INTERVIEW

M&Aを決断したなら相手や関係者を信頼することが大切

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神尾社長と澤野会長

株式会社アスガルド 神尾 社長
澤野ニット商事株式会社 澤野 会長

CD/PCソフトの製造販売を主業とする株式会社アスガルド(東京都千代田区)は、今後の経営戦略を策定する中で、経営資源を集中させるため、ゴルフ用品販売のフルショット事業(WEB販売と実店舗;愛知県名古屋市)を譲渡する方針を決定。2012年4月、繊維・衣服卸の澤野ニット商事株式会社(愛知県岡崎市)に事業譲渡した。今回はアスガルドの神尾社長、澤野ニット商事の澤野会長と澤野社長、澤野ニット商事のメインバンクの担当者にM&Aの経緯を伺った。

右からストライク担当者、澤野ニット商事 澤野社長、
アスガルド 神尾社長、澤野ニット商事 澤野会長、澤野ニット商事のメインバンク 担当者

業績堅調な事業であったが、経営資源の選択と集中を図るため譲渡を決断した

事業譲渡をご決断された経緯を教えてください。

アスガルドの神尾社長
事業を譲渡したアスガルドの神尾社長

神尾社長:ゴルフ用品販売のフルショット事業の譲渡を検討したのは、本業のソフト製造・販売事業が順調に拡大していく中で、経営資源の選択と集中を図っていかなければならないと考えたためです。そこで、複数のM&A仲介会社を訪問して話を聞きました。

M&Aを検討し始めてから感じたのは、M&Aというビジネススキームには仲介をしてくれる方の「人となり」が重要だということです。そんな折にストライクと出会い、担当者の人柄が信頼できたので、M&Aの仲介をお願いすることにしました。

譲渡について考える中で不安だったことや決断のポイントは?

神尾社長:それはもう不安でたまりませんでした。我が子のように育ててきた事業をお任せするのですから、安心できるお相手が実際に現れるのだろうかと……。

また、フルショット事業は継続的に利益を出せていましたので、譲渡するのはもったいないという気持ちもありました。ただ、先述のとおり、いつかは本業に集中しなければならないという危機感があり、決断すべきだと思っていました。

もう一つ大きな決め手となったのは、澤野ニット商事の澤野会長にお会いし、いろいろお話を聞いて、「この方だったら」と心の底から思えたこと。

会長やご家族の方を含め、短期間で本当に親密な関係を作っていただき、事業をお任せできるという確信が得られただけでなく、今後の自分のビジネスにおいても、長くお付き合いいただけそうだというイメージも持てました。

譲渡する側としては、本当に気持ちよく事業をお譲りすることができた。今は非常にさっぱりとした気持ちです。

重箱の隅をつついていては、まとまるものもまとまらない
M&Aを決断したなら相手や関係者を信頼することが大切

買収の検討から実行までの経緯を教えてください。

澤野ニット商事の澤野会長
事業を買収した澤野ニット商事の澤野会長

澤野会長:私達は繊維の卸をやってきたのですが、繊維業界の将来は決して楽観視できるものではありません。会社の存続と発展を考えるならば、新規事業に参入するしかないと判断し、我々が取り組めるようなニッチなビジネスがないかとメインバンクの担当者に相談していました。

実は、今回のお話をいただいた当初はあまり乗り気ではなく、お断りしようとも考えていました。フルショット事業は安定した収益が出ていましたが、調べてみるとゴルフ用品販売自体は女性向け販売がわずかに上り調子なだけで、業界全体としては下り坂だったのです。そんな業界で安定した収益を出し続けているのだから、フルショット事業はアスガルドさんが精一杯頑張られて完成された事業なのだろうと……。つまり、私たちが引き継いでも、これまで以上の成長や発展は見込めないだろう、そう思ったのです。

しかし、よくよく聞いてみると、フルショットではゴルフウェアを扱っていなかった。ウェアといえば私達の本業です。また、フルショットは実店舗よりもインターネット上の販売が好調でしたので、ならば私達がネット販売に合ったゴルフウェアを企画開発して、それが売れればこの事業は化けるのではないか――そのような発想になったのです。

神尾社長の人柄に一目ぼれしたことも大きかった。このような方がやってこられた事業ならば大丈夫だろう、また譲り受けた後でも相談に乗ってもらえるだろうと確信でき、その信頼関係のもとに買収させていただきました。

M&Aを進める上で感じたことは?

澤野会長:全く知らない会社が買うのですから、従業員達はしっかり付いてきてくれるのか、収益は今までどおりに上がるのか……。譲り受けた後のことも思うと、大きな不安を感じました。しかし、新規事業に取り組まなければ会社の存続が図れないという危機感がそんな不安を打ち消しました。私達も泥臭い繊維の仕事を努力しながらずっとやってきた自負があるので、買収後もなんとかやれるだろう、そのような自信めいたものもありました。そうやって考えていけば、そこまで不安も高まらないかと思います。

むしろ譲渡企業や関係者の人達とどのようなM&Aを行なうのか、それが重要でした。譲渡企業の経営者によっては、売りっぱなしで後はご自由にどうぞ、という方もいると思います。それはそれで構わない。ただ、私は今回のM&Aでは神尾社長をはじめ、メインバンクの方々やストライクとのご縁を大切にしたかった。M&Aを通じて良い関係を構築できたと満足しています。

M&Aを決めるまでには重要なことがたくさんありますが、重箱の隅をつついていては、まとまるものもまとまらなくなります。最終的には、M&Aを決断したならば相手や関係者を信頼すること。これに尽きると思います。

新規事業への挑戦にプレッシャーはあるが、従業員の士気は上がっている

買収資金の調達はどのように?

澤野ニット商事 澤野社長

澤野会長:今回は、資金面でも全面的なバックアップをいただきました。

メインバンクの担当者:ただ、金融機関は単にお金を貸すだけが仕事ではありません。澤野会長からは新たな分野に挑戦したいというご要望を以前からいただいていましたので、今回のM&Aでそれにお応えすることができ、本当に嬉しく思っています。

神尾社長と澤野会長がお互いの人柄を認め合って、お互いを知り尽くすことができたからこそM&Aが成約した。当行がご融資できたのはその結果に過ぎません。

今後の展望について教えてください。

神尾会長:今回のM&Aは私が主導で進めましたが、レールを敷いた後は、若い世代の澤野社長に頑張ってもらいたい。

澤野社長:アスガルドさんが大切に育ててきた事業を引き継ぐプレッシャーはありますが、逆に挑戦のしがいがあります。澤野ニット商事の従業員達のモチベーションも上がっています。

澤野会長:譲り受けた事業についてわからないことがあれば、神尾社長に相談すればいいのでしょうか?

神尾社長:もちろんです。アドバイザーとして関わってほしいと言われたら、喜んでサポートに行きますよ。

本日はありがとうございました。

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