ご成約インタビュー No.89
INTERVIEW
約150軒のホテル・旅館をM&A
IT活用と効率的運営で事業拡大を目指す
- #創業者
- #事業拡大
- #業界再編
- #戦略的M&A
- #ホテル・旅館
ブリーズベイホテル株式会社 代表取締役社長 津田 則忠 氏
ホテルの買収と運営を手がけるブリーズベイホテル(BBH)グループ(本社・神奈川県横浜市)の津田則忠社長は、2004年7月、ホテル2店舗の買収を皮切りに、現在まで国内外に149店舗(2024年6月時点)を擁する企業に成長させた。今年2月にはストライクの仲介で中村第一ホテル(高知県土佐清水市)を新たに譲り受け事業展開している。譲り受けを決めた理由や成約に至った経緯、シナジーを生み出す方法などについてお話を伺った。
独立を決断させた宿泊業界再編の予感
前職は企業再生会社のファンドマネージャーをされていました。ホテルに特化した買収・再生会社を設立するに至った経緯について教えてください。
企業再生の仕事を積み重ねる中で、「自分自身の会社で、この事業をしてみたい」という気持ちを抱くようになりました。ただ、具体的な計画があったわけではありません。個人の資金力、自分の性格や仕事のスタイル考えると、常に動き回り、小さな案件を積み上げて規模を大きくしていくタイプの投資が向いているかなとうっすらと思い描いていました。
転機となったのは、会社に持ち込まれた横浜ベイブリーズホテルと市川シティホテルの買収・再生案件でした。引き受けるには規模が小さかったのですが、調べてみると、全国に3万軒以上あるホテル・旅館の9割は1店舗だけを所有する家族経営でした。それぞれの規模が小さく経営やマーケティングのノウハウもけっして強いとは言えません。過去に小売業の店舗が大企業のスーパーマーケットに吸収、集約されていったようなムーブメントが宿泊業界でも起きるのではないか。そうひらめくと、すぐに行動に移りました。個人のネットワークで資金を集め、1か月半後には会社を退職。ホテルを買収し、社長に就きました。私にとって、まさに人生の桶狭間でした。
どのように事業を拡大したのでしょうか?
インターネットの活用をいち早く進めたことが成長につながりました。まずは繁忙期と通常期で宿泊料金が変動するネット予約システムを導入しました。ブリーズベイホテルではそれまでツインルームの場合、平日1万5千円、休日2万5千円で固定されていましたが、繁忙期の価格を一気に引き上げました。たとえば、クリスマスは通常の数倍の価格に設定したものの、それでも予約が入りました。料金を変動させただけで月あたりの売り上げが2割も増えました。
集客のために企業が運営するホテル予約サイトも利用しました。
マーケティングをした上で工夫した写真やコピーを載せると明らかに集客が伸びました。ベイブリーズホテルの特集記事が取り上げられ、予約サイトの売り上げ全国1位になったこともあります。
この成功事例をアピールすることで資金調達ができるようになり、ネット予約システムを使っていないビジネスホテルをターゲットに買収を進めました。テコ入れすると狙い通りに売り上げは改善しました。M&Aによって10軒くらいの規模に達したあたりでグループとしての基礎ができたので、あとは買収と再生を繰り返していきました。
これまで買収したホテルはどのような理由でBBHグループに買収されたのでしょうか?
ホテルが売却される理由は大きく2つに分かれます。ひとつは後継者の不在や大企業による非中核事業の整理のように売り手の裁量で決められる場合と、経営不振で金融機関に売却を迫られたり、競売にかけられたり強制的に売られる場合です。リーマンショックのような経済危機の頃は後者が中心でしたが、近年は前者の裁量で売りに出すケースが増えています。ただ、自主的な売却でも、大儲けをしているようなホテルが売りに出されるケースは少ないので、やはり買い手には事業を立て直す役割が伴います。
「後継者の不在」という言葉が出ましたが、現在、宿泊業界が抱えている経営課題について教えてください。
宿泊業界に限りませんが、コロナ禍以降の人手不足は深刻です。私たちはコロナ禍後半の2022年秋に宿泊客数が回復傾向に入ると同時に、外国人スタッフの確保に動き、短期間で200人から500人まで一気に増やしました。おかげで現在も人手不足は生じていませんが、地獄のコロナ禍を乗り越えたのにもかかわらず、夕食が提供できなかったり、全館の3割の部屋が予約停止になったり、対応に苦しんでいるホテルや旅館の話は聞いています。
全国に展開するグループの強みで人手不足の課題を解消
BBHグループの強みについて教えてください。
国内外に149店舗あるグループが強みです。小さなホテルでは、繁忙期に従業員が足りず、逆に閑散期には余るという状況になりがちですが、BBHグループは状況に応じて人手に余裕のあるホテルと足りないホテルの間でスタッフの数を調整していますので、常に安定的したサービスが提供できる一方、人件費の抑制にもつなげています。
グループの一体感も強みです。買収したホテルは例外なくブリーズベイ色に染めます。特に従業員の動き方や働き方は全店舗で統一しています。たとえば客室あたりの清掃担当者の人数やノルマも共通の規定をつくり効率的な運営につなげています。
ホテルを譲り受けるにあたって条件はありますか?
