ご成約インタビュー No.59
INTERVIEW
会計事務所同士のM&A
コロナ禍で関与先が減るなか
合併によるスケールメリットを追求
- #後継者不在
- #事業拡大
- #業界再編
税理士法人 BIG OCEAN会計事務所
代表社員税理士 北原 慶光氏(写真左)
税理士 花房 竜介氏(写真右)
代表を降りて一税理士として働きたい――。50歳を前に父親から継いだ会計事務所の事業譲渡を考えた花房竜介氏。M&Aマッチングサイトに登録して譲渡先を探したものの、希望の条件先は見つからず、ストライクに依頼。1カ月後に同じ大阪市内で会計事務所を営む北原慶光氏の紹介を受けた。コロナ禍で関与先が減り、経営面で厳しさが増す税理士業界。時代の先を見据えてM&Aによる事業規模拡大に動いていたと北原氏は話す。両社の合併で商号を改め、新たなスタートを切ったお二人に、M&Aに至るまでのお話を伺った。
体調不安から事業譲渡を検討
M&Aマッチングサイトでは見つからず仲介会社に
はじめに花房先生に伺います。M&Aを検討されたきっかけは何ですか。
花房:大阪市内で父が開業した花房会計事務所を、父の急逝で引き継いで18年間代表を務めてきました。顧客のニーズに応じて会計業務以外の課題も弁護士や社労士などと連携し、ワンストップで解決できる体制をつくって、経営も順調でした。そうした状況で事業譲渡を考えた理由の一つは、この数年で3度、病気で入院したことです。万が一私に何かあった場合、職員や顧客がどうなるのか。その責任をすごく意識するようになりました。そしてもう一つは、私自身が経営者に向いていないと感じ、その立場よりも現場で税理士業務に専念したいと思ったことです。
最初はM&Aマッチングサイトを利用されたそうですね。
花房:どれくらいの反応があるのか試してみようと、大手のM&Aマッチングサイトで事業売却の登録をしました。10社ほどオファーがきて、8社と対面でお会いしました。ITベンチャーや多店舗展開している飲食業、上場を目指す人材派遣会社など他業種からが多かったです。税務や会計の専門知識を社内で活用したり、ソフトウエア開発に活かしたりと目的もさまざまで面白いとは思いましたが、譲渡後の先が見えない不安と、顧客の役に立つ本来の税理士業を続けたいという思いがあったので結局、どの会社とも話が進みませんでした。
その後はどういう行動を取られたのですか。
花房:同じ会計事務所に事業譲渡したいと考えたのですが、マッチングサイト経由のオファーはなかったので、ストライクさんともう1社のM&A仲介会社に、「相談を受けていただけますか」と問い合わせの電話をしました。すると、ストライクさんからすぐに「伺います」と連絡がきたんです。年間売上数千万円の事務所なので、こんな小さな案件は受けないだろうと思っていたので正直、驚きました。それから約1カ月間のうちに、譲渡先候補として8社の会計事務所をリストアップしていただき、2社目で北原先生とお会いしました。
北原会計事務所への譲渡の決め手は何だったのでしょうか。
花房:直感です(笑)。北原先生と北原先生の事務所の職員さんお二人に初めてお会いしたとき、皆さん、とても良いお顔をされていました。その表情を見て、これはきっとうまくいくと思いました。後になって北原先生の事務所では20年、30年と働く方が多いことを知り、人を大切にする職場であることが、そのときの表情に表れていたのだと思いました。初対面の帰りにストライクの猪野さんに、「北原先生と一緒に働きたいです」と伝えました。
税理士業界が抱える危機感から
15年前から譲渡案件を探し続けた
事業を譲り受けた北原先生に伺います。ストライクとのご縁と、紹介を受けた花房会計事務所のどこに魅力を感じたのか教えていただけますか。
北原:ストライクさんとは、担当してくれた猪野さんからのお電話がきっかけでお付き合いが始まりました。以前より、「会計事務所の案件があったら紹介してほしい」と伝えていたので、今回のお話をご紹介いただきました。譲り受ける決め手となったのは、花房先生がもつコンサルティングのノウハウが得られることと、事務所の事業規模が買収できる範疇にあったことです。私自身、M&Aは15年ほど前から検討してきました。スケールメリットを追求しないとこれからの税理士業界では生き残れない。そうした危機感をずっともっていました。
