背景と現状
2020 年頃に団塊経営者の大量引退期が到来
団塊世代の創業経営者が70歳代を迎え
2020年頃までに事業承継の決断を迫られる
団塊の世代が70歳前後になることから、労働力の減少や技術・技能の断絶が懸念された『2017年問題』。記憶に新しい人も多いかもしれません。
時が経つのは早いもので、2017年問題がどうなったかというと、具体的な解決策を見出せないまま今に至っている企業も多いのではないかと思います。業種や会社の規模などによって事情は異なるでしょうが、人材育成、次世代への技術承継は依然として、日本全体が抱える大きな課題です。
人材育成の中でも最大の課題は次のリーダー、つまり後継者を育て上げることですが、事業承継の『2017年問題』も先送りされ、数多くの企業が後継者不在で先の見通しのないまま過ごしているのが現状です。しかし、どんなに素晴らしい経営者でも永遠に舵をとり続けることはできません。引退の時は一歩ずつ近づいています。
団塊世代の創業経営者たちが70歳代を迎え、2020年頃には団塊経営者の大量引退期が到来すると言われています。
経営者は超高齢化しているが
事業承継は遅々として進んでいない
中小企業庁「中小企業の事業承継に関する集中実施期間について(事業承継5ヶ年計画)」によると中小企業経営者の高齢化が進展しており、2015年~2020年までに約30.6万人の中小企業経営者が新たに70歳に達し、約6.3万人が75歳に達するというデータが示されています。
- 出典:中小企業庁 平成29年7月 『中小企業の事業承継に関する集中実施期間について(事業承継5ヶ年計画)』
一方で、社長交代率はわずか4%未満で推移しています(帝国データバンク)。このままのペースでは経営者の超高齢化がさらに進んで、ますます多くの企業が存続の危機にさらされるであろうことが容易に推測可能です。
年 | '91 | '92 | '93 | '94 | '95 | '96 | '97 | '98 | '99 | '00 | '01 | '02 | '03 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
交代率(%) | 4.96 | 4.89 | 4.91 | 4.06 | 3.86 | 4.16 | 3.98 | 4.23 | 4.19 | 4.09 | 4.30 | 4.17 | 4.28 |
平均年齢(歳) | 54.3 | 54.5 | 54.8 | 55.1 | 55.4 | 55.6 | 55.9 | 56.1 | 56.3 | 56.6 | 56.8 | 57.0 | 57.2 |
年 | '04 | '05 | '06 | '07 | '08 | '09 | '10 | '11 | '12 | '13 | '14 | '15 | '16 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
交代率(%) | 4.15 | 4.09 | 4.25 | 4.36 | 4.22 | 4.34 | 3.90 | 3.88 | 3.61 | 3.67 | 3.83 | 3.88 | 3.97 |
平均年齢(歳) | 57.4 | 57.7 | 57.9 | 58.1 | 58.2 | 58.3 | 58.4 | 58.5 | 58.7 | 58.9 | 59.0 | 59.2 | 59.3 |
出典:帝国データバンク 2017/1/31『2017年全国社長分析』
最大の問題は「後継者不在」
80歳以上でも3分の1が後継者不在
事業承継が進まない理由はさまざまですが、最大の問題は「後継者がいない」こと。多くの経営者が「後継者がいないから引退しようにもできない」という、“ない袖は振れない”状態に陥っているのです。
帝国データバンク「後継者問題に関する企業の実態調査」(2017年11月)を見ても、後継者不在の企業は全体の3分の2を占めており、社長年齢別では60歳代が53%、70歳代が42%、80歳代以上が34%となっています。
後継者育成にかかる期間は5~10年ともいわれますので、80歳以上でも3社に1社が後継者不在というのは、非常に深刻な数値です。
社長年齢別 | 後継者不在率 | 2016年 | 2014年 | 2011年 |
---|---|---|---|---|
30歳未満 | 92.1% | 94.5% | 92.9% | 88.8% |
30歳代 | 92.4% | 91.3% | 90.7% | 89.6% |
40歳代 | 88.1% | 88.0% | 87.4% | 85.9% |
50歳代 | 74.8% | 75.7% | 74.3% | 72.9% |
60歳代 | 53.1% | 54.3% | 53.9% | 54.5% |
70歳代 | 42.3% | 43.3% | 42.6% | 42.7% |
80歳以上 | 34.2% | 34.7% | 34.2% | 34.1% |
※社長年齢が判明した30万860社
出典:帝国データバンク 2017/11/28『後継者問題に関する企業の実態調査』
前述した中小企業庁が公表した中小企業の事業承継に関する集中実施期間について(事業承継5ケ年計画)では、「経営者の年齢が上がるほど、投資意欲の低下やリスク回避性向が高まる。経営者が交代した企業や若年の経営者の方が利益率や売上高を向上させており、計画的な事業承継は成長の観点からも重要」との分析結果が示されており、企業の成長のために事業承継が重要となる点が強調されています。
- 出典:中小企業庁 平成29年7月 『中小企業の事業承継に関する集中実施期間について(事業承継5ヶ年計画)』