INTERVIEW

「金融×フィランソロピー」で
IFA業界を変革するプライベートバンク
老舗百貨店とのタッグで成長加速を図る

  • #創業者
  • #成長加速
  • #事業拡大
  • #戦略的M&A
  • #ベンチャー
  • #金融・リース
ヴァスト・キュルチュール株式会社 代表取締役Co-CEO 山本 耕太郎 氏、ヴァスト・キュルチュール株式会社 代表取締役Co-CEO 安東 宏典 氏、ストライク伴瀬

ヴァスト・キュルチュール株式会社
代表取締役Co-CEO 山本 耕太郎 氏
代表取締役Co-CEO 安東 宏典 氏

2024年6月、ヴァスト・キュルチュール株式会社は株式会社髙島屋との資本業務提携契約を締結、国内唯一無二の「プライベートバンク×百貨店」のサービスが誕生した。
ヴァスト・キュルチュール社は2019年創業、付加価値の高いウェルス・マネジメントで急成長中のIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)であり、ウェルス・マネジメントと社会貢献活動を融合させる画期的なサービスで大きな注目を集めている。気鋭のプライベートバンクと老舗百貨店のタッグにより何が実現できるのか?同社の二人の創業CEOに、今回のM&Aの背景や狙いをお聞きした。

ヴァスト・キュルチュール株式会社
ご成約インタビュー動画

本物のプライベートバンク・サービスを提供
豊かな社会を次世代に承継するため
社会課題の解決を目指す

御社の事業内容を教えてください。

安東:私たちはプライベートバンクです。ウェルス・マネジメントというとお金にまつわる相談役というイメージがあるかもしれませんが、プライベートバンクとはそれに加えお客様やご家族が大切にされている領域――例えばアート、先代の成功体験、家族の思い出なども資産と捉え、一人ひとりのお客様からさまざまなニーズや課題を引き出して、テーラーメイドのソリューションをご提案することと我々は定義しています。私たちは、富裕層を中心とした個人・法人のお客様の資産運用・管理・承継等のサポートをプライベートバンク領域で行っています。

山本:日本の従来のウェルス・マネジメントは有形の資産の管理にとどまっていますが、プライベートバンクとは本来、有形の資産だけでなく、価値観や経験、社会貢献といった無形の資産も子孫に伝えていくためのものです。プライベートバンク発祥の地であるスイスでの経験を活かし、本物のプライベートバンクを日本で展開することが起業のコンセプト、他にない強みであり、金融とフィランソロピーの融合により、豊かな社会を次世代に承継することをミッションとしています。

「金融×フィランソロピー」とは?

山本:簡単に言えば資産運用と社会貢献を両立させることです。そのために新たな寄付プラットフォーム「FUKUWAKE®︎」を立ち上げました。資産運用で得られる安定的なリターンの中から、社会課題の解決に取り組む非営利法人・研究機関への寄付を継続的にしていただく仕組みです。

安東:私はスイスのプライベートバンクを知ったときから、日本人に向いていると思っていました。日本人には思いやりや助け合いの精神が根付いているからです。実際、資金を運用して社会貢献できる仕組みや事例をお客様にご紹介すると、高い関心を示されることが多いです。私たちの考えに賛同してくださる支援先の団体も増えています。

起業のきっかけを教えてください。

ヴァスト・キュルチュール株式会社 代表取締役Co-CEO 安東 宏典 氏
ヴァスト・キュルチュール株式会社 代表取締役Co-CEO 安東 宏典氏。
同社の矛(ほこ)盾(たて)経営の『矛』として、成長戦略、執行、運営責任者となる。

安東:私と山本はスイスのUBS銀行の同僚でした。当時はあまり接点はなかったのですが、たまたまIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)に関するセミナーに一緒に行く機会があって、そこで「起業しよう!」と。“本物の”プライベートバンクに勝機があると思い、すぐに意気投合しました。2019年12月に会社を設立、コロナ禍に入ったこともあり、2人でじっくり時間をかけてコンセプトやビジョンを深め、組織づくりも進めて、2021年春頃に本格的に始動しました。

