ご成約インタビュー No.116
INTERVIEW
木材がつないだ新たな未来
首都圏と東北を結ぶ、
建築サプライチェーンの革新
- #後継者不在
- #事業拡大
- #地方創生
- #老舗
- #建築・土木

ビィ・エル・シー株式会社 アドバイザー(前代表取締役社長) 上田学氏
ビィ・エル・シー株式会社 取締役 上田整氏
株式会社山大 代表取締役社長 髙橋暢介氏
株式会社山大 取締役 ビィ・エル・シー株式会社 代表取締役社長 阿部竜也氏
内装建材メーカーのビィ・エル・シー株式会社(東京都千代田区)は、2024年11月、宮城県を代表する木造建築企業の株式会社山大(宮城県石巻市)に全株式を譲渡した。このM&Aを通じて、ビィ・エル・シーは後継者問題と将来の成長戦略という課題を、山大は東北地域での需要低下という課題を解決する。特筆すべきは単なる事業承継にとどまらず、両社の強みを活かした地域展開や技術融合による相乗効果を図る点だ。M&Aの決断の裏側や今後の展望について、両社の経営陣にお話を伺った。
株式会社山大
ご成約インタビュー動画
創業50年の節目を迎え、譲渡を決断
1枚のドアがご縁を結んだ
それぞれの事業内容や特徴を教えてください。

上田学:ビィ・エル・シー株式会社(BLC)は1976年の設立以来、住宅向けの内部造作部材および室内ドアの規格化・製品化を手がけ、建築現場への正確な配送体制を確立することで事業を拡大してきました。人の健康にも環境にもやさしいことを大切にしており、BLCのすべての室内ドア・造作材が木材をベースに塗装仕上げで作られています。特に室内ドアのシリーズは木材ならではの肌ざわりや保湿性・保温性に優れたハイグレード製品で、全国的に高い人気を博しています。
髙橋:株式会社山大は、1963年に宮城県石巻市でスタートした木造建築業の会社です。当社の特徴は、自社保有の山林から木材を伐採し、住宅用建材として加工までを一貫して行うことにあります。また、請負部門では商業施設や公共施設といった非住宅建築物の建設を手がけています。さらに、環境への配慮から、伐採後の山林には新たに植林を行い、持続可能な事業運営を実践しております。
M&Aを検討されたきっかけを教えてください。

弟の整氏と二人三脚で同社を育ててきた。「創業50周年の節目を迎え、後継者問題を解決するだけでなく、次の50年も成長し続けるためにM&Aを決断しました」
上田学:BLCには2つの重要な課題がありました。1つは後継者問題です。当社は父が創業し、私たち兄弟二人で経営してきましたが、後継者問題にはずっと悩んできました。もう一つは、次の50年の事業展開です。人材確保を含む様々な経営課題がある中で、取締役である弟が還暦を迎え、会社も創業50周年の節目を迎えることから、この時期に重要な経営判断を行うことを決めました。
親族内承継や従業員承継ではなく譲渡を選んだ理由は?
上田学:当社にとって、親族であることを理由とした承継は適切ではないと判断しました。また、従業員承継については、株式の買取り資金や経営面でのハードルが高く、現実的な選択肢とはなりませんでした。そのため、当社の将来を見据え、M&Aによる事業譲渡が最適な選択肢であると結論付けました。
M&Aが進んだ経緯を教えてください。
上田整:BLCは東京商工会議所の会員で、同会議所の事業承継に関するパンフレットをきっかけに、2022年5月頃に初めて相談を行いました。兄と二人で事業承継のタイミングについて協議を重ねましたが、そのときはなかなか決断に至りませんでした。その後、1年を経て再度、同会議所に相談し、紹介されたストライクさんと2024年2月に契約を交わしました。最初の相談から実行に移すまでに1年半以上の期間を要しましたが、ストライクさんとの契約締結後は、求められる資料の提出など円滑に手続きを進めることができました。
上田学:M&A仲介会社の中でストライクさんを選んだのは、商工会議所からの紹介という信頼性と、金融機関と比較して幅広い提案の可能性がある点に魅力を感じたからです。各社の提案内容を慎重に検討する中で、ストライクさんの提案書に使用されていた当社製のドアの写真が目に留まりました。その写真が担当の鈴木さんのご自宅に実際に設置されているものだと知り、強いご縁を感じました。大手のM&A仲介会社が他にもある中で、この偶然がストライクさんを選定する1つの要因となりました。
髙橋:当社は2018年頃から事業展開の検討を始め、市場環境を考慮し、東北地域から北関東圏への進出を構想していました。その後、北関東圏での事業展開を本格的に進められる体制が整い、展開エリアを特定地域に絞り込んだ時期に、ストライクさんからM&Aの提案をいただきました。当初、地方企業である当社が東京近郊へと進出するには躊躇しましたが、BLCさんの埼玉県三郷市の配送拠点の立地が北関東エリアへのアクセスに適していることがわかり、当社の事業拡大戦略と合致したことが決断の要因となりました。
木材へのこだわり、環境への配慮
理念や姿勢が共感できるお相手を選んだ
お相手に求める条件はどのようなことでしたか?

