太陽光発電事業の動向

(更新日:2019年1月)

業界定義
太陽光発電事業(売電事業)、太陽光発電設備工事業、管理・メンテナンス業(O&M)
業界シェア
発電事業業界一位はLooop Inc.、売上高は2017年3月期で233億円。2位はガスアンドパワー、2016年3月期の売上高は172億円。その後にレノバ、自然電力、日本風力開発、エコ・パワー等が続く。(未上場が多く最新のデータが少ない。)

市場規模 3.2兆円

(2017年一般社団法人 太陽光発電協会)

成長率-0.5%

((2014年比) 2017年一般社団法人 太陽光発電協会)

関連法規
電気事業法・固定価格買取制度

業界分析

2009年施行の余剰電力買取制度をきっかけに、太陽光発電市場は急速に拡大してきた。しかし、2019年現在、同市場は、新規参入も少なく成熟期に入ったと考えられる。

太陽光関連事業は、大きく3つに分けられる。売電事業者、施工業者、管理メンテナンス業者(以下、O&M業者という)の3つである。それぞれ、動向が異なる。

売電事業者では、大手電力会社や新電力など様々なプレイヤーがしのぎを削っている。競争が激化しており、高圧分野では、価格競争に負けた新電力が大手の取次になるといったケースもみられる。また、国としても価格低下を促す取り組みを強化している。2017年度からFIT制度の買取価格決定において、2MW以上の太陽光発電施設を対象に入札を導入している。国としては競争原理により、調達コストを低下させることが狙いだ。買取価格は今後さらに下がり、新規参入業者は減るのでM&Aによる業界再編が起こることが予想される。実際、M&Aが活発な業界であり、数十MWの巨大な発電能力を持つ施設が人気となっている。

加えて、本業界に関するニュースとしては、。2014年に九州電力が新規電力の買取の契約を行わないと発表した。これに続き、電力会社の買取中断発表は続き、現在では、北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力、沖縄電力でも発表されている。今後も規制は広まっていくと想定され、各社柔軟な対応が求められる。

施工業者は、かなり厳しい状況に置かれている。太陽光発電業界全体の倒産件数は88件(2018年)にのぼり2009年の8倍である。ほとんどが施工会社の倒産と推察される。FIT法施行による急激な普及で一気に案件が増加したものの、需要が落ち着いた現在経営は厳しい状態にある。また、FIT法で一気に増加した事業者が熾烈な価格競争を引き起こしており、受注単価の下落を引き起こしている。

O&M業者は、経営は比較的安定している。2017年に改正FIT法が施行されO&Mが義務化されたためである。しかし、O&M専業の会社は少なく、施工業者を母体に持つような会社が多い。したがって、本業の不振を受けたO&M業者が、倒産するリスクは避けられない。

蓄電池は太陽光発電システムにより発電した電気をためておくための装置であるが、家庭で導入するにはあまりに高額という難点があった。そんな中、2019年5月に蓄電池購入に際する補助金が新規導入され、早くも申し込みが殺到しているという。新設・既設問わず、10kW未満の太陽光発電設置者の蓄電池の購入に際して最大60万円の補助金を交付するというものだ。これを機に家庭での導入が進むと予測される。

太陽光発電業界倒産件数

M&A動向

太陽光発電業界における動向として、同業企業同士のM&Aとテクノロジーベンチャーへの資本参加(買収)がある。

同業同士のM&Aではジー・スリーホールディングス(東京都品川区)が太陽光発電事業の永九能源(東京都新宿区)を買収した事例がある。同社はGESジャパン福津太陽光発電所(認定許容5000kw、売電価格40円/kw)を保有している。注視するべきは売電価格が現在の約2倍の点である。FIT制度の買取価格が下落しているため、高い売電価格の権利を保有する企業は買いニーズが大きい。

テクノロジーベンチャーへの資本参加の事例では大手電力会社と新電力ベンチャーの2つのケースが存在する。前者では、関西電力(大阪府)は2017年6月1日にバイオマス発電事業のバンブーエナジー(熊本県南関町)の株式を10%取得し資本参加した。同社は、2019年1月から稼働する予定の竹を活用したバイオマス熱電供給事業を手掛けている。関西電力は同事業の知見とノウハウを獲得する。両企業は2030年までに50万キロワット程度の再生可能エネルギー電源の開発を目指すとしている。

新電力ベンチャーでは、レノバの事例が挙げられる。同社は2017年7月6日に木質バイオマス発電事業のユナイテッドリニュアーブルエナジー(秋田県、以下「URE」)の出資比率を44.4%から51%へ高める。レノバはUREの経営的強化を通じて業績向上とバイオマス発電事業の開発推進を図る。

企業価値の目安

太陽光発電業界に関しての企業価値の計算方法は、譲渡企業会社が売電業者施行事業者、O&M事業者かによって異なるため一概にEV/EBITDA等の指標で比較評価することが難しい。しかし、売電事業者における価値算定モデルはシンプルである。太陽光発電は発電量に変動が少なく、売値も固定価格買取制度の適応で変動がないため将来の収益をかなり正確に判別できる。したがって、そこから想定されるコストを差し引けば企業価値を算出することができる。