その後、業績は順調に伸びています。

安東:最初から自分たちのやりたいこと、競合との違いが明確であり、ターゲットを絞ってビジネスモデルを作り込んでいるため、このサービスを届けたいお客様に着実に広がっていますし、顧客満足度も高いと自負しています。現在は東京と大阪の2拠点、約30名で全国のお客様をサポートしています。

スイングバイIPOも視野に入れ
互いの成長に寄与し合える
お相手を選んだ

M&Aを検討された理由を教えてください。

ヴァスト・キュルチュール株式会社 代表取締役Co-CEO 山本 耕太郎 氏
ヴァスト・キュルチュール株式会社 代表取締役Co-CEO 山本 耕太郎氏。
同社の矛(ほこ)盾(たて)経営の『盾』として企業文化・理念の浸透、ブランディング、非営利組織との共創責任者となる。

山本:当初は自分たちの力だけで会社を育てていくつもりでしたが、自社単体で業容を拡大するには時間を要します。自分たちが行きたい世界に、より早くたどり着くためにM&Aという選択肢を検討するに至りました。

安東:いわゆる「スイングバイIPO」ですね。スイングバイとは、宇宙探査機が惑星の重力を利用して加速することを表す言葉です。私たちも大企業のサポートを得て成長を加速させ、その先の上場を目指す。それがM&Aの狙いです。

髙島屋様をお相手に選ばれた理由をお聞かせください。

山本:顧客層が重なる企業との提携をいろいろイメージしながら、ストライクさんとのご相談を重ねました。買い手候補を検討するうえで軸になったのは、「どんなサービスを厚くすればお客様が喜んでくれるか」です。

安東:これまでお話ししてきたように、私たちはプライベートバンク領域を充実させ、競争力を保って成長しようとしています。髙島屋さんはプライベートバンク領域の最たる企業であり、私たちが自前で持とうとすると何十年もかかるようなサービスやノウハウを持ち合わせていらっしゃる。その力を借りれば、私たちがやりたいことをより早く実現でき、成長を加速できると思いました。

山本:同社が金融事業を百貨店、商業開発に次ぐ成長の第3の柱と位置づけ、素晴らしい成長プランをお持ちだったこともポイントでした。同社が描いているお客様の資産運用の未来の姿を、すでに私たちは事業として形にしていて、私たちが成長プランに寄与できると信用していただけたのは大きかったですね。協業もスムーズに進むだろうと思いました。

髙島屋様の経営理念「いつも、人から」に共感されたそうですね。

安東:はい。人を大切にし、社会に貢献することを理念に掲げておられます。歴史や規模、商材は全く違うけれど、お客様に対する考え方やビジョンといった根本は同じで、とても相性が良いと感じました。

山本:横浜市出身の私にとって、横浜髙島屋は子どもの頃からよく通った思い入れのある百貨店でもあります。長く顧客に愛される老舗の確かなブランド力は、やはり大きな決め手になりました。

M&Aのメリットは成長の時間短縮
ブランド力や競合優位性を高めることも可能

成約したときのお気持ちをお聞かせください。

成約日の様子。
成約日の様子。

山本:両社の成長だけでなく、IFA業界を変えていくという意味でも、これからが楽しみだと思いました。IFA業界にはさまざまな問題があり、私は以前からIFAの質やリテラシーを向上したいと考えていて、M&Aを決断した背景には業界に一石を投じたいという思いもありました。髙島屋さんのような大手とのタッグは業界では前例のないことであり、大きなインパクトを与えることができました。これを機にIFAの未来を変えていけるような存在になりたいです。

