INTERVIEW

わずか2日の意思決定
技術力と販路拡大のシナジーで
工業炉事業の成長を目指す

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日興高熱工業株式会社 取締役会長 二村 哲哉 氏、ニイミ産業株式会社 管理部 取締役部長 新美 雅之 氏

日興高熱工業株式会社 取締役会長 二村 哲哉 氏
ニイミ産業株式会社 管理部 取締役部長 新美 雅之 氏

2024年5月末、工業炉メーカー日興高熱工業株式会社(名古屋市)が、ニイミ産業株式会社(愛知県春日井市)に株式譲渡した。話が持ち上がってからわずか2日後には両社トップが面談し、意思決定。約4か月で成約するというスピード感だった。互いに工業炉の製造で長い歴史をもつ会社同士、どのようなシナジーを目指すのか。日興高熱工業株式会社 取締役会長 二村哲哉 氏(当時代表取締役)と、 ニイミ産業株式会社 管理部 取締役部長 新美雅之 氏にお話を伺った。

両社の歴史と事業概要

まず、それぞれの会社の概要と歴史について教えてください。

新美氏:ニイミ産業の創業は明治時代にさかのぼります。元々は酒屋を営んでいましたが、石炭を扱うようになり、その後エネルギー事業へと展開してきました。戦時統制にともない一時解散していましたが、1949年に現在の会社が再設立され、今年で75周年を迎えます。

1960年ごろから、石炭に加えてLPガスや重油などの石油燃料を扱うようになりました。特に工業用ガスの分野に力を入れ、ガスの供給設備や消費設備の製造・メンテナンスも行っています。また、陶磁器用の窯業炉の開発など、周辺設備の事業も展開してきました。

二村氏:日興高熱工業は、私の父が1958年に創業しました。工業炉の設計施工、メンテナンスを主な事業としています。1969年に会社組織となり、現在に至ります。

当初は様々な種類の加熱炉や脱臭炉などを手がけていましたが、ここ20年ほどはアルミの溶解炉が主力製品となっています。現在、アルミ溶解炉が数量で9割以上、金額でも8割から9割を占めています。その他には、金属の熱処理炉や加熱炉、直燃式脱臭炉なども手がけています。

M&Aを検討したきっかけ

今回のM&Aを検討されたきっかけについて教えてください。

日興高熱工業株式会社 取締役会長 二村哲哉 氏
日興高熱工業株式会社 取締役会長 二村哲哉 氏

二村氏:最大の理由は後継者問題です。当社の事業は、お客様のニーズに合わせて一品一品設計・製作し、その後のメンテナンスまで責任を持つ必要があります。安易に事業を終了するわけにはいかず、お客様にご迷惑をかけないよう、事業を承継する必要がありました。

5年ほど前からもやもやと将来について考え始め、お客様からも「日興さんこの後どうなるの」といった質問を受けるようになりました。自分の子供たちも別の仕事についており、機械を扱うこの仕事にはあまり向いていないと感じていたこともあり、第三者への承継を考えるようになりました。

ニイミ産業側から見て、日興高熱工業のどういった点に魅力を感じられましたか?

新美氏:当社は燃料供給業として、LPガスやガソリンの供給を主な事業としてきました。しかし、昨今の情勢を踏まえ、燃料供給だけでなくサービスやアフターメンテナンスにも力を入れる方針です。

工業用ガス部門では、工業炉やバーナーのアフターメンテナンスを強化したいと考えていました。工業炉メーカーは専門性が高く、アフターメンテナンスのニーズも高いと判断しました。日興高熱工業さんの高い技術力に魅力を感じ、今回の話を非常に良い機会だと捉えました。

わずか2日の意思決定。とんとん拍子の交渉過程

M&Aの話が持ち上がってから、非常にスピーディーに進んだそうですね。その経緯を教えてください。

二村氏:両社の距離は、直線で20キロほど。以前から存在を知っていましたが、今年に入って初めて仕事をご一緒する機会があり、そこで「今がチャンスだ」と思いました。ニイミ産業の方に直接メールでアポイントを取り、事業承継について相談したいと伝えました。

驚くべきことに、2024年1月30日に話をして、翌31日には「明日時間ありませんか」と連絡があり、2月1日にはニイミ産業の新美良夫取締役社長が当社を訪問されました。工場も見ていただき、その場で前向きな返事をいただきました。

新美氏:当社としても、日興高熱工業さんの高い技術力には以前から注目していました。二村さんからお話をいただいた際、すぐに社内で検討し、迅速に対応させていただきました。

交渉の過程で、特に大切にされたことはありますか?

