ご成約インタビュー No.48
INTERVIEW
「ともに成長できる会社」を希望し65歳から譲渡先を探して9年
納得のいくM&Aを実現
- #後継者不在
- #創業者
- #戦略的M&A
- #従業員雇用
- #製造業
株式会社浜西電機 会長 匹田 治樹 氏
制御盤やハーネス(組み電線)を設計・製作する株式会社浜西電機(本社・愛知県豊橋市)は、創業25年の2022年7月、名古屋市にあるメカトロニクス専門商社のダイドー株式会社に会社を譲渡し、グループ会社となった。創業者の匹田治樹氏は50歳を目前に起業し、大手企業との直接取引で事業を軌道に乗せていった。妻の他界をきっかけに、65歳からM&Aによる売却の検討を始めて約9年。時間をかけてまでこだわった譲渡の条件とは何だったのか。匹田氏のM&A観を伺った。
49歳で独立起業した会社
妻の他界が譲渡を考えるきっかけに
浜西電機を創業された経緯から教えてください。
勤めていた制御盤製作会社が資金難に陥って、経営が危ぶまれる状態になり、私が開拓してきた取引先に事情説明に回ったんです。そうしたら「匹田さんが会社をやるなら応援するよ」という声を何社からもいただいて、信用してくださる取引先や仕入れ先、外注先のためにも独立しようと決めて、1997年に49歳で浜西電機を立ち上げました。
今年で25年になる会社の事業内容と強みは何でしょうか。
事業は創業から一貫して制御盤の設計・製作と、複数の電線を束にして機器に接続するハーネスの加工が中心です。強みとしては、大手企業と直接取引をしていることです。神戸製鋼所や川崎重工業、シンフォニアテクノロジー、ヤマハ発動機など前職で開拓した企業を含めて20年を超える長いお付き合いがあります。また、業界も偏りなく、現在好況の半導体関連から工作機械、公共事業、ロボット分野まで幅広いのが特長です。製造現場は手作業も多いのですが、従業員の約6割が女性で在職10年以上の熟練者が多いので、安定した品質と生産スピードの早さも強みとして挙げられます。
会社を譲渡しようと思われたきっかけは何ですか。
2つあります。一つは後継ぎとして考えていた長男が、自分にはできないと言って会社から離れてしまったこと。もう一つは妻が病気で亡くなったことです。今から9年前で私は65歳でした。もし自分に何か起きたら会社は続かない。「社長の仕事は会社を潰さないこと」を信念として継続できる仕組みをつくらないといけないと、妻を亡くしたことで真剣に考えるようになりました。
その後、どういう行動をされましたか。
愛知県事業承継・引継ぎ支援センターに行きました。そこで6社のM&A仲介会社を紹介されて、依頼先として、この中から1社を選んでくださいと言われたのですが、いきなりで、どこが良いかもわからないなかでストライクさんを選びました。業界最大手は上から目線でくるだろう。下位の会社は力不足で信頼できないかもしれない。それでストライクさんにしました。私の感覚的な判断です。数年間はストライクさん専属で、途中から別のM&A仲介会社と地方銀行を加えた3社で譲渡先を探してもらいました。
下請け的扱いをする会社は断り
成長事業での技術力を評価したダイドーに
結果的に何社の候補企業と交渉されましたか。
10社くらいとトップ面談をしました。1社から断られて、ほかはすべて断った形です。今下請けに出している仕事をうちにやってもらいたいという仕事の付け替え先として考えていた会社は断りました。将来に向けたビジョンのないM&Aは受け入れられなかったですね。
匹田さんが考えていた譲渡先の条件は何ですか。
M&Aで一緒になることでお互いの会社が成長していけること。譲渡先とその考えを共有できるかどうかが第一条件でした。そして、私がM&Aをやろうと思ったのは、約60人いる社員とパートの生活を守り、取引先のお客様に迷惑をかけないためです。そのためにも私の仕事を引き継ぐ人を1人でも2人でもとにかく早く派遣できる会社を希望しました。