安東:「業界トップになり金融を変える!」ことが大きな目標であり、私たちが社会で果たすべき大切な役割だと考えています。M&Aは、その目標に向かう新たな一歩ですね。

今回、株式の過半数を譲渡されました。

山本:グループに入る条件が過半数の譲渡でした。自分たちが行きたい世界に行くためには、グループに入りより深く連携できたほうがいいし、私たちはオーナーシップにはこだわっていないので、そこは難しい判断ではなかったです。
一方で、成長を加速させるために必要なリソースを惜しまず割いてほしいという要望はしっかりお伝えしました。例えば同社からの役員(取締役3名、監査役1名)に関しても、どんな方に来ていただきたいのか、こちらからも希望を出し、よく話し合ったうえで決めていただきました。

今回のM&Aについて、お客様からの反響はありますか?

安東:はい。お客様や士業の先生方から大反響でした。ネームバリューのあるお相手ですからお客様の期待は大きく、これからサービスが厚くなることをとても楽しみにしてくれています。まずは当社のお客様と髙島屋さんの外商をつなぐべく、様々な手続きを進めているところです。今後は両社のお客様に喜ばれる新サービスも拡充していくつもりです。

ご経験を踏まえて、M&Aのメリットについてどのようにお考えですか?

山本:成長の時間短縮ですね。私たちのような創業間もない会社にとっては、大手企業と組むことによって、自分たちが時間をかけないとできないことをより早く実現できることが一番のメリットではないでしょうか。ブランド力やイメージを高められるというメリットもあると思います。

最後に自社の成長に課題を感じている経営者の方へのメッセージをお願いします。

ヴァスト・キュルチュール株式会社 代表取締役Co-CEO 山本 耕太郎 氏、ヴァスト・キュルチュール株式会社 代表取締役Co-CEO 安東 宏典 氏、ストライク伴瀬
(写真右から山本氏、安東氏、ストライク担当の伴瀬)

安東:私利私欲に惑わされることなく、会社を興したときの気持ち、やりたいと思ったことをブレない軸として最優先にできれば、事業は成長するはずです。もしやりたいことを実現するためにM&Aという選択肢があるなら、ぜひ検討すべきですし、良いお相手がいれば迷わず進むことができるのではないでしょうか。

山本:成長には競合優位性が欠かせません。私たちはプライベートバンクという他社にない強みを持っていますが、今回、髙島屋さんとのM&Aによって、IFA業界においてさらに大きな違い生み出すことができました。「競合優位性を高める」「差別化を生み出す」という視点でM&Aを検討することも重要な成長戦略になりうると思います。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(伴瀬 卓也・事業法人部 マネージャー談)

ストライク伴瀬 卓也

業種、業歴、企業規模を大きく異にする両社の提携は、特に金融業界において大きな話題となりました。そんな両社に共通していたのは、自社が目指す目的地から逆算した“課題”を解決する手段としてM&Aを活用したということです。
ヴァスト・キュルチュール様は、IFA業界トップを目指し、何よりも成長速度を重視しておりました。本提携によって国内屈指のブランド力、信用力、そして上質な百貨店サービスメニューを得ることができました。
髙島屋様は、百貨店事業以外の収益の柱として金融事業の強化を目指しており、プライベートバンクのノウハウ及び人材、クロスセルを行う顧客基盤を得ることができました。
本件は、成約に至るまでの間、各種条件交渉以上に提携後の事業運営方針について協議する機会を多く設けさせていただきました。これによって、お互いに提携後の具体的展開をイメージいただけたものと考えております。
他方、前述したように多くの部分で異なる両社ですので、今後一朝一夕にはいかないこともあるとは思います。しかしながら、これまで伴走させていただいた担当者として、本提携は必ずや望んだ成果が得らえるものと確信しております。今後の両社の発展を楽しみに、これからも応援しております。

2025年1月公開

本サイトに掲載されていない事例も多数ございます。
是非お気軽にお問い合わせください。