業績回復を見込めるかどうか、ブリーズベイホテルの色に染まってもらえるか、に尽きます。交渉段階でホテルの名前を残してほしいというオーナーの方もおられますが、グループとしては一体感は何より大切ですし、集客のマイナスになるような要望はお受けすることはできません。
中村第一ホテルを譲り受けた経緯や理由を教えてください。
ストライクさんから最初にお話をいただいたのは2023年12月でしたが、とても受け入れやすい案件でした。中村第一ホテルの近くには私たちBBHグループのホテルクラウンヒルズがありましたので、営業的に見込める数字は見通せましたし、地元の状況も把握できているので不安要素がほとんどありませんでした。
課題は社長が退任した後を任せる支配人の確保でした。買収から数か月はやるべきことがたくさんありますので、本社からスーパーバイザーを派遣しますが、年に10軒以上も新規に開業するので、長期間の常駐はできません。本来は勤めてきた地元の従業員が適任ですが、今回はホテルクラウンヒルズ中村の支配人が中村第一ホテルを兼任できるということで、その課題を解決しました。
力量のあるM&A仲介会社の担当者とは?
ストライクの担当者の対応やサービスについての感想を教えてください。
担当者の矢野さんが数年前から中村第一ホテルの笹本社長のもとに何度も足を運び当社に話しを持って来ていただく前に、M&Aに向けて交渉をしていたと聞いています。私は前段階の交渉にはタッチしていませんが、トップ面談の前に私が納得できる合理的なラインまでにもっていってくれていたので、買い手としては理想的な仲介をしてくれたと思っています。
中村第一ホテルの収益改善のための施策やシナジーを生み出すための取り組みについて教えてください。
譲り受け前の経営状況を分析すると、宿泊客数が現状のレベルのままでもコストを削減すれば、採算が改善できると見込めました。大きめの赤字を抱えていたのはホテル内にあるカフェと居酒屋でした。カフェは宿泊客もあまり利用していない状況でしたのでクローズし、スタッフはほかのホテルに異動してもらいました。
居酒屋は昼と夜の営業でしたが、昼は価格の安い定食しか出しておらず、収益性がよくないため営業は夜に限定し、メニューを幾分簡素化して赤字を削減しました。
クラウンヒルズホテルのお客さんに中村第一ホテルの居酒屋のビール一杯無料券を配ったり、中村第一ホテルのお客さんがクラウンヒルズホテルの温泉大浴場を利用できるチケットを提供したりシナジー効果もはかっています。
今後のM&A戦略について教えてください。
いつまでに何軒といった数値目標はもっていません。目標先行にしてしまうと無理が生じてしまいますから。それでもこれまでと同じペースで年間10軒程度の買収はできるだろうと予測はしています。
ストライクのような仲介会社との連携について期待することなどをお聞かせください。
宿泊業界のM&A交渉では売り手のオーナーさんが、買い手から見て、合理的でない金額や条件を提示されると、話がまとまらず交渉は長期化します。
そうした状況で売り手の方の心にしっかり寄り添って、買い手が受け入れられる合理的なラインの内に引き込んでくれる担当者さんは本当に力量があると思っています。
津田社長のご経験を踏まえ事業承継に悩む経営者の方に向けたメッセージをお願いします。
私が我慢ならないのは経営者の力が衰えたり、引退したりしたときに会社のレベルや業績が下がり、従業員やお客さん、取引先に迷惑をかけてしまうことです。そうした反面教師的な事例を見てきたので、私はもし将来、自分が衰えてきたと思うようであれば、迷わず会社をより良いかたちに引っ張り上げてくれる方に任せたいと考えています。経営者の方にお伝えしたいのは、たとえオーナーであっても、会社は社会の公器ですから、従業員やお客さん、取引先の人生を考えて引き際の決断をしなくてはならないと思っています。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(矢野 大地・四国営業部 アドバイザー談)
本件がブリーズベイホテル様と弊社の初成約の案件となりました。
ブリーズベイホテル様は津田社長の素早い判断スピードのもと、これまでに何件ものM&A実績を実行されてきました。私自身、経験豊富な津田社長に牽引されて進めた案件のように思います。
ブリーズベイホテル様は社内体制がしっかりされており、ホテル内の人材が不足した場合でも日本全国で応援できる体制が敷かれているのをお聞きしたときには驚きました。
特に地方の企業様は人材不足を懸念されている企業も多く、ブリーズベイホテル様のような会社を安心して紹介できます。
今後もブリーズベイホテル様の事業展開のお手伝いをしていきたいと思っています。
本サイトに掲載されていない事例も多数ございます。
是非お気軽にお問い合わせください。
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