ご成約インタビュー No.170
INTERVIEW
産地の技術と販売力を結び、次の成長へ
アイアと第一ニットマーケティングのM&A
| 譲渡企業様 | 譲受企業様 | |
|---|---|---|
| 企業名 | 第一ニットマーケティング株式会社 | アイア株式会社 |
| 所在地 | 新潟県見附市 | 東京都渋谷区 |
| 事業内容 | ニット製品の企画・製造・販売、自社ブランドの展開 | アパレル事業、メディア事業、アプリゲーム、ホテル、日本語学校など |
| M&Aの目的 | 事業の成長、販売力の強化、国内ニット産地の技術・雇用の継続 | 国内製造機能の獲得、事業ポートフォリオの強化 |
| 今後のテーマ | アイアの販売力を生かしたブランド拡大、海外販路の開拓、産地と技術の継承 | 国内産地との関係強化、海外販路の開拓、販売面でのシナジー創出、第一ニットマーケティングの成長支援 |
この記事のハイライト
課題:アイアはアパレル事業の企画機能を社内に持つ一方、製造の大部分を海外に依存していました。海外で生産し、国内で販売する事業構造に加え、国内の繊維産地が抱える後継者不足や人材確保などの課題も見据え、国内製造機能を取り入れた新たな成長の形が求められていました。
決断:第一ニットマーケティングが長年培ってきたニット製造の技術と、アイアが持つ販売力・マーケティング力の補完関係を確認。代表者同士が事業の方向性や会社を受け継ぐ責任について共感できたことに加え、第一ニットマーケティングのブランドや販売面に成長余地があると判断したことが、グループインの決め手となりました。
成果:アイアによる第一ニットマーケティングのブランド販売支援、新たな取引先の開拓、海外販売、展示会の共同開催など、販売面でのシナジーが始動。両社の事業を無理に一体化するのではなく、それぞれの強みと企業文化を尊重しながら、国内産地の技術を次世代へつなぐ新たな成長ステージが幕を開けました。
アパレルを中心に幅広い事業を展開するアイア株式会社は、2024年3月、ニット製品の企画・製造・販売を手がける第一ニットマーケティングをグループに迎え入れました。国内の産地が抱える課題と向き合いながら、両社はどのような未来を描いているのでしょうか。M&Aを決断した背景、初対面の印象、成約後の取り組み、そして今後の成長構想について、アイア株式会社 代表取締役の石澤智子氏と、財務経理部GMの李吟氏に伺いました。
顧客との対話を起点に、多角化で強い事業基盤を築く
アイアの事業内容と、強みについて教えてください。
石澤:主にはアパレル事業を主体としており、加えてホテル、日本語学校など、多角的に事業を運営しています。私自身は、5年前に父が亡くなったことをきっかけに会社を引き継ぎ、経営に携わっています。
創業時から続くアパレル事業では、お客様と密にコミュニケーションを取りながら、良いものをつくり、企画部門が生み出した商品をお客様のニーズに合わせて届けることを大切にしています。現在、アパレル企業では、社内にパタンナーやデザイナーをそろえている会社が少なくなりました。当社には企画部門の人材がそろっており、接客を通じて商品の背景や企画意図までお客様に伝えられます。そこが大きな強みです。
李:アパレルやメディアを中心に、ホテルや日本語学校など、関連性の異なる事業にも挑戦しています。事業を分散させることで、環境変化への対応力を高められる点も強みです。また、当社は一般消費者を対象としたBtoC事業が多く、人を起点に事業を広げてきました。
国内製造機能の獲得と、第一ニットマーケティングとの出会い
今回、第一ニットマーケティングを自社グループに迎え入れた最大の理由は何ですか。
石澤:当社のアパレル事業では社内に企画担当者がいる一方、製造はほぼ海外に依存しています。海外で生産し、国内で販売するという構造には、少しバランスの悪さも感じていました。国内の製造業である第一ニットマーケティングをご紹介いただき、国内でつくった商品を海外にも販売できれば、当社にとって新しい事業の柱になります。
ただし、第一ニットマーケティングに当社ブランドの商品を無理に生産してもらうことは、当初から考えていませんでした。第一ニットマーケティングが持つブランドを、当社の販売力やマーケティング力で伸ばしていくことを重視しています。
初めて面談された際の第一印象を教えてください。
石澤:近藤前社長から、ニットは必要な分だけ編むため、生地から裁断して服をつくる場合に比べて余分な部分が生まれにくく、環境にも配慮したものづくりができるという話を伺いました。アパレル企業として、製造工程で生じる廃棄の問題は意識していましたが、お話を聞いて製造の段階から考えなければならない課題があると気づきました。
最終的にM&Aを決断した決め手は何でしたか。
