ご成約インタビュー No.115
INTERVIEW
地方創生とM&A戦略:
JR四国 髙畠雅彦常務に聞く、基礎建設コンサルタント子会社化の真意
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四国旅客鉄道株式会社 常務取締役 総合企画本部長 髙畠雅彦氏
四国旅客鉄道株式会社(以下、JR四国)は2024年12月、徳島を拠点に建設コンサルタント事業を展開してきた株式会社基礎建設コンサルタント(徳島市)の全株式を取得した。人口減少の中、非鉄道事業の強化を進めるJR四国にとって、このM&Aの戦略的意義、その背景について、常務取締役の髙畠雅彦氏にお話を伺った。
グループ戦略における基礎建設コンサルタントM&Aの戦略的意義
まず、簡単にご経歴をご紹介いただけますでしょうか。
1992年、平成4年にJR四国に新卒で入社しました。入社から30数年になりますが、入社後はまず現場で車掌と駅業務を経験し、その後は本社で総務、財務、企画といった部門を主に担当してまいりました。鉄道畑一筋というわけではなく、社歴の3分の1強はグループ会社に出向しており、駅ビル会社や建設会社、ホテルなど様々な事業に関わってきました。総務部長を経て、2024年6月より総合企画本部にて現職に就いております。
今回、「株式会社基礎建設コンサルタント」の子会社化を決めた戦略的な理由についてお聞かせください。

JR四国グループには、四国開発建設株式会社(高松市)という工事の施工を担う会社がありますが、建設コンサルタントの機能はグループ内にありませんでした。そのため、土木構造物の設計業務等を受注しても、外部のコンサルタント会社に委託していました。今回、基礎建設コンサルタントをグループに迎えることで、これまで外注していた業務を内製化することが可能になります。連結経営の観点からも、グループ全体で技術力を高めていく上でも、非常に良い機会だと判断しました。
技術力をJR四国グループとして活用し、事業展開を加速
基礎建設コンサルタントの技術力をJR四国グループとしてどのように活用していく予定でしょうか?鉄道、港湾それぞれの分野についてお聞かせください。

土木構造物の測量設計、そして施工まで、一連の業務をグループ内で完結できるようになることが大きなシナジーです。基礎建設コンサルタントには、土木構造物の測量設計を行うというコンサルタント業務を担っていただきます。それを四国開発建設が施工するという流れとなります。
基礎建設コンサルタントは現在、徳島県を中心に事業を展開していますが、今後はJR四国グループの一員として、四国全域での事業展開が期待できます。特に、鉄道関連の工事においては、基礎建設コンサルタントの専門知識と技術力が大いに役立つと考えています。
港湾に関しては、JR四国が発注する工事はありませんが、引き続き、官公庁からの工事受注をメインに取り組んでいただきたいと思います。基礎建設コンサルタントがこれまで培ってきた一番の強みの部分でありますので、今後も重要な事業の柱として考えています。
基礎建設コンサルタントは、徳島を中心に展開されています。四国全域への事業展開、拠点整備について、どのようなロードマップをお持ちでしょうか?
コンサルタント業務という性質上、必ずしも各県に拠点を設ける必要はなく、徳島にいながら四国全域の仕事に対応できると考えています。しかしながら、港湾関係の仕事など、業務によっては事務所が必要になるかもしれません。その場合は、JR四国は四国4県に拠点を持っていますので、必要に応じてこれらの拠点を活用することも可能です。四国開発建設の事務所を間借りしていただくなど、柔軟な対応を考えています。
従業員の処遇とグループ全体での人材育成戦略
基礎建設コンサルタントの従業員の方々の処遇や、今後の人材育成についてどのようにお考えでしょうか?他県への人員配置やグループ内での人材交流はお考えですか?

従業員の皆様の処遇については、現在の水準を維持することを基本として考えています。その上で、業績が向上すれば、処遇改善も検討していきたいと考えています。JR四国グループには、グループ合同説明会というものがあり、基礎建設コンサルタントにも参加していただくことで、採用活動を強化したいと考えています。また、JR四国と基礎建設コンサルタントの間で人事交流を行うことも視野に入れています。例えば、JR四国の土木部門の社員が基礎建設コンサルタントで測量調査や構造物設計の経験を積んだり、逆に基礎建設コンサルタントの社員がJR四国の土木工事の発注や検査業務を経験したりすることで、お互いのスキルアップに繋がると考えています。
人員の確保を課題とされてきたと伺っております。JR四国グループとしての技術者の確保・育成について、どのような戦略をお持ちでしょうか?
JR四国グループ全体で人材の確保には苦慮しており、各社が個別に採用活動を行っても、なかなか人が集まらない状況です。そのため、数年前からグループ合同説明会を実施し、少しでも多くの方にJR四国グループの仕事を知っていただく機会を設けています。基礎建設コンサルタントにもこの合同説明会に参加していただくことで、これまで接点のなかった学生や求職者にもアピールできると考えています。
また、グループ会社間で人材の交流や異動を促進することで、個々のスキルアップを図るとともに、組織全体の活性化に繋げたいと考えています。JR四国といっても、四国出身者は全体の4割。JR各社との人材獲得競争も激しくなっており、しっかりと広報活動を続けたいと考えています。
建設コンサルタント事業における今後の展望
建設コンサルタント事業における今後の売上目標や、収益計画についてお聞かせください。

