ご成約インタビュー No.106
INTERVIEW
人材派遣最大手グループ入りで
事業成長スピードを加速させる
- #後継者不在
- #創業者
- #戦略的M&A
- #従業員雇用
- #人材派遣・アウトソーシング
株式会社ヒューテック 前代表取締役社長 吉川満義 氏
佐賀県武雄市の(株)ヒューテックは、吉川満義会長が2008年に創業した総合人材サービス会社だ。
地元・佐賀を中心として人材派遣、業務請負、職業紹介事業などの総合的な人材サービス事業を展開しており、近年では自治体のBPOや外国人人材サービス事業なども手掛けている。スタッフの登録者も多く、佐賀県でトップクラスの規模にまで成長した。吉川会長は、人材派遣国内最大手グループであるパーソルグループに加わることを決断し、2024年6月にパーソルテンプスタッフ(株)との間で株式譲渡契約を締結した。吉川会長を後押ししたのは、社員の幸せのため、内部体制の強化を図り事業成長スピードを加速させることによって会社のステージを引き上げたいという強い思いだ。今後の事業構想と併せて吉川前社長にお話を伺った。
佐賀県内最大規模の人材派遣会社
(株)ヒューテックの創業の経緯を教えていただけますでしょうか。
私は社会人になってから大手自動車メーカーの工場で働き、次いで大手事務機器メーカー代理店で営業職に就いて、その後は建設会社で管理職を務めました。生産現場と営業を経験し、管理職としてマネジメントに携わったことで、人材派遣事業に取り組もうと考え、2008年に(株)ヒューテックを創業しました。
実家の倉庫の片隅にあるスペースで創業したのですが、当時はリーマン・ショックの影響下であり、厳しいスタートでした。その頃、前職のサラリーマン時代の一時期に同僚だった百﨑現取締役統括部長に色々と相談していました。というのも百﨑氏は当時人材派遣会社に勤めていたからです。創業して10カ月ほどして、百﨑氏が当社に入社することになりました。それ以来、よきパートナーとして事業運営面においてサポートしていただきました。
現在では、佐賀県に本社を置く人材サービス会社としてトップクラスの規模になっているそうですね。
はい、おかげさまで佐賀県および長崎県の北部でヒューテックのスタッフが多岐にわたる分野でそれぞれの職務についています。派遣先の分野は製造業のほか、物流、接客、事務、現在では自治体のBPO事業まで多岐にわたっており、佐賀県の人材サービス会社では最大規模です。
社員数は30名で20代から70代まで活躍しています。30代が中心で女性が半数近くを占めています。当社がここまで成長できたのは、社員の努力の賜物です。
近年の業界動向をどのようにご覧になっていますか。
現在の人材派遣業界は売り手市場です。色々な分野で求人がありますし、隙間時間を活用する働き方やジョブ型雇用の考え方も浸透してきました。たくさんの仕事の中から求職者が仕事を選ぶ状況の中で、総合人材サービス会社としてどうやって選ばれていくのかを考える必要があります。また、長期的に見れば人口は減少していくため、これからは就業者数も増えてはいきません。その中で、どのようにして価値を上げていくかも課題ですね。
上場を目指すか第三者への譲渡かで検討重ねる
そのような中で、譲渡を検討された背景をお聞かせください。
創業当時から事業承継については、上場する、親族に譲渡する、第三者に譲渡する、のいずれかを考えていました。8年ほど前から、この3つについて具体的に検討を続けてきました。
そのような中で売上規模的にも組織体制の強化が必要になってきており、自社で取り組むか第三者と手を組むべきか悩んでいました。近年では人事、労務、財務、DXについても外部から人材を受け入れて改革を進めようとしていたところでした。ちょうどその頃にストライクの有田匠吾さんから連絡が来るようになりました。2023年の春のことです。
譲渡するうえで希望された条件などはありましたか。
当社の文化を守ってほしいということです。当社は社員同士のコミュニケーションが活発で、雰囲気も明るい。お互いを尊重し、それぞれがお互いのことを認め合い、助け合う文化があります。会社としても、社員にはある程度まで自由に業務に取り組んでもらっていますので、社員がチャレンジできる環境があります。創業以来、離職者は結婚を理由に辞めた者だけなので、社員皆が働きやすいと感じてくれていると思います。また、当社の強みは地域密着と大手にはない柔軟性とスピードです。これも受け継いでほしいと思いました。
最大手ならではの事業基盤に期待
今後はBPO事業に注力、新しい価値創造が生まれる会社へ
譲渡先としてパーソルテンプスタッフ(株)の名前が挙がったときの印象はいかがでしたか。
パーソルグループは上場している最大手の総合人材会社なので、派遣社員の労務管理をはじめ、そのほかの諸々の業務に関してもきちんと仕組み化できているでしょうし、それらを当社としては享受できるのかなと期待しました。
その後、交渉が進む過程で当社のセキュリティシステムや人事の職務権限基準、評価制度等々について、ピンポイントで課題を指摘していただき、改善の方向性についても話し合うことができました。