ダイドーとはその点が共有できたわけですね。
2021年5月にストライクさんから紹介をいただいたダイドーさんは、産業用ロボットの販売に力を入れている企業です。生産現場などでロボットを効率良く動かすためのシステムとしての制御盤の設計・製作で、私たちの技術力を必要とし、活かしていきたいと言われました。また、注文が増えていた半導体製造装置の増産体制をつくるため、ハーネス専用工場の建設に着手した時期だったのですが、そこにも魅力を感じられたようです。ともに成長する考えを共有できたことが一番の決め手でした。加えて、ダイドー側の交渉役だった常務さんや管理本部長さんに、「買ってあげる」といった上から見るような態度がまったくなかったことにも好感を持ちました。
成約までに苦労されたことはありましたか。
苦労したことは特にないです。ダイドーさんに決まるまで10社ほどとM&Aの交渉過程で必要書類を提出してきて、すべて自分で準備していたので、そうした経験が活かされて手続きもスムーズに進みました。
従業員や取引先にはM&Aをどのような形で伝えましたか。
創業時から一緒に働く2人の社員には成約前に伝えました。会社を譲渡する理由は、みんなの生活を守ることとお客様に迷惑をかけないためだと。これで万が一、私の身に何かあっても会社は継続できるよと話すと納得しました。M&Aが成立した翌日の7月8日には従業員全員を集めて報告しました。給与などの雇用条件は現状維持でダイドーさんに承諾をいただき、会社の継続もはっきりしたことで、みんな安心したんじゃないかと思います。主な取引先には私が直接伺って経緯を説明しました。今まで通りに匹田さんがいるのならと言っていただいたことが有難かったです。
M&Aによって会社をどうしたいのか
先のビジョンをもって臨むことが一番大事
匹田さんは会長として今後も働かれるわけですね。
ダイドーから社長を迎えて、私は取締役会長として3年間働きます。当初は5年でも10年でも死ぬまででもやろうと思っていました。でも、やっぱりそれではダメです。ダラダラといては引き継げない。浜西電機の役員は私だけで、営業から人事・総務に経理、生産・品質管理まですべて1人でやってきました。その業務を後任の社長だけに任せるのは難しいだろうから、数人に振り分けて、3年間できちんと会社が回る仕組みをつくろうと思います。
ストライクの担当者の対応はいかがでしたか。
助かったという言葉に尽きます。とにかく私の判断をじっと待ってくれました。新型コロナウイルスの感染拡大と重なった時期で慌ただしかったこともあり、ダイドーさんとの話し合いを一時見合わせたのですが、ストライクの中嶋さんは、せっつくような言葉を一切口にされなかった。中嶋さんがダイドー側に話をつけて、私の都合を優先してくれたのだと思います。早い決断を何度も求めてきた別のM&A仲介会社や地方銀行の担当者とは違って、そこに信頼を感じました。
中嶋さんとの打ち合わせでは、譲渡の話は少しだけで、経済やこれまでの仕事のこと、私が好きなNHK大河ドラマの話など雑談ばかりでしたが、途切れずに対話できる方でした。私がお願いしてスマホにPayPayのアプリも入れてもらいましたよ。会って話す時間が楽しかったです。
最後に、M&Aを考える経営者に体験者としてのアドバイスをお願いできますか。
M&Aによって会社をこの先どういうふうにしたいのか、経営者はそのビジョンを持つことが一番大事だと思います。ただ買ってもらえればいいという発想では多分後悔するだろうと思います。私は「互いに成長していける」ことでした。それが実現できる会社に出会うまで9年かかりましたが、自分で納得するまでこだわって良かったと思っています。それと、年齢はあまり関係ないかもしれませんが、体力のあるうち、頭が働くうちに検討を始めることは大事です。
本日はありがとうございました。
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