INTERVIEW

三菱電機系の技術商社が
電力や鉄道などの制御システム開発会社を
グループに迎え入れた狙いとは

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株式会社日本制御エンジニアリング 代表取締役社長 菅原 正仁 氏

株式会社日本制御エンジニアリング 代表取締役社長 菅原 正仁 氏
株式会社カナデン専務取締役 守屋 太 氏

電力系の制御システムなどの開発を手がけている株式会社日本制御エンジニアリング(神戸市)は2023年12月に、三菱電機系の技術商社である株式会社カナデン(東京都中央区)の傘下に入った。日本制御エンジニアリングは三菱電機関連の仕事が多く、両社はソフトとハードの違いはあるものの、近い業界で実績を積んできた。カナデンは今年(2024年)創業117年を迎える老舗だが、M&Aは今回が初めて。なぜM&Aに踏み切ったのか。そして今後どのようなシナジーを見込んでいるのか。またカナデンという新しいパートナーを得た日本制御エンジニアリングは、どのような事業展開を計画しているのか。日本制御エンジニアリング代表取締役社長の菅原正仁氏と、カナデン専務取締役の守屋太氏にそれぞれの戦略をお聞きした。

電力系制御システムに特化したのは、やりがいがあり若い人を育てるのに向いているから

日本制御エンジニアリング様の事業の特徴を教えてください。

(株)日本制御エンジニアリング 代表取締役社長 菅原 正仁 氏
(株)日本制御エンジニアリング 代表取締役社長 菅原 正仁 氏

菅原:電力系統制御システムや鉄道電力制御システムを中心とした社会インフラを支える制御システムの開発に特化しています。

電力系統制御システムは30年以上やり続けています。電力会社様は10年ほどでシステムを更新され、その都度バージョンアップやシステムの統合などを行われます。

これまでは送電分野の仕事が中心となっており、中央給電指令所や、その下部組織となる制御所などにシステムを納めていましたが、近年は配電分野にも仕事を広げています。

一方の鉄道向けは、鉄道会社様が保有する変電所の電力系統設備を監視・制御するシステムを開発しています。

電力や鉄道などの制御システムの開発に特化されたのはなぜですか。

菅原:昔は自動倉庫を手がけていた時期もありましたが、30年ほど前に電力の仕事を始めてからは、この事業に注力するようになっていきました。

電力制御システムは開発規模が大きく、開発期間も2、3年と長いため、人を育てるには良い環境と言えます。開発メンバーに若い人を入れ、一緒に取り組むことで、成長を促すことができるからです。

また電力制御システムの開発は、設備の特性を理解しないと、お客様と話ができません。このため仕事を覚えるのに時間がかかるのですが、やりがいがあり、若い人を育てるのにも向いていることから、特化するようになりました。

今回、カナデン様とご縁ができました。どのようなお考えがあったのでしょうか。

菅原:何社か候補企業がありましたが、カナデンさんが三菱電機さんの系列であるというのは、すごく大きな判断材料になりました。弊社も三菱電機さんの仕事をさせていただいており、近い関係にあるためです。

また同業種の企業だとシナジーが生まれにくいうえに、おそらく大きい企業が小さい企業を吸収する形になり、人だけ持って行かれてしまうのではないかという心配があったからです。

もしそうなってしまうと、弊社のお客様に、これまでと同じように製品やサービスの提供ができなくなり、お客様にご迷惑をおかけすることになります。弊社の社員もこの先どうなるのか不安にもなりますので、そこは避けたいと思っていました。

譲渡の条件として希望されたことは何でしょうか。

菅原:まず、今の事業をそのまま続けさせてほしいとお願いしました。これまで弊社がやってきた仕事を他社が代わりにできるかというと、そんなに簡単にはいきません。時間をかければ、できるかもしれませんが、ノウハウのない状態では大変厳しいと思われます。

そんな状況で、お客様に急に事業を止めますとは言えません。今まで通りやっていかなければならないと考えました。従業員の雇用確保も同様で、この二つを大前提としたうえで、どういったパートナーだったら、弊社の良さを活かせるのかを考えました。

今後はハードプラスソフトを提供することで、お客様の問題を解決する

カナデン様は三菱電機系の技術商社で、FA(ファクトリーオートメーション)やインフラの事業を手がけておられます。制御に特化したシステム開発会社をグループ化された狙いは何でしょうか。

(株)カナデン 専務取締役 守屋 太 氏
(株)カナデン 専務取締役 守屋 太 氏

守屋:弊社は交通系の事業やカメラ、空調機、エレベーター、トランス、計装システムなどを幅広く取り扱っています。業種でいうと食品や飲料、医薬、化学などが多く、プロセスの制御をメインにやっています。

そうした中、力を入れているのがIoT(モノのインターネット)です。装置から送られてくるデータを収集して、それを分析する仕事を行っています。現在、日本のIoT市場は8兆円ほどで、毎年8%ぐらい伸びると言われています。

データを収集して分析するためには、機器だけでなくソフトが必要になってきます。現在、弊社の子会社にテクノクリエイト(大阪市)という会社があり、IoTのソフト開発を行っています。

今はIoTの売上高構成比は3%ほどですが、5年後には10%にしたいと考えています。そのためにはソフト開発力を高める必要があり、その増強部分を日本制御エンジニアリングさんに担っていただきたいと考えています。