譲渡を知った御社の社員の反応はいかがでしたか。
譲渡することを突然聞かされた驚きもあって、状況を呑み込めていない様子でした。
今後の事業展開についてお聞かせください。吉川会長は以前から強化したいと考えていた事業があるそうですね。
当社はこれまで製造業向け派遣の割合が大きかったのですが、今後は企業・自治体の業務プロセスの一部を一括して受託するBPO事業を伸ばしていきたいと考えています。中村社長もBPO事業に携わった経験があるそうなので、期待しています。
これからは中村社長に経営の舵取りをお願いしますが、当社の自由な社風を残しつつ、強みである地域密着と柔軟性を生かしながら、事業成長のスピードを加速してもらいたいです。
当社は、今後10年間の事業成長目標を示す『10年ロードマップ』を掲げています。中でも社員1人ひとりが"価値創造人材"になることが大きな目標です。価値創造人材が増えることで、世の中に役立つ新しいサービスが創造される会社になってもらいたいと思っています。
この度のM&Aにおけるストライク担当者の対応はいかがでしたか。
担当の有田さんと、有田さんの上司である伴瀬卓也さんには、資料の収集から相手先との交渉まで親身に対応してもらい、大変助かりました。思いの詰まった我が子のような会社を譲渡する際にその思いを汲み取った対応に深く感謝しております。特に有田さんはメンタルが強いですね。当初、こちら側の要望を伝えるときなど、私がついつい強めに言葉を発することもあったのですが、有田さんはそれにめげない(笑)。仕事を絶対に遂行するという思いが伝わってきました。伴瀬さんは辛抱強く寄り添ってくれました。レスポンスも早く、きめ細かく対応いただきました。お二人とはM&A後も食事に行く関係でなんでも話せる間柄になりました。
事業承継は早めの準備を
最後に、事業承継に悩みを持つ経営者に向けてメッセージをお願いいたします。
事業承継は会社を存続させていくために必ず必要になります。相手先企業から評価してもらえるように会社の価値を上げ、第三者へと譲渡することも有効な手段だと思います。第三者への譲渡は、企業文化の違いの理解、シナジーのあるお相手の選択等、多くの決断を迫られるので長い時間をかけて検討する必要があります。今回、約8年間事業承継について具体的に動く中で、緊急性はなくとも将来的な第三者承継に向けての準備が必要だと感じました。
また、自分自身や家族の人生プランを考えて適切なタイミングで承継することも大切だと思います。
経営者は会社の成長を第一に考えるかと思いますが、事業承継についても並行して検討することをお勧めします。
夢のない会社の社員は迷惑します。会社が成長し、それに対して貢献を実感することが社員の満足度、ひいては幸せにつながります。会社が継続して成長し続けるための手段の一つがM&Aだと思います。第三者と一緒になることで自社に足りない部分を補い成長スピードを加速させることができます。
事業の成長スピードを加速させるお相手がいるのであれば社員とその家族を守るためにも、M&Aによって第三者に譲渡を検討したほうがいいと思います。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(有田 匠吾・事業法人部 アドバイザー談)
ヒューテック様は佐賀県内においてトップクラスの業容を誇る、総合人材サービスを提供する企業様です。吉川様はお会いした当初から、会社をどのように成長させていくかを深く考えておられました。
また、従業員の方々の幸せや地域社会への貢献を強く願っておられる姿が非常に印象的でした。
そんな吉川様の考えを最も実現できるお相手として、パーソルテンプスタッフ様との出会いがございました。エリアトップクラスのヒューテック様と、人材派遣業界最大手のパーソルグループ様との良いご縁を感じております。両社の更なる発展を心から願っております。
M&Aアドバイザーより一言(伴瀬 卓也・事業法人部 マネージャー談)
吉川様は本件M&Aを決断する以前からヒューテック社の「10年ロードマップ」を策定し、内部管理体制強化、IT投資、新規事業立ち上げなど様々な計画を実行しておられました。私たちは担当となってからM&Aという手段を用いて当計画をより速く・確実に実行できるパートナー探しを行って参りました。結果として、パーソルテンプスタッフ様は最適なお相手であったと自負しております。他方、それだけにDDにおいてはパーソルテンプスタッフ様からヒューテック様に対し水準の高い指摘もありました。これに対し、吉川様がそういった指摘を全て貴重なものとして受け入れ、改善点としてストックしていたことが深く印象に残っています。その姿に、自ら立ち上げた事業とそこで働く従業員の皆様に対して最後まで責任を持つという強い思いがひしひしと伝わって参りました。
2025年1月公開
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