INTERVIEW

M&Aは次なる投資へのステップ
個人買収で成長させた会社を譲渡

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株式会社LALALA Plus 代表取締役社長 酒井 大輔氏

株式会社LALALA Plus 代表取締役社長 酒井 大輔氏

留学エージェントとして、大学生や若手社会人に向けた留学のサポートを幅広く展開している株式会社LALALA Plus(東京都渋谷区)。同社は2024年7月、旅行事業を手掛ける株式会社アドベンチャー(東京都渋谷区)の傘下に入り、新たなスタートを切った。個人で同社を買収し、コロナ禍の逆境を乗り越えて短期間で企業価値を大幅に高めた酒井氏は、なぜM&Aによる譲渡を決断したのか。投資家の視点で捉えた事業の成長戦略やM&Aのメリットについてお話を伺った。

相続した資金を活用し、プラットフォーム経由で会社を譲受

LALALA Plusの業務内容や特徴を教えてください。

LALALA Plusは、大学生や若手社会人対象の留学エージェントとして、オーストラリア、カナダ、アメリカ、フィリピンなど、おもに4か国への留学をサポートしています。当社の強みは、SEOに強く、広告費を抑制しながらWeb集客による成果を上げている点です。また、多くのエージェントは語学学校への留学が中心ですが、わが社は語学学校をはじめ、カレッジや大学など、より専門性の高い教育機関にも対応しています。

もともと個人で譲受された会社だそうですね。その経緯を教えてください。

私は以前、ベンチャーキャピタルで6年間、非上場スタートアップへの投資に携わっていました。その後、MBA留学を終えて2018年に帰国し、次に何をしようかと考えていた頃、オンライン上でM&Aの相手となる会社が探せることを知り、M&Aマッチングプラットフォームなどで情報を集めました。祖父母から相続したまとまった手持ち資金があったので、その範囲で会社を買おうと考えたのです。自分自身も留学経験があったので、“留学エージェント”という事業に興味を持ちました。話を聞いて、ビジネスとしての魅力を感じ、検討を始めてから約1か月で譲り受けを決断しました。

1か月という驚異的なスピードで譲受を決めた理由とは?

株式会社LALALA Plus 代表取締役社長 酒井 大輔氏
(株)LALALA Plus 代表取締役社長 酒井 大輔氏

決め手は、ビジネスモデルがシンプルでわかりやすかったことです。投資の経験はありましたが、経営は初めてだったので、複雑な事業や多くの社員を抱える会社を運営する自信はありませんでした。また、マネジメント経験もあまりなかったので、社員の少ない小規模な会社の方が自分には合っていると考えました。加えて、ベンチャーキャピタル時代にIT系企業への投資経験があったことから、IT系のビジネスモデルは理解しやすく、リスクも低いと感じました。当時のLALALA PlusはまだFAXでやり取りをしている状態で、改善の余地が大きいと感じたことも、決断の後押しになりました。

個人資金で大金を投じることに不安はありませんでしたか?

確かに大きな金額ですが、譲受にあたり、ローンを組まずに自分の手元にある資金で無理なく購入できる会社を探しました。手元の資金は、もちろん失いたくない金額でしたが、「もし事業がうまくいかなければ、また就職すればいい」と割り切り、それほどプレッシャーは感じませんでした。ベンチャーキャピタル時代に多額の投資に携わってきた経験が自信となって、思い切った決断ができたのだと思います。

コロナ禍の苦境を乗り越え、
急成長を遂げた会社を譲渡する理由

LALALA Plusでは、どのように事業を拡大していったのですか?

当社は、もともとオーストラリアを中心に事業を展開しており、買収時はシドニーに現地法人がありました。当時の売上の約9割がオーストラリア留学に関するものでしたが、コロナ禍で海外渡航が制限され、仕事が急激に減少しました。そこで、その期間を活用し、カナダやアメリカ市場などの開拓を進めました。カナダは競合が少なく、早期に成果を上げることができ、その後アメリカ市場にも展開しました。現在、円安の影響でアメリカ留学は費用面でのハードルが高く、オーストラリアやカナダへの留学が人気となっています。

コロナ禍も乗り越え、業績好調なLALALA Plusの譲渡を決意した理由とは?

