ご成約インタビュー No.13
INTERVIEW
知人への譲渡であったが、当事者同士の交渉は避け、
専門家のサポートを受けスピード成約を実現
- #後継者不在
- #創業者
- #セカンドライフ
- #調剤薬局・ドラッグストア
有限会社あさひ薬局 前代表取締役 尾立 忠志 氏
株式会社四国銀行お客様サポート部 ソリューション推進グループ 調査役 安岡 潮 氏
高知県で調剤薬局2店舗を展開する有限会社あさひ薬局を創業・経営してきた尾立忠志氏。ある事情から、急遽経営から手を引かなければならなくなった。譲り受けてくれる知人の経営者はいたものの、希望する譲渡期限までは、あと2ヵ月──。
時間のない中で、どのようにしてスピード成約に至ったのか、ストライクの担当アドバイザーである石塚辰八が、尾立氏と今回のM&Aの相談を受けた四国銀行の安岡潮氏にお話を伺った。
家族の看病のためM&Aをして引退することを決意
経営理念を貫く難しさも感じていた
あさひ薬局を開業された経緯を教えてください。
尾立氏:私は23歳から47歳まで明治製菓の製薬部門(現在のMeiji Seika ファルマ株式会社)に勤務し、その後は日清製粉の新規事業立ち上げのための基盤整備に携わりました。以前から自分の信念を貫く情報提供を心がけておりましたが、57歳のとき、信頼関係のある医薬品卸の会社から「これまでの知識や経験、人間関係を故郷の高知で発揮しないか」との申し出をいただき、薬局を開業することになりました。開業に必要なすべてを整え、私を迎えてくれたのです。
譲渡を検討されたきっかけは?
尾立氏:直接の理由は家族と過ごす時間をつくるためですが、経営理念を実現することに限界を感じていたこともありました。
私にとって来店する患者さんは『家族』。家族に接するように患者さんとコミュニケーションをとり、服薬指導をすることを旨としてきました。また、真に患者さんのことを考えて、儲けにつながらないことでも伝えるように心がけていました。長年に渡り自分の信念に沿って医薬情報を学び提供してきた私にとっては、それが当たり前の経営なのですが、そのような私の経営理念はなかなか世の中には通用しません。一般に薬剤師は目の前の患者さんではなく、処方せんと薬だけを見たがりますし、医薬品行政は増大する医療費抑制のため、どんどん方針を変えていきます。自分の信念に基づいた経営を続けていくのは難しく、特にジェネリック推奨の方向づけに関して患者さんに対し申し訳なく感じるようになってきました。
そんな折に妻が大病を患いました。それで経営から離れ、妻のそばで看病することを決断したのです。
知人への譲渡であったが、当事者同士の交渉は避け、
専門家のサポートを受けスピード成約を実現
お相手はどのような方ですか?
尾立氏:経営者には、それなりの自覚と能力が必要です。私には息子がおり、会社に入れて学ぶ機会を与えましたが、残念ながら彼に経営を任せる気にはなりませんでした。
医薬に関する知識、人間性、経営者としての能力などを考えたとき、会社を任せられるのは同業他社の社長であるA氏しかいなかった。十年来の気心知れた仲であり、一緒に経営の話をしてきた人物です。幸いなことにA氏も私の会社を譲り受けることに賛同してくれました。ただ、双方が合意しているとはいえ大きな契約ですから、当事者同士で進めるのではなく、客観的立場の専門家として四国銀行の安岡さんに入ってもらうことにしたのです。
かなりのスピード成約になりました。
安岡氏:尾立氏からご相談をいただいたのは2013年10月初旬で、「年内にはまとめてほしい」とのご要望をいただきました。しかし、その際に尾立氏にも説明しましたが、M&Aは大きな金額が動きますし、後日のトラブル防止のために、財務状況や取引先との契約など確認すべきことがたくさんあります。もちろん価格交渉も1回でOKということにはなりません。年内の成約はハードルが高いため、どうすべきか悩みました。そこで当行と提携しており、高松にも営業所があるストライクさんに協力を依頼することにしたのです。
そこからは一気に加速しました。ストライクさんに初めて同行してもらったのが2013年11月14日で、最終契約したのが12月16日。ストライクの石塚さんや高松営業所の担当者にもかなり注力していただき、初期面談から1ヵ月間で成約まで至ることができました。
成約後のことを教えてください。
尾立氏:最終契約がほぼ決まっていた12月7日に全従業員を集めて恒例の忘年会を開催しました。そしてその最後の挨拶で、会社を譲渡し、私と息子が第一線から退く旨を伝えました。あっけにとられていた者もいましたが、従業員の給料や勤務地などが変わらないこと等を説明すると、動揺はあったものの、大きな混乱はありませんでした。
その後、私は妻の看病がありましたので、会社にとどまらずに退職。妻は数ヵ月後に亡くなりましたが、最後まで妻に付き添うことができました。買い手企業や四国銀行を始め、懇意にしていた医薬品卸の会社や病院関係者の皆さんなど、M&Aに関わってくれた方々のご理解の賜物と思い、心から感謝しています。
本日はありがとうございました。
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