ご成約インタビュー No.52
INTERVIEW
「スマート体験農園システム」の開発企業が
総合住宅企業のグループ会社に。
新しく魅力あるライフスタイルの提案を
- #成長加速
- #地方創生
- #ベンチャー
- #事業投資
株式会社Root 代表取締役CEO 岸 圭介 氏 (写真左)
株式会社トータテホールディングス 代表取締役社長 川西 亮平 氏 (写真右)
株式会社Root(神奈川県南足柄市)は、AIやIoTを用いた「スマート体験農園システム」を展開する企業。「はたけをあそぼう」をコンセプトに、いつでもどこからでも農の営みを身近に感じることで日々の暮らしを豊かにするサービスに取り組んできた。2022年6月、総合住宅企業グループである株式会社トータテホールディングス(広島県広島市)はRootの発行済株式の過半数を取得し、グループ会社化。今回のM&Aの経緯や心境、今後の事業展開について、Rootの岸氏、トータテホールディングスの川西氏に伺った。
リアルでもリモートでも利用できる体験農園サービスを実現
農園事業者・ユーザー双方にメリットを
Root設立の経緯を教えてください。
岸:Rootは2017年に設立しました。従来の体験農園は、現地の農園まで足を運ばないと農作業ができません。それが農園を利用するユーザー側・運営する側、双方にとって制約になっていました。そこで、体験農園サービスでデジタルとして切り出せるところはデジタルにし、制約を取り払うことを考えたのです。農業体験のDX化ですね。そうすることでユーザーはより気軽に農業を体験でき、運営側も多くのユーザーにサービスを提供できるようになると思い、「スマート体験農園システム」を開発しました。システムのプラットフォームを南足柄市の農園「ROOT FARM」で利用しているほか、福井県、愛媛県など全国各地の地方自治体様、農園様にも提供しています。
どのようなシステム・サービスですか?
岸:いつでもどこからでも「はたけをあそぼう」をコンセプトに、スマートフォンアプリやLINEボットを使用して、現地にいなくても農の営みを体験できるサービスです。現地に行って実際に農作業をすることも可能です。普段はリモートで、休日など時間があるときには農園へ足を運び実際の農作業を体験するという楽しみ方ができます。
ROOT FARMは東京から100キロ圏内の南足柄にありますので、お子様を持つ都内在住のファミリー層の利用が多いです。また意外かもしれませんが、高齢者の方にも多くご利用いただいています。毎日の農作業は、現地の農家の方がサポートしますので安心です。そして、収穫された農作物はご自宅へ配送いたします。
このサービスの肝は、単に遠隔・リモートで農業体験ができることではありません。これまで関わりを持てなかった農園とつながり、たまに現地へ足を運んで生の農業に触れる。その後、家に帰ってからもリモートで、いつでもどこでも農業に触れることができる。普段スマートフォンの中で見ている農作物が実際に自分の家に配送される。こういったリアルとスマートの体験を一つのものとしてつながりを生み出し、融合させた体験価値を提供できる点がRootのサービスの特長であり、魅力だと考えています。
より広くサービスを届けるため
地域に根差した企業とタッグ
譲渡を決意した理由や経緯を教えてください。
岸:当初よりROOT FARMをモデルケースとして、スマート体験農園システムを多くの農園様に使っていただくことを目標にしています。ただ全国に届けるにはRootだけでなく、ほかの企業と組んで連携していく必要があると考えていました。農業と直接のつながりがなくとも、地域に根差した事業基盤・顧客基盤のある企業と組んで展開すれば、Root単体で行うよりも広く、多くのところへ届けていけるだろうと思ったからです。
ROOT FARMのほかにも、いくつかの地方で本システムを利用していただけるようになった段階で、次のステップへ進むためにストライクに相談をして、今回のM&Aに至りました。トータテグループはまさに地域に根差した企業であり、弊社とタッグを組む最高のパートナーだと思います。
トータテホールディングスがRootをグループ会社化した理由は?
