ご成約インタビュー No.58
INTERVIEW
経営者と獣医師、二つの役割を切り離す
病院のさらなる成長を目指した
経営戦略のM&A
- #創業者
- #事業拡大
- #戦略的M&A
- #介護・医療
上本町どうぶつ病院 院長 中西 崇之 氏
大阪市天王寺区の上本町どうぶつ病院は、「根拠に基づいた医療(Evidence Based Medicine)の実践」を医療理念に、多くの動物を病気やケガから救っている。2010年に同院を開業した獣医師の中西崇之氏は「病院をさらに成長させたい」との思いから、2022年11月、投資ファンドであるWMパートナーズ株式会社(本社・東京都千代田区)との資本提携を実現させた。M&A以前に抱えていた経営課題や資本提携後の変化、動物病院におけるM&Aの可能性などについて中西氏にお話を伺った。
1.5次診療や難易度の高い症例にも対応
よりハイレベルな医療に取り組むため
M&Aにより経営と診療を分業化
上本町どうぶつ病院の沿革と特徴を教えてください。
2010年に開業して、今年で13年目になります。1人でスタートしましたが、現在では常勤の獣医師が8名、非常勤の専門医が3名という規模にまで成長しました。
当院では、内科・外科・皮膚科・腫瘍科・歯科・眼科・循環器科・整形外科に対応しています。ホームドクターとして1次診療を行いつつ、より専門性の高い医療も提供する「1.5次診療」を実践しており、一般の動物病院では診断・治療が難しいような症例にも対応しているため、多くの医師が在籍している形です。
また、年末年始を除いて年中無休で診療をしているので、あらゆるタイミングで診療の受け皿になっていることも一つの特徴です。近隣の方だけでなく、関西圏の少し遠い場所から来てくださる方もいます。
これまでどのような経営課題を抱えていたのでしょうか。
ありがたいことに経営自体はとても順調でした。しかし、働き方改革など時代の流れに沿って取り入れるべきところは導入したいという思いと、病院としてより良い医療を提供していきたいという思いが重なって、二つのバランスを取ることが非常に難しい状況でした。
M&Aを検討されたきっかけを教えてください。
根本として「この病院をさらに伸ばしていきたい」という思いが強くあり、この病院のことを一緒に悩み、一緒に決断し、議論し合う人数が増えれば、より良い方向に向いていくのではないかと期待してM&Aを希望しました。私自身が経営者かつ獣医師というプレイヤーであることに限界を感じてもいましたので、経営と診療を分業化することで、より質の高い医療を提供したい、最新の獣医学を習得し続け新たな治療にも積極的に取り組めるようにしたいという思いもありました。
ビジネスの知識や経営のノウハウを求めて
業界経験がない企業との資本提携を決意
M&Aを進める中で苦労したことなどはありましたか?
これまで経理面はすべて妻に任せていました。極端に言えば、預金残高も自分の給料も知らず、お金の流れや状況を全く把握していない状態です。お相手に自分のやりたいことや理想を一心に語ることはできましたが、お金にまつわることになると、最初は全然話についていけず、苦労しましたね。
資本提携先としてWMパートナーズさんを選ばれた理由を教えてください。
WMパートナーズさんは、手を挙げていただいたタイミングが一番早かった。私はそういった熱意も大事にしたいと思いました。また、動物病院業界に初めて参入される中で、業界を一緒に良くしていこうという姿勢が伝わってきたこと、業界に対して高い関心を持っている印象を受けたことも譲渡先に選んだ理由の一つです。
我々は一つの動物病院として1.5次診療や多科に対応できる体制を整え、他の動物病院が簡単には到達できない領域にまで達したと考えています。この先、さらに上を目指すためには業界特有の常識だけではなく、社会の当たり前やビジネスの常識、経営のノウハウといったものを取り入れていくことが必要だと思っていたので、動物病院グループへの参加は考えませんでした。業界を知らない方に先入観を持たずに当院の成長を一緒に考えていただきたいと思ったときに、WMパートナーズさんが最適な資本提携先だと判断しました。
WMパートナーズさんと一緒になってから、どのような変化がありましたか?
