INTERVIEW

アミューズメント業界の将来見据え大手グループに譲渡
社長退任後は望んでいた社会貢献活動に注力へ

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有限会社サンダイ 前代表取締役社長 中間一世 氏

有限会社サンダイ 前代表取締役社長 中間一世 氏

前代表取締役の中間一世氏が2000年に創業した(有)サンダイ(福岡県中間市)は、アミューズメント機器レンタル事業のほか、直営のアミューズメント施設「スマイルステーション」を福岡県や大分県、広島県などに合計9店舗展開する。高い利益率で経営は良好だったものの、中間前社長の後継者が急逝。市場の将来も見据えた結果、中間前社長は2024年5月、業界大手のGENDAにサンダイの全株を譲渡した。従業員全員の雇用継続も約束されたため、中間前社長は以前から取り組みたかった社会貢献活動に力を入れるという。GENDAに譲渡した理由と、今後の活動について中間前社長に話を伺った。

3台のクレーンゲーム機でレンタル事業スタート

(有)サンダイは2000年に中間一世前社長が創業し、現在はアミューズメント機器のレンタル事業のほか、直営のアミューズメント施設「スマイルステーション」を9店舗展開しています。創業の経緯からお聞かせください。

大学を卒業後、1993年に大手ゲーム機器メーカーに就職しました。福岡市や北九州市でゲーム機器のレンタル先を開拓する営業を担当した後、高知県内の営業所の所長に就任しました。当時は私が社内で最年少の所長だったと思います。就任した当初、私の営業所の業績は全国で下から3番目でしたが、翌年には3位になりました。それほどがむしゃらに働きましたね。同社には7年間勤務し、濃密な時間を過ごしました。その後に帰郷することになり、地元に近い福岡県中間市で独立開業しました。たった一人からのスタートです。
当初から自分自身でアミューズメント機器のレンタル事業をやってみたかったのですが、手元の資金が30万円しかなかったので新品の機器を買うことはできませんでした。ただ、古物商許可を取得していたので、中古の小物・雑貨を安く仕入れて景品としてゲームセンターに卸すことから始めました。
そうやってゲームセンターを回るうちに、廃棄予定のクレーンゲーム機があると聞きました。廃棄処分するにはお金がかかりますから、「それなら私が引き取ります」と申し出ました。3台のクレーンゲーム機を引き取り、それを貸し出したのがレンタル事業の始まりです。貸出先はカラオケ店やゲームソフト店、温浴施設などを回って開拓していきました。ちなみに当時は、衣料関係の商売をしていた実家の「三代商事」の屋号を使っていましたが、最初に引き取ったのがクレーンゲーム機3台だったので、それを機に社名をサンダイに変更しました。

直営アミューズメント店を9店舗まで拡大

社名にはそのような由来もあったのですね。その後はレンタル事業が順調に拡大していったそうですが、アミューズメント施設の展開は何がきっかけだったのですか。

クレーンゲーム機
「サンダイ」という社名は最初に引き取ったクレーンゲーム機3台が由来。今では9店舗のアミューズメント施設を運営するまでに成長。

レンタル事業の取引先から、福岡市の中心部にある商業施設内でゲームコーナーを運営してみないかと声が掛かったのがきっかけです。広さはそれほどでもありませんでしたが、実際に運営してみると、直営の手応えを感じました。その後、流通大手さんともお付き合いが広がり、ショッピングセンターへの出店が増えていきました。

直営店の数が9店舗になるなど、ここまで成長すると思っていましたか。

私自身がゲーム機器メーカーにいたので商品に対する知見もありましたし、フットワークの軽さがサンダイの強みでしたので、一定の規模までは拡大できると確信していました。
一方で、業界の見通しについては、伸びしろはあるものの厳しい時代が来ると感じていました。例えば、消費増税への懸念があります。アミューズメント施設の多くは、ゲーム機器の利用料金を内税の100円で設定しているため、増税されると大きな影響があります。サンダイでは、消費増税の可能性を見据えて、利益率15%を目指して経営してきました。

後継者が急逝した翌年にM&Aの声が掛かる

そのような中、どういった背景から第三者への譲渡をお考えになったのですか。

有限会社サンダイ 前代表取締役社長 中間一世 氏、ストライク泉田
後継者に、と考えていた社員の急逝により事業承継問題に直面。そんな時にストライクからの提案がきっかけでM&Aの検討を始めた中間前社長。
(写真右はストライク担当の泉田)

元々から会社を譲るつもりで、従業員の中に後継者がいました。本人とも具体的に話を進めていたのですが、その後継者が2022年に病気で急逝してしまったのです。私には息子もいますが、当時はまだ高校生だったので、会社を継がせることができませんでした。
ほかに方法はないものかと考えていたときに、ストライクの泉田京佑さんから、ある業界大手がサンダイに関心を持っているという話をいただきました。翌年の夏のことです。後にそれがGENDAさんであると教えていただいたので、サンダイの価値がどれほどのものか、話を一度聞いてみることにしました。

GENDAとはコンプライアンス重視がシンクロ

GENDAの印象は?