当初は、同規模の会社を複数譲受し、ホールディングス化して上場を目指す構想がありました。しかしコロナ禍によって、その計画は停滞していました。コロナが落ち着くと留学事業が急成長し、他社を買収するよりも、この事業に集中した方がリスクが低くリターンが大きいと判断しました。そのため、追加での譲受の計画は中止し、留学事業の拡大に専念したのです。
その後の2年間で売り上げは上昇し、社員も増えましたが、長期的な成長には課題感を感じていました。6年間で企業価値は約10倍に達しましたが、今後も同じペースで成長するのは現体制のままでは厳しいと判断し、大手企業の傘下に入り、更なる成長と発展を目指すべく、このタイミングでの譲渡を決断しました。

譲渡を検討し始めた経緯と、買い手への条件について教えてください。

わが社は1月決算の会社で、2023年の12月頃には業績が順調であることを確認し、次のステップを考える時期だと感じていました。決算が終わったタイミングで譲渡の準備を進めるのが適切だと判断し、具体的な検討を始めました。
譲渡の条件には特にこだわりはありませんでしたが、希望する株価に近づくことと、スピード感を持って進めていただけることを重視しました。現在の自社の規模感や、一度M&Aで会社を譲受した経験から、細かい条件よりも、スムーズな進行を優先しました。

買い手となったアドベンチャー様の印象を教えてください。

株式会社アドベンチャー 代表取締役社長 中村俊一 氏、株式会社LALALA Plus 代表取締役社長 酒井 大輔氏
成約日の様子(写真左は(株)アドベンチャーの中村俊一社長)

アドベンチャー様は、中村社長のリーダーシップが強く、決断の早い会社だと感じました。上場企業でありながら柔軟さがあり、取引が驚くほどスムーズに進んだ点が印象的です。実際、初めてお会いした翌朝には意向表明をいただいて独占交渉に入り、特に大きな問題もなく、契約がまとまりました。
社長との面談も2時間ほどお話ししましたが、非常にリラックスした雰囲気で、緊張感はまったくありませんでしたが、新規サービスとして留学事業に注力していくことに可能性を感じているということから、スケジュールと金額感を含めて熱いご意向をお話しいただきました。お話の最後に意向表明書の提出のご意向をいただいたときも、「この会社とであれば上手くやっていける」と自然に受け止めた感覚でしたね。気が合うと思っていただけたのなら、嬉しいですね。

社員の皆さんには、譲渡の話をいつ伝えましたか?

譲渡の開示日に合わせてミーティングを開き、社員に伝えました。ちょうどオフィス移転の話が出ていたので、アドベンチャー様の恵比寿ガーデンプレイスのオフィスへ移転することも併せて発表しました。社員たちは移転を喜んでくれましたし、それぞれ思うところはあったかもしれませんが譲渡に関して特に反対はなく、スムーズに受け入れてくれました。

VC時代の同期とタッグを組み、
生き残り戦略を見据えたスピーディーな譲渡を実現

酒井様が考える、事業成長や生き残り戦略におけるM&Aのメリットとは?

当社のような規模の会社だと、独自の強みを築くことが難しい場合があります。留学事業は、海外情勢や景気の影響を受けやすく、テロや震災、パンデミックなど、10年に一度、大きなリスクが発生します。また、事業が成長し、社員や顧客が増えることで責任もさらに大きくなります。こうした状況で、独立経営を続けるよりも、他社の傘下に入ることで事業の継続性を確保する方が現実的だと考えました。M&Aによって得られる安定性は、非常に大きなメリットです。

ストライクのサービスについて、どのように感じましたか?