川西:弊社は広島を中心に顧客を持つ総合住宅企業グループです。これまでM&Aの経験はありましたが、いずれも同業種。今回初めて、まったくの異業種であるRootとご縁を結ぶことになりました。
2022年、弊社は創業60周年を迎えるにあたり、新しく「魅力あるライフスタイルの創造を通じて、すべての人がいきいきと暮らせる未来を実現します」という経営理念を掲げました。これからの時代、新築住宅の着工戸数は減っていくと予想されます。今までは、住宅完成後のお客様との関わりはアフターメンテナンスやリフォームという形が多数でした。これからは住宅を買ってくださった方に向けて、暮らし方やライフスタイルを提案し、お客様がいきいきと暮らしていけるようサポートしていく必要があると考えています。弊社がそのような方針を打ち出していくタイミングで、ストライクの立山さんからRootとのM&Aのご縁を頂きました。
Rootのサービスは、住宅を建てた方に提案する新しいライフスタイルとして大変魅力的で、とてもマッチしていると思いました。そして「スマート体験農園システムをRootとともに活かしていきたい」という思いのもと、M&Aを決意したのです。
南足柄と広島とはかなり距離がありますが、不安はありませんでしたか?
岸:不安はなかったですね。初顔合わせがリモートでしたし、普段はオンライン会議とチャットを組み合わせてコミュニケーションをとっており、特に距離を意識することはありません。普段は南足柄にいながら、違和感なくトータテグループの一員として事業に取り組んでいます。
川西:新型コロナウイルスの影響で弊社でもリモート会議が多くなり、リモートでの打ち合わせが当たり前になっていたので、私も不安はなかったです。
岸:そういう意味では、こういったグループ企業同士の関わり方もスマート体験農園システムに近いかもしれないですね。
川西:異業種でのM&Aで不安や疑問もありましたが、ストライクの立山さんがわからない点や質問に丁寧に対応してくださったので、安心してM&Aを進められました。
岸:財務・法務関係などを含め、M&Aに関わる事柄全般についてストライクには全幅の信頼を寄せてお願いしました。今回は未来を見据えたM&Aだったのですが、立山さんにはその点を強く意識して動いていただき、助かりました。
新たに瀬戸内の水産業を体験できるサービスを開始
今後は観光業などへの応用も
今後の展望を教えてください。
岸:まずは2023年春からのスタートを目標に、トータテグループの事業基盤である広島を中心としたスマート体験農園プラットフォームの事業化に向けた準備を行っています。また、ほかの地方からのニーズもあるプロジェクトですので、広島以外での事業展開も共同して行っていければと考えています。
例えば、愛媛県での事業が広島より一足先に始まっています。愛媛の“海の幸”と“山の幸”両方をアプリでも現地でも体験できる「えひめ丸ごとファーム」です。第一弾のテスト体験は、宇和島特産の「みかん鯛」について、水揚げ前日の様子を水中ドローンで観察、水揚げと解体も体験でき、翌日にはその鯛が届くというもので、ちょうど募集を始めたところです。このプラットフォームや体験サービスについて、PRや集客の面でトータテグループのウェブマガジンやメルマガとの連携を開始しました。
川西:将来的には観光面へ活かすことも考えています。広島は観光客が多い地域ですが、広島に宿泊する観光客が少ないことが長年の課題です。例えば、遠方のユーザーに広島の農園のスマート体験をしてもらいます。そして広島の飲食店と提携し、できた農産物を提携の飲食店で料理してもらえるようにすれば、ユーザーが広島に来て滞在する理由が生まれます。ホテルと提携し、宿泊した次の朝に広島の農園で農業体験するプランも面白いと思います。
岸:私も観光関係はやってみたいです。広島は海外からの観光客も多いので、海外の方向けのサービスも可能ですよね。インバウンド向けに来日前からリモートで広島と関係を持ち、実際に広島に来て、帰ってからも広島とつながっているというような体験サービスが実現すれば面白いと思います。
川西:まだまだ新しくできることがたくさんありますね。今後も広島を事業基盤としている弊社の利点を活かし、広島周辺の農園様などにもスマート体験農園システムのプラットフォームを広めていきたいです。Rootとトータテが力を合わせ、広島の農業のDX化に貢献していきたいと思います。
本日はありがとうございました。
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