ご成約インタビュー No.113
INTERVIEW
「社員の夢を繋ぎたい」と事業承継を選択したEC業界の先駆者
M&Aで得た「安心」と「成長」
- #後継者不在
- #創業者
- #成長加速
- #事業拡大

株式会社新流 代表取締役 玉江 浩明氏
1999年の創業以来、ECサイト「neel(ニール)」にて、正規品のブランド腕時計やペット用品の販売を手掛けてきた株式会社新流(大阪府豊中市)。EC黎明期から事業を展開し、楽天市場やYahoo!ショッピングで数々の受賞歴を誇る同社は、なぜM&Aという道を選んだのか?そして、G-7ホールディングス株式会社(兵庫県神戸市)の傘下に入り、どのような未来を描いているのか?
代表取締役の玉江 浩明氏に、M&Aに至るまでの経緯や今後の展望について伺った。
EC黎明期からの挑戦、M&Aで新たなステージへ
御社の事業内容や特徴についてお聞かせください。

数多くの表彰状が壁面を飾る。
当社は1999年の創業以来、腕時計のネット販売を手掛けています。腕時計は買い替え頻度が低く、リピート率が低いという課題がありました。ファンになってくれたお客様からのリピート率を上げるために2003年からペット事業にも参入しました。現在はECサイト「neel(ニール)」として、主にブランド腕時計とペット用品を販売しています。当社は正規品のみの販売にこだわり続け、50社以上にわたるメーカー様のブランドを取り扱っている点が特徴です。お客様からの満足度も高く、Yahoo!ショッピングや楽天市場での腕時計部門で数多くの受賞履歴があります。
創業当時はまだネット通販の黎明期ともいえる時代です。何故そのような時代にECでの腕時計販売を始められたのですか?
創業時はブランド腕時計ではなく、もっと安価なファッションウォッチが中心でした。私は新流の創業前に通信販売の経験があり、新聞やFMラジオ、テレビ通販のような形で販売していました。しかし、当時は電話での受注が主流で、注文が殺到すると電話が繋がらないという問題がありました。そこで、インターネット通販に目をつけ、受注システムとして活用しようと考えたのがきっかけです。
EC業界が抱える課題にはどのようなことがありますか?
業界全体が飽和状態であることは否めません。ECは参入障壁が低いため、粗悪な商品や偽物も出回るようになり、EC全体の信用度が下がっているように感じます。お客様がリアル店舗での購入を選ぶ傾向も強まっていると感じます。当社はEC市場がまだ飽和していなかった頃から事業を展開していたため、ある程度のシェアを獲得できました。また、インターネットでは口コミが蓄積されていきます。レビューの数は、お客様にとって安心感に繋がります。1万件のレビューがある店と100件しかない店では、1万件の方を選ぶ傾向があると思います。当社のレビューの数と評価の高さは、他社にはない強みになっていると思います。
自社単体でも順調に成長していた会社を譲渡された理由についてお聞かせください。

一番の目的は事業承継です。会社を誰かに引き継ぎ、社員に夢を見続けさせてあげたいという思いがありました。私も50歳になり、万が一のことがあれば会社が立ち行かなくなるというリスクが高まっていました。社内にリーダークラスの社員はいましたが、経営者とは全く別物です。経営者には、マネジメント能力だけでなく、様々な資質が求められます。社内で経営者を育てるのは難しいと感じていたことからM&Aによる事業承継を検討し始めました。
G-7ホールディングスとの連携、EC事業のさらなる拡大へ
お相手先となったG-7ホールディングス様の印象は?
最初にG-7ホールディングス成長戦略推進室の箕浦雅一氏にお会いしました。その後、岸本安正社長ともお会いしましたが、大企業というイメージと異なり優しそうな印象を受けました。無理強いするようなところもなく、一緒にやってみませんかという雰囲気でした。先方のオフィスに伺った際、通りがかった社員の方々が挨拶してくださって、社風もとてもいいなと感じました。
G-7ホールディングス様の一員として、今後はどのような事業展開を構想されていますか?
G-7ホールディングスは、ECで1000億円の売上を目指しているそうです。まずは「neel(ニール)」として、ブランド腕時計とペット用品の分野で培ってきた知見を提供していきたいと考えています。また、G-7ホールディングスの信用力や経済力、ステークホルダーとの繋がりを活かし、新たな道を切り開いていきたいです。G-7ホールディングスはM&Aを積極的に行っているので、面白い会社があれば、ぜひグループに加えていただきたいです。グループ傘下の企業に当社の持つECのノウハウを提供できれば、A+B以上の価値を生み出せると思います。
グループ化で得た経営資源と知見、M&Aがもたらす新たな可能性
M&Aを実行したことによるメリットについて教えてください。