事務関連の業務や経理業務などをお任せできるようになり、大変だった雑務から少しずつ解放されているような状況です。ほかにも、スタッフの働き方改革などにもご協力いただいています。今後もスタッフにとってより良い方向に変わっていくことを期待しています。
成長戦略としてのM&A
経営という重荷を一つ手放すことで
新たなチャレンジが可能に
今後、成長戦略としてのM&Aは、業界の中で広まっていくでしょうか。
M&Aを検討する先生は増えるのではないでしょうか。今回のM&Aに関しても「経営という一つの荷物を下ろすことで、もっと自由にできるんじゃない?」と言ってくださる先生や、M&Aに興味を示す先生もいます。
規模に関係なく、どこの動物病院でも経営と獣医師という二足のわらじを履いている先生がほとんどですが、本当はしんどいと感じている人が多いと思います。M&Aによりさらに病院を良くできるのであれば、自分の動物病院であることにこだわらなくてもいいし、そのほうが世の中のためにもなるのかなと感じています。成長戦略としてのM&Aであれば、前向きに捉えることができるはずですし、相乗効果も期待できると思います。
実際、私の周りでもM&Aを行ったり、検討されている先生が何名かいます。もちろん、M&Aに対しての考え方や今後の身の振り方はそれぞれ異なります。一般的にM&Aというと、少し後ろ向きなイメージもありますが、私はその感覚は一切持っていません。どちらかというと私は少数派の意見かもしれませんが、「自分がどこまでやっていけるのか」という前向きな希望を持ってM&Aを実行しました。
数あるM&A仲介会社の中からストライクを選んでいただいた理由をお聞かせください。
実はストライクさんを知る前に、とある動物病院グループとM&Aの話を進めていました。しかし、話が折り合わずに頓挫していたんです。M&Aの話を進めるのは体力も精神力も使うため、疲れてしまって休んでいた時期に、ストライクさんから面談依頼の電話があり、話を聞いてみる気持ちになりました。ただ、やっぱり疲れている時期だったので、少し時間をおいて改めて連絡をもらい、話を進めていくことにしました。こういったものはご縁が大切だと思っています。あのタイミングでストライクさんから電話があって、ご縁ができたときから、他社さんを考えたことはありませんでした。
医療は最高のサービス業
一人で悩むより多くの人の知恵を借り
世の中に貢献したい
ストライクの担当者の対応はいかがでしたか?
担当の市村さんは、とにかくレスポンスが早く、それがすごくありがたかったですね。気になったことを聞くとすぐに回答が来て、待ち時間がなかったので、精神的にすごく楽でした。特にお相手に関しては全体像がなかなか見えてこず、わからないことも多い。その間に立っていただいて、心配事があったらいつでも相談に乗ってくれる。精神安定剤的な要素だったかなと思います。
今後はご自身の経験を活かして、買収も検討されていると伺いました。
M&Aを実施したことで、自分の歴史の中で一つの区切りをつけることができたと思っています。当院は多くの治療実績を積んできていますので、これまでの知見や技術をもっと世の中に提供していきたいです。そのための一つの方法として、買収も検討しています。当院ならではのやり方だけでなく、お相手の良いところを組み合わせて、もっと良い仕事ができるのではないかと考えています。
獣医師を引退するわけではないので、これからも向上心を持ってやっていきたいです。大学時代、最初の授業で「医療は最高のサービス業である」と教わりました。“最高のサービス業”に到達するためにはいろいろな人の知恵が必要になってくるので、これからもさまざまな可能性を探っていきたいですね。
動物病院の成長に課題を感じている方へ向けて、ご自身の経験を踏まえたメッセージをお願いします。
M&Aを通してパートナーができたことで孤独感が消えたことは非常に大きく、精神的な負担が減りました。一人で悩みながら頑張るよりも、みんなで頑張ったほうが結果的に世の中のためになると思います。一人で考え込まずに成長戦略としてのM&Aを検討してみてはいかがでしょうか。
本日はありがとうございました。
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