業界の大手ですから、私がゲーム機器メーカーに勤めていたころから知っていました。(株)GENDAさんは上場企業なので、コンプライアンスの面でも心配は要らないと思いました。というのも、残念なことに業界の中には一部で法令順守の意識が薄い企業があるのです。サンダイは風営法を順守しながら利益を生み出してきたので、GENDAさんとは共鳴し合うことができると感じました。GENDAさんもコンプライアンスを重視したサンダイの経営を高く評価してくれたと聞いています。

交渉の途中で先方と直接お会いしたそうですね。

GENDAさんとグループ企業である(株)GENDA GiGO Entertainmentさんの役員の方々と面会しました。久しぶりにゲーム機器メーカーの人々と直接お会いできたのでうれしかったです。当時からの顔見知りではありませんが、同じ業界で一時期を共に働いたことから、お互いに勝手知ったところもあって、安心しました。

従業員の雇用継続と雇用内容の維持を要望

譲渡にあたり、条件や要望はありましたか。

有限会社サンダイ 前代表取締役社長 中間一世 氏
お話を伺った(有)サンダイの中間一世前社長

なによりも従業員の雇用の継続、そして、給与面も含めて雇用内容の維持をお願いしました。GENDAさんは従業員に寄り添った働き方を推進されており、この点もサンダイと共通していました。そのため、雇用の継続はもちろん、雇用内容の維持についても快諾していただきました。
また、私の早期退任も要望し、了承していただきました。サンダイとは別の形で新しい活動に取り組みたかったので、今回の譲渡がサンダイから身を引くのによい節目だと思いました。

従業員はGENDAへのグループ入りを歓迎

譲渡について、従業員の皆さんの反応はいかがでしたか。

サンダイの従業員はパート・アルバイトを含めると約60人で、ベテランから若手までいますが、私が退任することに皆がショックを受けていました。しかしながら、これから全く会わなくなることはないと説明すると納得してくれました。従業員とは私がサンダイを離れた後も友人として付き合える関係性をこれまで築いてきましたし、実際に、サンダイの従業員とは今でもたまに食事に行きます。
私は、以前から従業員に「アミューズメント市場は2026、27年ごろをピークに縮小していき、大手しか生き残れなくなる」と伝えていました。今回、サンダイは業界大手のGENDAに仲間入りしたので、従業員たちの中で、市場縮小後の将来不安は払しょくされたと思います。特に若手の従業員はGENDAの一員になれたことを歓迎し、今後のサンダイの成長に期待を寄せています。
また、不安が払しょくされたのは従業員だけではありません。私自身も、前述した新しい活動に乗り出したい気持ちがありながら、市場がピークを過ぎた後にサンダイの従業員の雇用をいかにして守るかという悩みを抱えていました。今回の譲渡が決まった時、その悩みから解き放たれて、ほっとしました。

社会貢献は国内外を視野に

先ほどからお話に出ている新しい活動も含めて、中間前社長の今後の予定をお聞かせください。

有限会社サンダイ 前代表取締役社長 中間一世 氏、ストライク泉田
今後は社会貢献活動や趣味など、自分のために時間を使うのが楽しみ、と中間前社長。

地域貢献のために、さまざまな活動をしていきたいと考えています。
一つは、社会問題にもなっている害獣の駆除です。狩猟免許を持っているので各地の猟友会の皆さんと親交を深めて、私でできることをお手伝いしたいと思います。
もう一つは、子どもたちと若い世代の親御さんを対象に、海や山の自然に触れてもらう活動です。例えば漁港組合と連携した潮干狩りや、山での野外活動などを考えています。このほか、海外での社会貢献にも関心があります。
一方、ビジネスでは、投資関連の事業を始めようと思っています。サンダイを譲渡した後のセカンドライフも忙しくなりそうです。

それは楽しみですね。そこまでアクティブな気持ちになれる原動力は何ですか?

これからは自分のために時間を使いたいという思いです。私はプライベートでも多くの趣味を持っています。家庭菜園、写真、料理、釣り、ギター、このほか映画は年間300本を鑑賞します。これまでにも平日の夜間と休日は、がっつりと趣味に時間を費やしていました。

自社単体の成長に限界を感じたら第三者承継を

今回のM&Aにおいて、ストライクの対応はいかがでしたか。

担当の泉田さんは年齢も若いので、「果たしてこの人で大丈夫かな」というのが最初の印象でした(笑)。実際はとてもスマートな人で、契約書類も含めてさまざまな書面を作成する際に安心して任せることができました。フットワークも軽くて、私の無茶振りにも親身に対応してくれました。

最後に、自社単体での成長に課題を感じている経営者に向けてアドバイスをお願いします。

引き続き自社で踏ん張るか、もしくは第三者への譲渡を検討するか、ご自身にとって適切な答えを選ぶといいと思います。少しでも限界を感じたのなら、譲渡したほうがいいと思いますね。その際には、ストライクさんを仲介会社の選択肢の一つとして検討されてみてはいかがでしょうか。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(泉田 京佑・法人戦略部 アドバイザー談)

ストライク泉田 京佑

本件は、直面する事業承継問題と中長期的な成長戦略の問題を業界大手と手を組むことにより解決することができたM&Aでした。
有限会社サンダイ様は九州を中心に主にショッピングセンター内でゲームセンター事業を営む会社で、代表の中間様は中長期的な景気動向から目の前のお客さまのニーズの変化まで広い視野で捉えながら事業を運営されていることが印象的でした。
今回は後継者の急逝による事業承継問題、数年後のマーケット縮小予測から成長戦略課題を解決する手段として業界大手のGENDA様と手を組み、両課題を一手に解決するお手伝いをさせていただきました。
ご成約後には、特に若手の社員の方からGENDA様と手を組むことについて多くの前向きなご意見が寄せられ、サンダイ様に関わる方々にとってもプラスのM&Aであったと感じております。
今後は双方の強みの融合やノウハウの共有が行われ、両社様が益々発展される事を心より祈念しております。

2024年12月公開

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