とても満足しています。忙しい時期でも迅速に対応していただき、短期間でM&Aを完了できました。当社は小規模で、管理部門の業務はほぼ私一人で行っていたため、M&Aの対応には限界がありましたが、ストライクさんが雑務的な部分まで手伝ってくれたので大変助かりました。安心して取引を進められました。

担当の秋山とは前職で同期だったそうですね。

株式会社LALALA Plus 代表取締役社長 酒井 大輔氏、ストライク秋山
M&Aを検討した際、前職時代の同期だった秋山(写真右)に真っ先に相談したという酒井氏。

はい、秋山さんはベンチャーキャピタル時代の同期です。当時は、同期の仲間たちとともに多くの困難を乗り越えてきました。以前からM&Aの仲介会社の方とは複数お会いしたことがありましたが、自社のM&Aを任せようと思える人と出会うことはできなかったため、2023年1月の決算後に会社の譲渡を考えた際には、信頼できる相談相手として真っ先に秋山さんに相談をしました。こちらの状況を伝え、すぐに的確なアドバイスをもらったことから、M&Aのパートナーとして正式に依頼しました。秋山さんをはじめ、ストライクさんの心強いサポートには本当に感謝しています。

今後の協業や事業展開のビジョンについてお聞かせください。

現在は管理部の統合が中心で、具体的な協業はこれからですが、アドベンチャー様の広告運用の強みを活かし、当社の弱点である広告分野を強化できると期待しています。また、アドベンチャー様のアメリカ現地法人やSEOのサポートも活用することができそうです。さらに、アドベンチャー様は旅行業として航空券を扱えるため、今後は航空券を含めたパッケージ販売も可能になるでしょう。留学業界は小規模事業者が多く、旅行業を保有している会社は少ないため、他社との差別化になると考えています。

今後、取り組んでみたいことなどはありますか?

新たに留学事業以外の仕事にも取り組んでいきたいと思っています。いま興味があるのは、グロース市場に上場していて株価が伸び悩んでいる会社に投資し、M&A戦略や経営戦略をサポートすることです。こうして企業価値を高め、私自身も株式投資で利益を得るというモデルで、すでに1社で始めています。

自社単体での成長に難しさを感じている経営者へのアドバイスをお願いします。

株式会社LALALA Plus 代表取締役社長 酒井 大輔氏、ストライク礒田、ストライク秋山、ストライク富田
リスクを一人で抱え込むのでなく、適切なタイミングでM&Aを検討してみるのも経営者にとって必要な判断、と酒井氏(写真左からストライクの礒田、秋山、写真右が富田)

私がアドバイスできる立場かはわかりませんが、成長にはさまざまな方法があると思います。人材の採用、企業の買収、提携、そしてM&Aもその一つです。ただ、M&Aへの一歩をなかなか踏み出せない方もいるでしょう。LALALA Plusは私が創業した会社ではないため、譲渡への抵抗感はそこまでありませんでしたが、自分や親族がゼロから立ち上げた会社だと愛着や思い入れがあり、決断が難しいこともあると思います。
私自身は投資の観点で事業を捉えていますが、M&Aは企業の成長戦略や継続性を考える上で非常に有効な手段です。会社が成長し、従業員が増えれば、外部リスクは高まります。リスクを一人で抱え込むのでなく、適切なタイミングでM&Aを検討してみるのも経営者にとって必要な判断だと思います。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(秋山 朋子・イノベーション支援室アドバイザー談)

ストライク秋山 朋子

株式会社LALALA Plus様は酒井様が譲受後、留学先の国の拡大などにチャレンジし、右肩上がりの成長を遂げている会社でした。お相手となった株式会社アドベンチャー様は酒井様が展開されてきた留学エージェントのノウハウに魅力を感じておりましたが、希望されるスケジュール感や提案のタイミングも含めて、運命的なマッチングだったかと思います。担当者としてもこのM&Aに立ち会えたことを嬉しく思っております。
酒井様が行ったように、ご自身がM&Aで会社を譲受し、事業を拡大させた上で譲渡するという戦略は今後大きなモデルになっていくと考えております。ストライクとしても皆様のサポートができるよう、引き続き精進してまいります。

2024年12月公開

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