ニイミ産業株式会社 管理部 取締役部長 新美雅之 氏
ニイミ産業株式会社 管理部 取締役部長 新美雅之 氏

新美氏:当社は家庭用プロパンガス事業でM&Aの経験がありました。そのため、今回の交渉でも大きな問題は生じませんでした。お互いの信頼関係を大切にしながら、スムーズに進めることができました。

今後の展望と期待されるシナジー

今回の資本提携によって、どのようなシナジーを期待されていますか?

二村氏:当社は60年以上の実績と顧客基盤が強みですが、事業規模の制約から、これまでは主に東海3県(愛知、三重、岐阜)が営業エリアで、あとは関西及び北陸地方があるくらい。近年では関東以北は数える程度でした。ニイミ産業さんという大きな後ろ盾を得ることで、さらなる開発や販路拡大が可能になると期待しています。

新美氏:工業炉事業については、日興高熱工業さんの技術力と当社の販売網を活かし、段階的に日興高熱工業さんに移管していく予定です。ただし、陶磁器向けの窯業炉事業については当社の祖業でもあるため、引き続き自社で展開していきます。

両社の強みを活かし、工業炉事業の売上高を5億円程度まで拡大することを目標としています。

今回のM&Aを振り返っての感想をお聞かせください。

二村氏:当初は半信半疑でしたが、ニイミ産業さんの迅速な対応と熱意に驚きました。お客様への責任を果たしつつ、会社の未来を託せる相手に出会えたことを嬉しく思います。

新美氏:日興高熱工業さんの高い技術力と実績は、当社の事業戦略にとって非常に重要です。今回のM&Aを通じて、両社の強みを活かし、工業炉事業のさらなる成長を目指していきたいと考えています。

お相手が決まっている中、M&A仲介であるストライクに依頼した理由は何ですか。

日興高熱工業株式会社 取締役会長 二村哲哉 氏、
                ニイミ産業株式会社 管理部 取締役部長 新美雅之 氏、ストライク小牧・秋吉洋斗
日興高熱工業株式会社 取締役会長 二村哲哉 氏(右)
ニイミ産業株式会社 管理部 取締役部長 新美雅之 氏(右から2番目)
株式会社ストライク 事業法人部 チームリーダー 小牧 成宜(左)アソシエイト 秋吉洋斗(左から2番目)

二村氏:M&Aは当然初めてですから、何をどうしたらいいのかわからない状況でした。税理士の先生や、メインバンクに相談しましたが、ともに名前が出てきたのがストライクさんでした。2月1日に新美社長が訪ねてきて、(M&Aの)話を進めましょうとなって、急いでストライクさんを含む数社と連絡をとりました。

その中でストライクさんが一番やりやすいと感じました。私は正直ぐいぐい押してくる人や無理やり進めようとする人はあまり得意ではありません。その点、ご担当者だったストライク小牧さん(事業法人部チームリーダー 小牧成宜)や秋吉さんとはリラックスして、落ち着いて話ができ、スピード感も共有することができました。

最後に、初めてM&Aを検討する方にメッセージをお願いします

二村氏:私の経験から言えるのは、いずれ譲渡しようと考えているならばさっさと動いた方がいい。何か悩んでいるよりは、ダメならダメでまた違う方法を考えた方がいいです。

新美氏:譲り受ける側の立場においては、相手の立場にたってとにかく親身になるということが全てと思っています。資金の問題など様々な問題がついて回りますが、お相手との信頼関係が全てだと思います。逆に言えば信頼できないと判断したらやめておいた方がいいと思っています。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(秋吉 洋斗・事業法人部 アドバイザー談)

ストライク秋吉 洋斗

譲渡企業の日興高熱工業の二村会長は非常に従業員思いで、ニイミ産業と組んで従業員が安心して働ける環境を提供したいと常々おっしゃっていました。
譲受企業のニイミ産業様も、以前から日興高熱工業様の技術力に関心を持っており、お互いにリスペクトを持って交渉に臨んでいたため、両社ともに意思を尊重し合い、スムーズに進みました。
両社は、お互いに必要なリソースを補完し合える良きパートナーになれると確信しています。M&Aには乗っ取りなどのネガティブなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、本件のように会社の発展のための有効な手段であることを、社会に広めていきたいと思います。

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