基礎建設コンサルタントは現在、徳島県を中心とした官公庁からの受注がほとんどです。まずは、この実績をしっかりと維持していただきたいと考えています。その上で、JR四国グループの一員として、四国4県全域での事業領域の拡大、鉄道関連の仕事や、鉄道と連携した官公庁の仕事の受注を目指していただきたいと考えています。具体的な数値目標はまだありませんが、まずは安定的に収益を上げていただくことが目標です。
非鉄道事業の拡大戦略において、今回のM&Aをどのように位置付けていますか?
また、建設関連での今後のM&Aの可能性をお聞かせください。
JR四国グループでは、鉄道事業だけでなく、ホテルや駅ビル、マンション、サーモン養殖など、様々な事業を展開しています。今回のM&Aは、これらの新規事業を強化するための戦略の一つと位置付けています。コロナ禍で鉄道事業が大きな打撃を受けた経験から、人流に左右されない事業をグループに取り込むことが重要だと考えています。建設関連での今後のM&Aについては、現時点では具体的な計画はありませんが、四国地域を中心に、必要に応じて検討していきたいと考えています。
松山駅や高松駅の開発など、大型プロジェクトが進む中で、まちづくりに関して基礎建設コンサルタントの知見をどのように活用していく予定でしょうか?

現在、JR四国グループでは、中期経営計画および長期ビジョンにおいて、まちづくりを重要なキーワードとして位置付けています。人口減少が進む四国において、鉄道会社として地域を活性化させるためには、人を呼び込み、人を集めるためのまちづくりが不可欠だと考えています。基礎建設コンサルタントには、これらのまちづくりプロジェクトにおいて、調査や設計、地質調査などの分野で活躍していただきたいと考えています。
M&A戦略として四国外の会社も検討しておりますか?
まずは四国地域での事業基盤を確立することが最優先ですが、将来的には四国外の企業との連携も視野に入れていきたいと考えています。
M&Aの過程を振り返って
基礎建設コンサルタント中木代表取締役との最初の面談で、どのような印象を持たれましたか?
中木社長は、物腰が柔らかく、非常に誠実で優しい方だという印象を受けました。ご自身で会社を設立されたということもあり、強い信念をお持ちだと感じました。また、根っからの技術者であり、仕事に対する情熱が非常に強い方だという印象を受けました。JR四国グループが掲げる「公共インフラを守り、地域社会に貢献する」という経営理念に共感していただき、価値観を共有できると感じました。
M&Aを進めるにあたり、苦労したポイントはありますか?
今回のM&Aは、JR四国グループにとって2件目の案件であり、まだ経験が浅いため、社内外への説明に苦労しました。役員や社員にM&Aの意義や目的を理解してもらうこと、そして社外の取締役にJR四国がM&Aを行う必要性を理解してもらうことが、非常に難しい課題でした。また、少ない人員でM&Aを進める必要があったため、情報管理や各種調整など、マンパワーの面でも苦労しました。
ストライクへの評価
ストライク担当者の印象、仕事ぶりはいかがでしたか?

今回のM&Aにおいて、ストライクさんには双方にとってメリットのある、Win-Winの関係を築けるようなご縁をいただき、大変感謝しております。担当の山口さんには、JR四国だけでなく、基礎建設コンサルタントに対しても、丁寧なコミュニケーションを取っていただきました。トップ面談の際も、和やかな雰囲気で進むよう、様々なサポートをしていただきました。中木社長も非常に真面目な方なので、山口さんとの日頃からの密なコミュニケーションが、良い結果に繋がったと感じています。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(山口 聡士・コンサルティング部 シニアアドバイザー談)

四国旅客鉄道様は、事業ポートフォリオ構築の一環で、非鉄道事業分野にも注力しておられます。今回、グループに迎え入れられた基礎建設コンサルタント様とは、同グループにおける建設セグメント内の相互連携によるシナジーを企図してM&Aを決断いただきました。
本件は、JR四国代表取締役社長四之宮和幸様をはじめ、幹部の方々皆様が、終始誠実でスマートに対応いただきました。自主自立を尊重する「任せる経営」をM&A戦略の基本コンセプトのもと、トップ面談やキーマン面談の際にM&A後のビジョンについて明確にご提示いただいたことも、成約に至った重要なポイントであったと考えております。
基礎建設コンサルタント 代表取締役 中木 一文様からは、JR四国グループとなったことでモチベーションが上がっている社員もおられると伺っております。今後、双方の強みの融合やノウハウの共有にて、両社の更なる飛躍を祈念しております。
2025年3月公開
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