カナデン様は今年、創業117年を迎えられます。長い歴史の中で今回が初めてのM&Aとなりました。どのような戦略に基づいた決断だったのでしょうか。

(株)カナデン
117年の長い業歴の中で、今回が初めてのM&Aとなった(株)カナデン

守屋:弊社には今後成長する分野を強化したいという強い思いがありました。その成長する分野というのは、さきほどもお話ししましたIoTです。

この事業はお客様のニーズを聞き出し、お客様の信頼を得てモノづくりができるリーダー的な人材が必要です。こうした人材を育てるのには時間がかかりますので、今回は時間を買うという狙いがありました。日本制御エンジニアリングさんには優秀な若い方が多く、離職率も低く、非常にいい会社だと感じましたので、M&Aを決断しました。

どのようなシナジーを見込んでおられますか。

菅原:弊社は三菱電機さん関連の仕事が多いですが、これらの仕事は現場の技術者が現在お付き合いしている部門やそこからの紹介により仕事を受注しており、仕事の受注範囲は限定的になっています。カナデンさんには優秀な営業の方が多くおられますので、新たな分野の仕事が増えるのではないかと考えています。

また、これまではソフトを作るだけで良かったのですが、これからはソフトとハードを合わせて、どういうことができるのかという提案を行える人材を育てられると考えています。今までにない一歩進んだ人材育成が可能になるのではないかと期待しています。

守屋:弊社の場合はハードの販売が中心でしたが、今後はハードプラスソフトを提供することで、お客様の問題を解決できるようになります。

こうした能力を活かして今後、国内だけでなく海外でも事業を展開し、新しい分野を開拓していく計画です。これまで国内ではビールなどの飲料分野でIoTを提供していましたが、海外では自動車工場の監視システムなどを考えています。

2023年12月にM&Aを実施されましたが、PMIはどのような状況でしょうか。

菅原:まずはお互いを知るところから始めています。カナデンニュースという社内報に登場させていただくことや、カナデンさんの会議に営業や技術の担当者が参加させていただき、仕事をどのように進めていくのかなどについて話し合っています。

守屋:日本制御エンジニアリングさんはソフトを作るエンジニア会社としてプロです。弊社のソフト会社であるテクノクリエイトでも、SE(システムエンジニア)の育て方などについて学ばせていただきたいと思っています。

すでにSE同士のコミュニケーションの取り方などは見習っています。日本制御エンジニアリングさんは、リフレッシュのためのいろいろな行事を実施されていますが、いずれも出席率が非常に高く、例えば社員旅行では、約80%の社員が参加しています。

テクノクリエイトでも飲み会やボーリング大会などを実施し、しっかりとコミュニケーションが取れるような取り組みを始めました。エンゲージメントも上がってきていると感じています。

今後の事業展開(協業など)についてはどのような計画をお持ちですか。

菅原:すでに具体的な案件についてカナデンさんと一緒になって打ち合わせなどを行っています。今後、新しい部署を作り、この部署を10年ほどで社員20人、協力会社20人の、合わせて40人ほどの体制にしたいと考えています。

守屋:ベトナムやインドなどの優秀な人材を日本制御エンジニアリングさんに紹介して、育ててもらい、そうした方にベトナムやインドでの事業に携わってもらうことなども目指していきたいと思っています。

M&Aは将来のシナジーが重要なポイント M&Aは検討の価値あり

ストライクのサービスや担当者についての感想をお聞かせください。

(株)日本制御エンジニアリング 代表取締役社長 菅原 正仁 氏、(株)カナデン 専務取締役 守屋 太 氏、ストライク三柴
担当者のレスポンスが早く、スムーズに話が進んだと話す両氏(写真右が担当の三柴)

守屋:担当していただいた三柴さんは落ち着いていて、物事をしっかりと判断し、ご提案いただきました。メリットやデメリット、クロージングに向けての時間軸なども丁寧に説明していただきました。

弊社は初めてのことなので、分からないことが多く、いろいろな質問をさせていただきましたが、レスポンスが非常に早かったです。次があれば、ぜひまたお願いしたいですね。

菅原:担当の三柴さんと最初に直接お話しするようになったのはデューデリジェンスの時で、非常にスムーズに進めていただきました。どうすれば良いのか分からない中、時間配分なども調整していただき、大変心強く感じました。

M&Aを検討されている経営者の方にアドバイスをお願いします。

守屋:M&Aは将来のシナジーが重要なポイントだと思います。今儲かっているからではなく、明確な目標があって、その目標に合致することが大事です。

菅原:経営者のところには、合併して大きくなりませんかというような趣旨のダイレクトメールが毎日のように届きます。このため何となく怪しいイメージを持つかもしれませんが、実際にお話をすると誠意を持って対応していただけます。

二の足を踏んでいる経営者の方には、M&Aには検討する価値があるということを伝えたいですね。会社を成長させていくうえで必要な場面がありますので、M&Aを手段の一つとして検討されることをお勧めします。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(三柴 知久・企業情報部 シニアアドバイザー談)

ストライク三柴 知久

日本制御エンジニアリング様は電力系統制御システムの開発分野で大手企業とも取引されている非常に技術力を持った企業様です。そこで働かれている従業員の皆様は、新卒で入社された方々が大半を占めており、菅原様は会社の将来だけでなく、従業員の将来、取引先への影響についてもとても考えておられました。
多数の候補先からオファーを受ける中で、カナデン様を資本提携先として選択され理由は主要取引先が同じ三菱電機様ということもありましたが、何よりもカナデン様との今後の事業プランに興味を持たれたからだと思います。
両社の業界は異なりますが、互いの強みを活かせるマッチングとなったと思います。今後の両社の更なる発展を祈っております。

本サイトに掲載されていない事例も多数ございます。
是非お気軽にお問い合わせください。