セミナーレポート
SEMINAR REPORT
クリニックや病院の後継者問題にM&A活用を!
ストライクとエムスリーがセミナー共催
ストライク<6196>とエムスリー<2413>は9月10日、都内で「地域医療の継続のためのM&A活用方法」と題したセミナーを共同で開催した。クリニック(診療所)と病院の後継者問題の現状や第三者承継の概要・事例を紹介したセミナーで、クリニックについてエムスリーの医院継承グループコンサルタントの星澤慧氏が、病院についてストライクの事業法人部医療・介護チームチームリーダーの箕浦悠氏が解説した。
後継者不在に悩む開業医は約7割
セミナーではまず星澤氏がクリニックにおける後継者問題について紹介。同社が全国の60歳以上の開業医を対象に行ったアンケート調査では、約7割が後継者不在となっており、後継者がいない医師のうち約7割が第三者承継を希望していることがわかった。その理由として、「患者・地域医療、スタッフの雇用維持ため」「廃院コストがかからない」を挙げる回答者が多かった。調査結果を踏まえて、日本全国で第三者承継のニーズは約2万5000診療所あると推計しているという。
譲渡価額を左右する3要素とは
次にクリニックの医院継承が成立するまでのスケジュールや一般的な譲渡スキーム、譲渡価格について解説。後継者探索から初めて譲渡実行までは平均で1~2年を要し、譲渡相談は実際の譲渡日の2年以上前に行うことを推奨した。同社では医師の9割が活用する「m3.com」の会員基盤を生かし、各プロセスにかかる時間を大幅に短縮できているという。
また、譲渡スキームは運営形態により異なり、個人事業と医療法人の分院は事業譲渡となり、医療法人では出資持分の譲渡もしくは基金の譲渡を行うことになるとした。
譲渡価額について、事業譲渡では「譲渡対象資産(医療機器など)+営業権」、法人譲渡では「法人の純資産+営業権」と説明。その価値の算定方法が複数存在するとしたうえで、同社の評価方法を紹介した。さらに、クリニックのM&Aにおける営業権は、高収益か否か(収益性)、母集団の多い診療科目か(科目)、所在地が人気の場所(エリア)か否かの3要素で金額が変動し、マッチングのしやすさにも関わると述べた。
病院の第三者承継の現状
病院の第三者承継について、箕浦氏は医療法人専門チームを設置しており、病院の後継者問題に注力していると述べた。同氏によると、病院のM&Aは増加傾向にあるなかで、国内最大の医療法人グループでも全国の病床数の1%ほどのシェア(2020年11月末概数、厚生労働省調査)しかなく、業界再編はこれから進むと分析する。
また、2020年に同省公表の報告書では、2018年における病院開設者の平均年齢は64.3歳で、クリニックの61.7歳よりも高く、2020年の全業種における代表者の平均年齢60.1歳(帝国データバンク調べ)よりも高いことから、高齢化が他業種よりも進んでおり、問題が切迫していることを伝えた。
譲渡希望者から寄せられる相談とは
譲渡希望者から受ける相談についても、後継者問題や設備の老朽化、将来の業績不安、近隣の医療機関が売却したこと、経営ではなく診療に集中したいといった希望から相談が寄せられているという。
後継者不在がM&Aのきっかけになった複数の実例も紹介された。そのうち、100年以上に渡り地域医療を支えてきた中小規模の医療法人のケースでは、理事長は80歳代、4人の子供のうち3人は医師だが、病院経営を引き継ぐ気はなく、一時は閉院を考えていたという。そうしたなかで、第三者承継の存在を伝えたところ、譲渡側が地域医療機関としての機能を維持すること、職員の雇用を維持することなどの条件を提示。その条件を満たしたことから、最終的に病院や介護施設を運営支援する企業への承継が実現した。実例紹介などを踏まえ、同氏は医療法人が抱える課題にM&Aが有効手段のひとつであるとまとめた。
文:M&A Online
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