2011年業界ニュース

2011/01
【特集】B to C物流の“新しい現実”
LPGの専用車両が活躍

 有機野菜などの食材の定期宅配を手掛けるオイシックスは震災後、北海道、東北地方、茨城県について商品の配達・注文の受け付けを中止した。それ以外の地域でも交通網の混乱などにより、配送の遅延が発生したもようだ。オイシックスは商品をヤマト運輸の宅急便で配送している。宅急便のサービス停止や遅延による影響をまともに受けた。

 しかし、食材宅配で先行する生協(生活協同組合)や、環境NPOを母体とするらでぃっしゅぼーやなど、自社専用便による配送を主力としている会社はその間にも商品を顧客に届けていた。

 関東を中心とした一都九県、11の地域生協(2010年3月時点)が加盟するパルシステム生活協同組合連合会(以下、パルシステム)、そしてらでぃっしゅぼーやの食材宅配は、一週間単位で受発注サイクルを繰り返すという共通点を持つ。

 利用者には決まった曜日に商品とともにカタログと注文用紙が届く。利用者はその一週間後に注文用紙を提出し、さらにその一週間後に商品が届く。これに対して、オイシックスは宅急便を使うことで、利用者の自由度を高めていた。一週間サイクルの受発注という基本は同じだが、配達日時・時間帯を指定できる。

 しかし今回の震災では、宅配をアウトソーシングに頼る脆さが露呈した。宅配各社は、被害の大きかった東北地方や茨城県などで荷物の集配をいったん停止した。サービスが完全に回復し、全国の配送が正常化するまでにおよそ二カ月程度を要している。その間、通販会社は手の打ちようがなかった。

 しかし、専用車両による配送では対策をとることができた。パルシステムでは、環境負荷低減の一環として、LPG車の導入とセンターでのLPGスタンドの設置を進めていたことも幸いした。ガソリンや軽油と比較してLPGは比較的安定した供給が続いていた。LPG車を最大限活用して配送の安定化に努めた。ガソリンについても加盟生協以外の生協とも燃料を融通したため、配送が止まることはなかった。

 らでぃっしゅぼーやでも「今回の震災では、自社便の優位性が出たと思う」(管理本部経営企画部広報担当の益貴大氏)という。

 配送の遅延はほとんどなかった。専用便の配送に遅れが出たのは、震災発生当日の3月11日、関東の配送分のみ。午後、配送の真っ最中に地震と交通渋滞が起こったため、通常であれば19時~20時には配送を終えるところが深夜までかかり、センターに車両が帰着したのは翌12日だった。

 3月17日には自社専用車両によって被災地への支援物資輸送を開始するところまでこぎつけた。その後、最も懸念されたのは配送車両の燃料不足だったが、協力会社の活躍もあり、事なきを得た。「協力会社さんが本当にがんばってくれた。どこから調達してきたのかと思うほど(笑)。当社と一体となって是が非でも届けるという意識を持って対応してくれた」(同)という。

調達先の分散化を推進

 商品調達も何とかクリアできた。メーンの農産物はもちろん、水道水の放射能汚染で受注が増加したミネラルウォーターをはじめ、スーパーなどの実店舗では品切れが続いていた牛乳や豆腐なども西日本などから調達し、品揃えを確保した。

 らでぃっしゅぼーやが東北地方で契約している調達先のうち、約40の契約生産者・メーカーが被災した。道路網が寸断され、輸送の足も途絶えた。震災翌日の3月12日から商品の調達先の安否確認を行なうと同時に、東北から仕入れていた商品の代替品の確保に動いた。

 同社は全国約2,600の生産者と約500社のメーカーから商品を仕入れている。そのネットワークを活用した。野菜は天候により収穫量が大きく変動する。「商品が不足すれば補充するのが当たり前。普段からしていることなので、震災でも慌てずに対応できた」と管理本部経営企画部の桂川繁樹氏は語る。

 生産者・メーカー同士の連帯感も強く、「Radix(ラディックス)の会」という互助会を1996年に結成し、その後も交流活動などを続けてきた。商品の供給責任に対する意識を共有できていた。

 震災を教訓として、今後はミネラルウォーターや日配品を中心に、調達先の分散化を進めていく方針だ。野菜についても、新たな産地を開発していく。野菜の産地は西日本、関東、北海道が中心だ。震災以前は東北からの調達を増やす検討をしていたが、当面は北海道からの調達に力を入れていくという。

 同時に今回の震災をきっかけとして、これから物流センターの増設を積極化していく。中長期的には自社便での配送エリアを拡大していく考えだ。

 らでぃっしゅぼーやは昨年、九州に新センターを開設している。検討段階では、これまでのセンター運営の経験から、少なくとも1,000~1,500世帯の会員数が見込めるかを目安とした。

 九州では福岡を中心に宅急便で配送していた会員が多かった。またマーケティング調査では、同地域には子育て層が多く存在し、食の安全・安心に対する関心が高いという結果が出た。生協などの宅配利用者も多く、生鮮品の通販に対する抵抗感は少ないと見て、センター設置を決めた。

 そうした基準に加えて、今後はリスク管理という視点からも、センターの整備を検討するという。「今回の震災では、自社便だからこそ配送ができたということを再認識した。新センターの検討に当たっては、自社配送エリアの拡大という意識も今後は持っていきたい」(桂川氏)と考えている。

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