上田学:今の事業がそのまま継続されることが一番大切だったため、山大様が当社同様、住宅関連事業を手がけ、木材加工にこだわりを持つ企業であることが、大きな安心材料となりました。特に当社が長年培ってきた木材へのこだわりと製品づくりの理念を理解し、承継していただけることに魅力を感じました。
髙橋:我々は「木のぬくもりを形に」することをビジョンとしていますので、BLCさんの木材をベースとしたハイグレードな製品ラインナップはやはり最大のポイントでした。木を大切にしていること、また木材のライフサイクル全体を考えた環境負荷の少ないモノづくりを目指しておられる姿勢は当社と共通しており、M&A後も同じ方向を見て協業できると思いました。
譲渡を発表したときの社員の皆様の反応は?
上田学:社員からは人事面での質問が多く寄せられましたが、同業界での事業継続が明確に示されたことで、むしろ前向きな反応が多く、全体として好意的に受け止められたと思います。
協業内容について教えてください。
髙橋:M&Aによって北関東に拠点ができたとはいえ、新たに人材を配置して育成するには相当な時間を要します。現在の宮城県を中心とした東北エリアと関東圏では市場規模が大きく異なるため、まずは当社の製品を北関東エリアに展開し、さらには我々のネットワークを生かしBLCさんの製品の特徴や魅力を東北エリアに広く伝えていくことによって、双方の事業エリア拡大を目指していきたいです。
阿部:私は山大の役員とBLCの役員を兼務しており(2024年11月1日付でBLCの代表取締役社長に就任)、M&A案件も直接携わってきました。木材・建材業界において、在来工法・ツーバイ工法と双方の強みや知見を活用していくことで、今回のM&Aを成功に導きたいと考えています。また、私の自宅はBLC製品を使用しており、その品質や価値を実体験として理解しています。このご縁を活かし、製品の魅力をさらに知っていただき、お客様により大きな価値を提供していきたいと考えています。
私は35年、この業界で様々な経験をさせてもらいましたが、社長業は初めてです。社長業は対外的な役割も非常に大きく、時には1人で決断を下さなければならない場面もあり、悩むことも多々あります。
しかし、私の会社人生において非常に貴重な機会を得ることができたと感じていますので、これからも日々精進し試行錯誤しながらですが両社の強みを生かしM&Aによる相乗効果でより良い会社に発展できるよう努力してまいります。
東北から北関東へ進出
復興経験を他地域でも活かしたい
今回の譲受の背景には、東北における戸建て需要の低下もあると伺いました。

髙橋:東日本大震災の被災3県(岩手・宮城・福島)の復興事業は、現在では福島県浪江町の整備を残すのみとなっています。震災後の7~8年間は急速な復興需要により建築ラッシュが続きましたが、これは言わば将来20年分の需要を先取りした状態でした。特に沿岸部では、今後の市場の縮小は避けられない状況です。そんな状況下だからこそ、他エリアでも成長していきたいと思いますし、全国各地で地震や豪雨などの自然災害が増加している中、被災地での復興経験を活かし、他地域の災害復興支援にも貢献していく使命があると考えています。
ストライクの担当者やサービスはいかがでしたか?

上田学:スケジュール管理やアドバイス等が非常に的確かつタイムリーでした。スピーディに進めていただき、感謝しています。
阿部:我々にとって初めてのM&A案件でした。右も左もわからない状況でしたが、ストライクさんのおかげで脱線することなく、適切な道筋で進めることができました。ストライクさんの行動力は抜群で、特に鈴木さんをはじめとする営業の方々の丁寧なコミュニケーションが印象的でした。今後も機会がありましたら、同様のサポートをお願いできればと思います。
今後M&Aを検討される経営者の方にメッセージをお願いいたします。
上田学:M&Aを考えるきっかけは様々です。後継者問題など、すでに課題が明確な場合も多いと思いますが、早めに行動を起こすことが望ましいと理解していても、なかなか前に進めないものです。そのような際は、専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが、新たな道が開けるきっかけになるはずです。
髙橋:私は従来、M&Aについて「買収する側・される側」という単純な図式で考えがちでしたが、今回の経験を通じて、そのような考え方が現代には適していないことを実感しています。これからの時代は、1社単独で頑張るよりも、複数の企業がグループとして結束し、業界のニーズに対応していくことが求められています。特に地域企業においては、同族経営という理由だけで従来の経営形態にこだわる必要はありません。M&Aは真剣に検討すべき選択肢であり、共通のビジョンを持ち、同じ方向性を向いて進んでいけるお相手が見つかれば、必ず相乗効果が生まれるはずです。これは今回の私の経験から得た確信です。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(佐々木 啓人・法人戦略部 アドバイザー談)

本案件はまさに、ストライクの「世界を変える仲間をつくる。」というミッションに即したM&Aになったのではないかと思慮しています。本件が成立する前から、山大の阿部様も、私と共同担当した鈴木もビィ・エル・シー様の商材を自宅に取り入れており、縁によって導かれた“仲間づくり”を成し遂げられたのではないかと感じます。もちろん事業面での整合性はM&Aを検討するにあたって重要な要素であることは否めません。ただ、それよりももっと根源的な、縁にも恵まれながら紡がれた「人の想い」によって、今回のM&Aを達成できたのではないでしょうか。今後の両社の発展を心から願っております。
2025年4月公開
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