INTERVIEW

業績は軒並み好調
意識の持ち方などポイントは

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岡野 秀生 氏

ナカバヤシ株式会社 取締役執行役員・関係会社統括本部副本部長・管理統括本部東京本社総務部長(経営企画室担当)
日本通信紙株式会社 代表取締役社長
フランクリン・プランナー・ジャパン株式会社 前代表取締役社長
岡野 秀生 氏

アルバム、手帳の製造販売、製本事業などを行なうナカバヤシ株式会社は、これまで多くのM&Aを手掛けてきた。同社のM&A責任者として数々の買収を成功させ、また買収後は当該企業の社長に就任し確実に軌道に乗せてきたのが銀行出身の岡野秀生氏だ。今回はストライクの担当者である鈴木芳憲が、岡野氏に企業買収やその後のマネジメントについてお話を伺った。

事業の多角化にM&Aを活用
重視するのは既存ビジネスとのシナジー効果

ナカバヤシの事業内容や取り扱い商品について教えてください。

ナカバヤシの「フエルアルバム」
ナカバヤシの「フエルアルバム」は1968年に誕生。ツギビスで自由に台紙を増やせ、テーマごとに編集できる利便性の良さと品質が支持されベストセラーとなった。

ナカバヤシは特殊な製本がルーツの企業であり、もともとは図書館製本(※)を主業としていました。中高年以上の方にとっては、大ヒットしたアルバム「フエルアルバム」のメーカーとして認知度が高いと思います。

現在は事業の多角化を進めており、印刷・製本関連事業やアルバム・手帳といった文具・紙製品事業だけでなく、オフィス用シュレッダーを中心とした事務機器関連事業、チャイルドシートなどのベビー&シルバー関連事業、人材派遣事業なども手掛けています。

※図書館製本/図書館用に長期保存を目的とした製本方法。雑誌など一度出版されたものを再度製本する合本製本、書類や論文等の製本、古くなった所蔵本の修理・修復製本などがある。

事業の展開にM&Aを活用する際の方針は?

基本的に、弊社グループの既存ビジネスとのシナジー(相乗効果)が得られるかどうかという点を重視しています。例えばチャイルドシート事業のM&Aは、文具事業の中で幼児向けの知育玩具を取り扱っていたことから、子ども向けの商品拡充という意味がありました。何が何でも買収しようとするのではなく、方向性はきちんと見極めています。

主力製品の一つである手帳の事業においては、フランクリン・コヴィー・ジャパン社から手帳事業を譲り受けました。

岡野秀生氏とストライクの鈴木
ストライクの鈴木(写真右)が担当し、フランクリン・コヴィー・ジャパン社とのM&Aが成立。今後は「フランクリン・プランナー」というブランドを武器に、市販手帳分野の拡充を図るという。

弊社は手帳の製造にかなり古くから取り組んでおり、国内の手帳のトップメーカーを自負しています。企業や学校向けの手帳(別注手帳)が主体であり、事業拡大の契機となったのは、50年前、1964年東京オリンピックの競技種目や競技日程等を織り込んだ「オリンピック手帳」の製造・販売を手掛けたことに遡り、今では年間1500 万冊以上を製造する国内稀有の製造ラインを有しています。

一方で、私どもは市販手帳の分野では競合他社に後れを取っていました。ストライクからご提案いただいたフランクリン・コヴィー・ジャパン社の「フランクリン・プランナー」(※)という手帳事業は、まず高付加価値事業であったこと、「7つの習慣R」を実践するというシステム手帳としては他社商品にはない差別化されたコンテンツを有していること、認知度の高いオリジナルブランドを持つことにより弊社の市販手帳分野を拡充できること等が魅力的に感じました。

また、譲り受けた後は自社工場の製造ラインが活用できますし、倉庫や物流機能も使えるコストダウン・シナジーも見込めたのです。

※フランクリン・プランナー:スティーブン・R・コヴィー博士の世界的ベストセラー『7つの習慣』( キングベアー出版)を実践し、タイム・マネジメント(時間管理)スキルを身につけるために開発された手帳。フランクリン・プランナーを活用したタイム・マネジメント・スキル研修事業も行っている。

買収検討段階で事業採算の見極めを精緻な数値データより
「この事業なら伸ばしていける」という見立てが大きい

岡野様はM&A担当者でありながら、買収した複数の企業において社長を務めていらっしゃいます。

私は元銀行員で、いろいろな業種のお客様、経営トップと会ってきた経験がありましたので、新しい事業の付加価値創出やマネジメントの勘所を理解しやすいところがあるのではないかと思います。また、買収に携わった責任者という立場からも、その会社の事業内容をよく把握しているから、まず間違いはないだろう、と考える経営陣の意向もあったと思います。ただ、私が社長を務めるのは、買収した後、事業が軌道に乗るまでということが前提になっている感じはしますね。

どの企業も業績は軒並み好調とのこと。
その要因、意識の持ち方などポイントはありますか?

買収後は、当たり前ですが、譲り受けた事業、譲り受けた社員たちの立場に立って仕事に取り組むことが重要だと思っています。また、買収前と比べて社員たちの待遇は下げないという約束をしています。

収益については、買収後の努力もありますが、買収検討段階での事業採算の見極めが重要ですよね。シナジーがあり、成長性が見込めて、会社の事業分野としてふさわしいかどうか。精緻な数値データでシミュレーションするよりも、この事業ならリスクを抑えながらも伸ばしていけるという見立てのほうが大きいです。逆に、この企業に投資をしても、これだけの人員とこれだけの負債を抱えていたらまずうまくいかないという勘所があり、その場合は検討まで至らないこともあります。

私は今年で56歳ですから、ビジネス人生は長くても残り10年間くらいです。その限りある時間の中で、さまざまな事業の中に自分を置いてみるのはとても楽しい、という考え方を基本的に持っているんですね。銀行からナカバヤシに籍を移した当時は、まさか買収した人材派遣業や手帳、印刷会社の社長を務めるとは思ってもいませんでした。そんな思ってもみなかったことが現実となり、常に新しいことに挑戦できることに、面白さや楽しさを強く感じています。

本日はありがとうございました。

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