EC市場の黎明期から事業を展開し、成長を続けてきた。
財務関係の業務をG-7ホールディングスに引き受けてもらったことで、自分の時間が大幅に増えました。資金繰りの心配がなくなり、本業に集中できるようになったのは大きなメリットですね。営業活動に注力できるようになり、業績も伸びていますので、既にプラスの効果として表れています。
現在、ペット用品の売上が非常に伸びているのですが、商品を置いている委託先の倉庫がパンク状態になってしまって……。そこでG-7ホールディングスに相談したところ、グループ企業のジャパンフードサービス社の倉庫を使ってみるのはどうか、というお話をいただきました。我々だけでは八方ふさがりでしたが、先方に相談したことで解決の道が見え、グループ企業ならではの引き出しがあると感じました。
その他に、実店舗の運営についてもG-7ホールディングスはオートバックスや業務スーパーのフランチャイズを手掛けているので出店エリアの調査や店舗の魅せ方などの知見があります。そういった知見があることはすごくありがたいなと思います。
成約後のお気持ちについてお聞かせください。
システム統合やコンプライアンス、ガバナンスにおいて大企業と中小企業の違いを痛感しています。いわゆる「産みの苦しみ」ですね。先方はプライム上場企業なので月次決算のスピード感も求められます。ですが、私に何かあっても会社が立ち行かなくなるということはありませんので、その点は安心しています。
社員の皆様に今回のM&Aをどのように説明されましたか?また、社員の皆様はどのように受け止めていらっしゃいますか?
今後、どうなるのか分からないという点で最初は不安に思っている社員が多かったですね。引き続き私が社長として残るということが一番の安心材料になったようです。今は社内体制に大きな変化はなく、現状を維持しています。社員には、M&Aをやらなかった未来とやった未来を比較した時、やった未来の方が間違いなく輝かしいものになると確信して決断したので、これからはその選択が正しかったと言えるように、努力していくしかありません、と伝えました。また、今後は売り上げといった数字に対する意識を高めてもらう必要があるということも伝えています。
ストライクの担当者やサービスはいかがでしたか?

M&Aというのは、譲渡する側は「本当にこれでいいのか、ベストな選択なのか」と情緒的になるというか、心が揺れ動くんですよね。有田さんも大塚さんも、その辺の心情面をよく分かっていらっしゃるな、と感じました。こちらの心情に寄り添い、きちんとフォローしていただけたと思います。
今回のご経験を踏まえて、経営者の方に向けたメッセージをお願いいたします。
オーナー経営者には、会社を作ったことに対する責任が常にあります。会社という箱を作り、社員がそこで働き、その家族を養い、生活を営む。会社は社会の公器である以上、その責任をどう全うするのかを業績が良い時も悪い時も、常に考え続けなければなりません。また、会社を設立した以上、いつかは誰かに引き継がなければなりません。
定年を間近に控えた60歳頃に慌てて事業承継を考えると、どうしても余裕を持った対応ができなくなります。自身の選択肢が「エグジット」だけになってしまうと、残される社員の不安も大きくなるでしょうから、早めに可能性を探っておくことは非常に重要だと思います。
今回のM&Aを通じて、残される社員がどのようなモチベーションで、どのような夢を持って働けるのかを考えることの大切さを改めて感じました。幸い、今回はプライム上場企業とご縁があり、大変ありがたく思っています。
私自身の次の夢は、当社の社員が役員になってくれることです。中小企業に入った人間が、プライム企業の役員になれる道筋を作ってあげられたら、非常に面白いのではないかと考えています。社員の成長や多様な働き方を実現できる選択肢の一つとして、M&Aは有効な手段だと思います。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(有田 匠吾・事業法人部 アドバイザー談)

新流様は腕時計、ペット用品、食品のEC販売を営む業界でも知名度の高い企業様でした。腕時計の販売を軌道に乗せ、次にペット用品、食品と取扱品目を増やし業績を伸ばされておりました。玉江社長にお会いした当初、会社をこの先どうやって伸ばしていくかをという点を突き詰めて考えられている姿が印象的でした。玉江社長はG-7ホールディング様との面談を重ね自社を伸ばしていくことに加えG-7ホールディングス様のEC戦略に密に関わっていくことに非常に前向きに捉えていらっしゃいました。今後、店舗販売に強みのあるG-7ホールディングス様とEC販売に特化している新流様が一緒になり双方のノウハウを活用し更なる成長加速に繋がると確信しております。
今後の両社の発展を心から願っております。
M&Aアドバイザーより一言(大塚 昌典・事業法人部 シニアアドバイザー談)

玉江社長は本件の最初から最後まで社員のため、会社の永続的な発展のためにM&Aが必要であり、またG-7ホールディングス様の子会社となった後も玉江社長ご自身が子会社社長として新しいステージへと挑戦していくというスタンスでいらっしゃることが印象的でした。
玉江社長のご活躍とG-7ホールディングス様と組んだ新しい『neel』のご発展を祈念いたします。
2025年3月公開
本サイトに掲載されていない事例も多数ございます。
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