司 氏

川澄:弊社は、金細工師だった祖父が1933年に時計専門店として創業しました。現在では三重県・愛知県・岐阜県の東海エリアを中心に、時計、メガネ、宝飾を扱う小売業として、35店舗を運営しています。創業以来、一貫して地域密着型のビジネスを経営方針として掲げ、地元の信頼を何より大切にしてきました。ひまわりめがねさんの強みは、お客様の生活に密着したJAの販売ルートをビジネスの土台にされていることです。以前、弊社でもJAとつながりを持とうと動いていた時期がありますが、新規参入の難しさを実感しました。今後の事業を広げていく上で、ひまわりめがねさんとの出会いは、大きなご縁だと思っています。

川スミ様がM&Aを進める上で重視されていることは何でしょうか。

川澄:当社のように、先代や先々代から店舗を受け継ぎ、地域に根ざした事業経営を行ってきた中小企業は全国に多々あります。一方で、大手企業の参入や地域の人口減少などにより、苦戦している同業者が多いのも事実です。

しかし私たちには、大手による画一した販売方法では真似できない、地域の顧客を大切にしてきた販売手法や顧客との信頼関係があります。川スミは、こうした中小企業が集まってタッグを組み、中堅クラスのグループを作りたいと考えています。

ひまわりめがねさんと弊社の展開エリアは少し離れていますが、同業として地域のお客様に信用され、愛されながら長く続けてこられた点や、三﨑相談役の温かいお人柄がM&Aの決め手になりました。

今回のM&Aに対し、ひまわりめがね従業員の皆さまの反応はいかがでしたか?

三﨑:成約に向けて動いている間は詳しいことを伝えず、成約が確定してから社員に話をしました。社員の待遇や会社のビジョンは変わらないことを伝えたところ、みんな安心した表情で、状況を理解してくれました。もっと動揺したり、不安に感じたりするのではと心配しましたが、スムーズに受け入れてくれたので、ホッとしています。

2024年3月のM&A実施から約4か月。現在の状況や今後どのようなシナジーを見込んでいるのか、お聞かせください。

三﨑:私は来年いっぱいまでは相談役として残り、会社の動向や社員のようすを見守らせていただく予定です。現在、補聴器の新たな販路として、地域の耳鼻科医と勉強会を開いて連携し、お客様を紹介いただく方法に力を入れているので、川澄社長のもとで引き続き取り組んでいけるよう、サポートしていきたいと思っています。

川澄:半年間は三﨑相談役に実務をリードしていただくことになっています。その間、私は営業の方とのコミュニケーションを重視しながら状況把握に努め、店舗と訪問販売の融合を進めていきたいと思っています。また、ひまわりめがねさんには、確かな技術を持ったスタッフが多くいらっしゃるので、今後、その方たちがより輝ける方法を考えながら、販売チャネルの拡大などを図っていきたいですね。それにより、川スミの補聴器に対する取り組み方が、よりお客様に喜んでいただける方向に変わっていくと考えています。

会社の未来を見据えた変革を。
健全な承継体制を実現するM&Aという選択。

ストライクのサービスや担当者についての感想をお聞かせください。

三﨑:最初にお会いしたときから、感じの良い方だなと思っていました。譲渡に向かうプロセスの中で、検討に必要な情報や知識を提供いただき、M&Aについて勉強しながら進めていくことができました。こうして成約に至ったことを非常に満足していますし、ストライクさんには本当に感謝しています。

川澄:今回のM&Aでは初めて経験することが多く、いろいろと勉強させていただきました。担当の方が地方出身ということで、感覚的に相談しやすいのも良かったですし、一生懸命に粘り強く取り組む姿勢や熱意がこちらに伝わってきました。今後の事業発展のためにもM&Aは重要な手段だとより強く感じました。

後継者不在などの問題でM&Aを検討されている経営者の方にアドバイスをお願いします。

有限会社ひまわりめがね 相談役 三﨑 康正 氏、株式会社川スミ 代表取締役社長 川澄 幸司 氏、ストライク丸山、ストライク上野
会社の継続や事業発展のためにM&Aは欠かせない手段だと話す両者(写真左はストライクの丸山、写真右が上野)

三﨑:会社が傾いてから社員やお客様、取引先に迷惑をかける前に承継体制を作っておくことは、経営者の責任だと思います。後継者はいない。でも、長年地域の皆様とともに歩んできた会社の事業を存続させたい。そんな我々にとって今回のM&Aは本当にありがたい手段となりました。同じような課題をお持ちの方は、ぜひストライクさんに相談してみてください。

川澄:事業をどのようなかたちで継続していくか。中小企業にとって難しい問題ですが、経営者の体力があるうちに健全な状態でつながることが重要だと思います。悩みすぎずに、自分たちがどう変わっていくかを考えると、いろいろな方法が見えてくるのではないでしょうか。従業員あっての会社です。M&Aを選択する場合、お金のやり取りだけに終わらず、互いに信頼関係が築けるかどうかを大事にしてほしいと思います。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(丸山 隼人・企業情報部 アドバイザー談)

ストライク丸山 隼人

ひまわりめがね様は北陸エリアを中心に信越、中部地方にて補聴器等をJAが開催する展示会で販売する事業者でした。一度社内承継を実施されましたが、やむを得ない事情で今回M&Aの選択に至りました。補聴器は高齢化が進む日本社会においてこれからも需要がある商品で、その商品を地方の細部まで店舗展開されるJAで販売されており、地域経済にとっても存続が必要な企業様であったと思います。今回の川スミ様とのM&Aについては取扱商品に親和性がある一方で、販売形態やエリアが異なる事で相互補完しあえる企業様同士のM&Aだったと考えております。
今後双方の強みの融合やノウハウの共有が行われ、両社様が益々発展される事を心より祈念しております。

M&Aアドバイザーより一言(上野 裕貴・名古屋営業部 アドバイザー談)

ストライク上野 裕貴

譲受企業の川スミ様は創業以来「地域密着型経営」という経営方針を掲げ、宝飾・眼鏡専門店を東海エリア中心に多数展開されてきました。川澄社長と初めてお会いした際に「大手企業に負けない中小企業グループをつくっていきたい」という強い想いをお話いただき、中部地方で補聴器販売事業を展開している老舗のひまわりめがね様とのご縁に繋がりました。M&A後もひまわりめがね様の従業員の方々が前向きに一緒に頑張ってくれていると伺っており、川澄社長の想いがひまわりめがね様の中にもしっかりと根付き始めていると実感しました。
両社の更なる発展を祈念するとともに今後も川スミグループが目指す中小企業グループのサポートをしていきたいと考えております。

本サイトに掲載されていない事例も多数ございます。
是非お気軽にお問い合わせください。