石澤:代表者同士で方向性を一緒に考えられるかどうかが、私にとって最も大きなポイントでした。近藤前社長は非常に勉強熱心で、新しいものを柔軟に受け入れる方でした。近藤前社長は四代目として会社を経営されており、私も父から会社を引き継いだ二代目経営者です。事業を受け継ぐ苦労や責任について共感できる部分がありましたね。尊敬できる経営者だったことが、決断を後押ししました。第一ニットマーケティングには、販売やブランディングの面で成長の余地があり、そこに当社の力を生かせると考えたのです。
李:財務面からは、会社が独立して安定的に事業運営できているかを重視しました。第一ニットマーケティングは、長年にわたって事業を継続し、製造現場を運営していました。既存の力を生かしながら、足りない機能を補完できる点に可能性を感じました。
販売力と製造力をつなぐ、具体的なシナジー
買収後の統合方針と、具体的なシナジー創出の事例を教えてください。
石澤:成約後は、第一ニットマーケティングの自社ブランドの販売を当社が支援しています。当社がこれまで接点を持っていなかった取引先との関係が生まれ、新たな販売先にもつながりました。第一ニットマーケティングの商品を海外で販売する取り組みも始まっています。展示会を共同開催するなど、販売面での連携も進めています。
李:当社はこれまで婦人服のブランドを中心に扱ってきました。第一ニットマーケティングのブランドには、紳士向けやユニセックスの商品もあります。これによって、取り扱うジャンルや提案先を広げることができました。
一方で、当社のブランドを第一ニットマーケティングに無理に生産してもらうことはしていません。両社に無理が生じるような取り組みは行わず、それぞれの事業を尊重しながら、販売やブランド展開の面でシナジーをつくる方針です。
産地を守り、技術を次の世代へつなぐ
職人の高齢化が課題となる中、今後の「産地との関わり方」について、どうお考えですか。
石澤:第一ニットマーケティングとの出会いを通じて、産地を守ることについて深く考えるようになりました。日本の繊維産業は、かつて大きな規模を誇っていましたが、現在は衰退している地域もあります。現場を訪ね、製造業が抱える課題を知ることで、産地の問題をより身近に感じました。
第一ニットマーケティングとの取り組みが一つのモデルとなり、同じような課題を抱える企業にも広がっていけばよいと考えています。
今後のアイアの成長イメージについて教えてください。
石澤:今後も、その時々で新たな出会いがあれば、M&Aを含めて検討していきます。ただ、現在は第一ニットマーケティングとの取り組みをきちんと成長させ、近藤前社長が描いていた構想を形にすることを優先しています。第一ニットマーケティングの技術と歴史を守りながら、当社の販売力を組み合わせ、国内外でブランドを育てていく。それが現在描いている成長の姿です。
「一緒に未来をつくる」ために
後継者不足や将来不安を抱える地方企業の経営者に、伝えたいことはありますか。
石澤:M&Aは、会社を手放すことだけを意味するものではありません。異なる文化を持つ会社同士が一緒になるため、どちらが上ということではなく、同じ方向を向いて歩んでいく姿勢が欠かせません。相手の会社を変えようとする前に、まずは現状を知り、受け入れてもらえる状態をつくることが統合の土台になります。
李:どの会社にも、良い面と改善すべき面があります。表面的な情報だけで判断せず、強みと課題を理解した上で、自社にとってどのようなプラスとマイナスがあるのかを整理することが大切です。
ストライクのサービスや担当者はいかがでしたか。
石澤:初めてのM&Aでしたので、分からないことも多くありました。ストライクの担当者には、両社の間に立って調整していただき、こちらの意向だけでなく、第一ニットマーケティング側の事情も踏まえて進めてもらいました。企業文化や人の思いを理解しながら進める必要があります。そうした部分も含めて支援していただけたことは、非常に心強かったです。
李:財務面や実務面でも、必要な情報を整理しながら進めることができました。両社の強みと課題を理解し、最終的に納得して判断できたことがよかったです。
公開日:2026年10月9日
他のインタビューを読む
本サイトに掲載されていない事例も多数ございます。
是非お気軽にお問い合わせください。











M&Aアドバイザーより一言
株式会社ストライク 法人戦略部 吉村 拓真
第一ニットマーケティング様は、国内有数のニット産地として知られる新潟県見附市において、日本のものづくりを長年支えてこられた企業です。今回のM&Aにより、同社が培ってきた高い技術力と、多くの従業員様の中長期的な雇用が守られたことは、非常に意義深いことだと考えております。
アイア様が持つアパレルブランド運営のノウハウや企画・販売力と掛け合わさることで、第一ニットマーケティング様の素晴らしいニット製品がさらに多くの方へ届けられることを、私自身も強く期待しております。
日々の業務が、こうした日本の優れた技術を次世代へ遺すことに繋がっていくのだと改めて実感しており、両社の新たなスタートをご支援できたことを大変嬉しく思っております。