税理士業界が抱える危機感とは何でしょうか。
北原:まず少子化です。これから日本の人口が減り続けると事業者も減り、顧客の獲得競争が激しくなります。加えてこの数年のコロナ禍で、当社に限らず、どの会計事務所も売上が減っています。税理士一人で従業員数人を抱える個人事務所で続けていくのは厳しい時代に入りました。今後、都市部で事業的に成立するラインは、年商2億円ぐらいではないかと私は見ています。東京で増え始めた会計事務所のM&Aは、いずれ関西にも及んでくるとみて、M&A案件を探していました。これまで3件交渉しましたが、譲渡元の家族の反対などもあって結局うまくいかず、今回初めて成約できました。
スケールメリットを追求した今回のM&Aの先にある事業戦略を教えてください。
北原:大阪事務所に花房先生のところから4名が加わり、10年前に開業した東京事務所には来年度、職員3名を増員します。その一人は中国人です。現在、東京から沖縄まで関与先がありますが、日本の企業だけでは限界がある。国内に進出する外国企業の契約獲得も視野に、まずは中国人のスタッフを採用し、さらに米国やオーストラリアなど英語圏のスタッフも採る予定です。
合併による事業拡大を
新たな商号で関与先にアピール
M&Aを受けて事務所名を新たにされましたね。
北原:北原会計事務所を2023年1月にBIG OCEAN会計事務所に商号変更したのは、買収されたという印象を花房会計事務所の関与先に与えずに、合併による新組織で事業拡大を図ると受け止めてもらいたかったからです。
花房:父の代からの関与先の中には合併に反対する声もありましたが、新しい事務所の役員となり、税理士として引き続き仕事をすることを説明すると納得されて、契約を継続していただけました。事務所名を変えて、役員として受け入れていただいた北原先生に感謝しています。
税理士業界では後継者不在で悩まれている事業主は多いのでしょうか。
北原:多いと思います。少子化で後を継ぐ子どもがいないケースや、税理士業が以前に比べると、そんなに稼げる仕事とは言えなくなって子どもに継がせないケースもあります。税理士の平均年齢は60歳を超えていて、従業員10名以下の事務所が大半です。高齢化と従業員の雇用継続を考えると今後、M&Aという選択は増えるのではないでしょうか。
ストライクの担当者の対応はいかがでしたか。
北原:私はこの人に任せると決めたらあまり細かいことは言わないタイプです。担当いただいた猪野さんは頻繁に連絡をくれたので、任せて不安になることがなく、花房先生との橋渡しもしっかりとやってくれました。不満に感じたことは何もありません。
花房:前向きな気持ちで楽しくM&Aを進めることができました。事業譲渡に満足しているこの結果が、猪野さんの対応のすべてを表していると思います。
M&Aで何を得たいか目的を明確に
時代の先を見通す力こそ経営者に必要
最後に事業承継に悩まれている同業者に経験からのメッセージをお願いします。
花房:私と一緒に事務所を担っていた税理士が、M&Aを終えたとき、「不安だったことが解消された」と言っていました。それまで何も言わなかったけれど、私の体調を気遣い、不安に感じていたわけです。その言葉を聞いて、職員や顧客に安心してもらえるM&Aを選択して良かったと思いました。私は経営者ではなく、経営をサポートする側に回り、一税理士として顧客に向き合いたいという希望がありました。M&Aでは、何を実現したいのかを明確にもつことが大事だと思います。
北原:私から伝えたいことは一つ、経営者は時代の先を見通す力がないとダメだということです。この先の税理士業を考えると、顧客獲得において事業規模の拡大は重要です。今後も良い案件があればM&Aを進めたいと思っています。
本日はありがとうございました。
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